この売上で? と自分につっこみながら合同会社を作る話 その8
連載第8回
8.「もう一つの居場所は、そこだった」
前回の投稿から随分と間が空いてしまいました。申し訳ありません。
不倶戴天の決意で臨んだはずの法人化ですが、未だ実現しておりません。
まぁいろいろあって……と言い訳めいたことを書いても仕方ないので、最近の取り組みから書いていきたいと思います。
5月の連休中は、法人化の具体的な設立に向けて準備を進めていました。
やはり、諸々の問題(最大のそれは売上ですが)を考慮しても、自分の会社を持ちたいという思いは消すことはできませんでした。(それを英語で心の声、コーリングというそうです)
さて、連休中にやったこと。
まず、以前買ったアドバイス本があまり使い物にならなかったので、改めて関連書籍を購入。文中にあるリンク先から申請書籍の雛型をダウンロードできるという優れものです。こちらの本です。
https://www.amazon.co.jp/gp/product/B0798LLVX7/ref=ppx_yo_dt_b_d_asin_title_o01?ie=UTF8&psc=1
会社の住所となる登記場所は、やはり最大の懸案事項です。これまでの経験から、住所だけ借りてもあまり意味はないな、なにもできずに利用料を毎月垂れ流すだけだな、と思ってはいたものの、住んでいるところが住居用の賃貸である以上、どうしても「別の住所」が必要なのでした。
もう一つの住所。
それはすなわち、自分のもう一つの居場所のことです。
できれば居住地に近く、もちろん法人登記OKで、できるだけ安いところがいい。
立川近辺で結構探しました。当てもなくうろうろと通りを歩いたこともあります。それでもやはり、これという場所には巡り会えませんでした。
もういっそ、格安のバーチャルオフィスを借りてしまおう。
そう割り切って、連休中ずっと探していました。
渋谷区神南。港区南青山。
名前を聞くだけでため息が出るような場所に、名目上とはいえ自分の居場所を持てる。しかも月々千数百円で。
それは大きな誘惑でした。扱っている業者さんの社名をネットで検察して悪い評判もないのを確かめ、一も二もなく申し込み。しかし程なく断られました。めげずに次の業者さんに申請しても同じ結果。ようやくここで気づいたのです。
知ってました? 扱う商品やサービスにアダルト関連があると、バーチャルオフィスの入会時に審査で跳ねられるのを。
すっかり気落ちした僕は、しばらく五月病状態になっていました。
そのうちに、少しずつ変化が起き始めていたのです。
これまで、ずるずると会社設立をためらっていた原因は、売上が立たないことにありました。
(法人化するなら、他社なりとも稼げるよつになってから。もう少し。あともう少し。……)
そうやって先送りしているうちに、ズルズルとここまできてしまったのですが、最近は少しずつそれが改善されてきたのです。
主事業であるコンテンツ制作は相変わらずの低空飛行ですが、それ以外の事業で少しずつ利益が得られるようになってきたのです。将来の展望に明るさが見えてきました。
そんなある日、ふとその転機が訪れたのです。
◆
地元の情報サイト見つけた、格安物件。なんと月一万五千円。
市内で、なんとなく土地勘もある場所。そこにこの値段で法人登記可能な物件が借りられるのか。これはもう下見に行くしかないでしょう。
結果、予想とは随分違っていた物件でした。まぁ贅沢は言えないか。
その場でオーナーさんに申し込みをし、家に戻って一人祝杯をあげようとしたのですが……。
自分の心の声が聞こえてきました。
本当にあそこを「居場所」にするのか?
結果、オーナーさんに考え直したいとメールを送り、また悶々とした日々が再開されることになったのでした。
これはもう、法人化はしばらくやめておけということなんじゃないか。個人事業でも問題ないということなんじゃないか……。
そんな考えも浮かんできました。
さて、どうしようか。
ぼんやりと湯に浸かっている入浴中、ふとこんな思いが降りてきました。
いま住んでいるところにしよう。
それがいちばんコントロールできるし、実感も湧く。
いま住んでいるところはもちろん、住所専用です。しかしネットで見ると、黙って法人登記している人は結構いるとのこと。
さらに、事務所が嫌がられるのは、多くの人が出入りするからなんだとか。僕のやっている事業に限っては、そんなことはありません。
問題はないはずだ。もしバレたら仕方ない、引っ越そう。住み心地が良いところなのでもったいないけど。
そう思うほど、「きちんと落ち着いた形で法人化に臨みたい」という気持ちは強くなっていたのでした。
居場所が欲しい。
その答えは、「いまいるここにもうひとつ」でした。
(続く)