地方自治の不確実な時代を生き抜くために〜助川達也著『公務員のための場づくりのすすめ』を読んで
公私共にお世話になっている助川達也さんが書かれた『公務員のための場づくりのすすめ』を拝読しました。内容は下部に示す目次でなんとなく推測できるかと。
率直な感想としては、助川さんの頭の中を拝見しているようで、興味深いものでした。p. 113に示されてるところなどは特に。「私たち職員が思っている以上に、実は地域の人たちは行政機関に対して身構えているようです。ないも怖いことはない、むしろの地域のサービス機関なのに、と思うのですが、その内の者の感覚かもしれません。あなたの存在が、地域の人たちにとって身近であれば。そのことが行政のイメージを一変させる好機となります。」
私自身は、このような動きを支援することが仕事になのですが、多く感じることの一つです。その中で、第4章と第5章が非常に興味深いものでした。第4章では「人に会う」まち歩き5つのプロセスとして、以下が示されています(pp. 44-45)。
(1)来てみたい、興味ある人を見つける
(2)地元側の協力者に打診する
(3)観光と交流のバランスの良いルートを考える
(4)当日連絡できる体制をつくる
(5)終わったからが大切
このことは、まち側とのコミュニケーションをつくる方法としては、地域づくりに関係する人々に共通するステップかと思います。特に、「(5)終わってからが大切」のところでこのように示されています〜「地元によい思いをもってもらうためも最後の最後まで感謝の念を忘れずに」。このことはフィールドワークのテキストでもよく言われることの一つです。
そして、第5章において、それまで示された4つの場(職場・現場・学場・街場)をどのように融合・越境すべきかが示されています。
助川さんの事例ですと下記のように(p. 123)なってきたということでした。内部検討会や職員研修などのからなる「職場」が始まりとなり、商店街支援ネットワーク、県人会業務などの「現場」と政策研究の自主研などの「学場」に展開し、最後に「街場」としてまちづくりのネットワークにつながるというものでした。そして、この展開には相乗効果があるというものでした。
この指摘はパブリックという領域で仕事する方々には何かしら参考になるのでは感じました。フォーマル /インフォーマルな付き合いが新しい仕事のきっかけになり、この仕事は地域の幸せをつくるということにつながるという仕組みはその通りかと感じました。
最後のこのステップ(p.125)が示されます。
学び合い(への参加)→能力(向上)→主体性(獲得)→越境(実施)→刺激(甘受)→学び合い(更なる学び合い)※( )内は細川が追記
そして、最後は「菌の人」、まちの土壌を醸成するプレーヤーとしての自治体職員像が示されます。「「菌の人」といった意識を持って、場づくりの”触媒”として有機的な場づくりを仕掛け、生み出していくことです(p. 141)」。「菌の人」になるのは、「なす力」「おこす力」「つなぐ力」が必要で、それこそが、現在のコロナ禍、人口減少、気候変動による不確実性の時代における地方自治のあり方に必要ということでした。
私もほぼほぼ同意なのです。助川さんとは、本年度もお仕事で一緒させていただく予定です。「菌の人」を醸成する取り組みをご支援できればと思っております。(了)
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時代紹介
“4つの場”の場づくりがあなたの職員人生を豊かにする。
場を息づかせれば、あなたの仕事や地域が輝く。
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目次
はじめに
序 章 自治体職員と「場づくり」~スタートその前に
1節 今、場づくりが求められている
2節 自治体職員を取り巻く「4つの場」
3節 スタート前のウォーミングアップ
第1章 日々の業務からはじめよう! 職場編
1節 会議・説明会の準備段階で何をするか
2節 直前から当日の運営と“次” に向けて
3節 職場の場づくりの土台となる関係性づくり
◆インタビュー 対話で導く職場づくり(今村寛さん)
第2章 地域にどう関わるか! 現場編
1節 地域への入り込み方~信頼関係を築くには
2節 地域との協働事業の実践~合意形成に向けて
3節 地域と役所をつなぐ~現場のネットワークが力に
◆インタビュー 地域の人は対等なパートナー(中本正樹さん)
第3章 自主研をやってみよう! “学” 場編
1節 自主研とは何なのか
2節 学び合いの意義(私の自主研の経験から)
3節 自主研運営の8つのポイント
◆インタビュー 自分を変えた“ 自主研” を広める(坂本勝敏さん)
第4章 まち歩き・地域のつながりづくりの実践! “街” 場編
1節 まち歩きをはじめるプロセス
2節 地域のつながりづくりをはじめるプロセス
3節 “街” 場の場づくりを自治体職員が行う意義
◆インタビュー 市民目線で地域を楽しく(馬袋真紀さん)
第5章 4つの場をつないでいこう! 越境・融合編
1節 越境と相乗効果
2節 場を融合すること~その先にあるもの
◆インタビュー 場づくりの「越境者」からのエール(酒井直人さん)
終 章 場づくりへの期待~私たちができること
1節 場づくりの価値を再確認
2節 今、私たちにできること
おわりに
《事例紹介》商店街コンペ事業/自主研スタートアップセミナー/茨城ツアー/歴史公共“ほぼ” 学会(ブラタ○リ部)/茨城のネオ県人会「ツナグ茨城」/茨城まちづくりプラットフォーム
【コラム】若手時期に陥りがちな落とし穴/職場に「お楽しみ」を/Facebook の効果的な使い方/場づくりの呼吸を身につけよう
著者プロフィール
助川達也 (スケガワタツヤ) (著/文)
茨城県職員。商店街支援や東京事務所の勤務等を経て、茨城県自治研修所講師。自主研に関するセミナーを企画するなど、職員の自主的な学びの促進に努めている。県職員業務のかたわら、公務員の枠を越えて多様な人がつながる場づくりや、人・つながりに着目したまちづくり活動を企画し、実践している。