「おとん81…?」は漫才における伏線回収の好例

M-1グランプリ終わりましたね。全体の感想・評価はおいといて、漫才のある部分について思うところがあったので書きます。

そのある部分というのは 伏線回収 です。昔からある技法だとは思いますが、ここ数年で「作り込まれたネタは伏線回収してなんぼ」みたいな風潮が強まった気がします。でもロクに理解していない人が多すぎてモヤっとしていたんですよね。

はびこる伏線回収モドキ

伏線回収になっているように見えて、実際は全くなっておらず 単なる時間差ツッコミ になっているだけのパターンがあまりにも多い。

  1. 適当に謎ワードを放り込みつつも、一旦スルー

  2. のちほど何の脈略もなく「そいえばさっきの〇〇って何?」と掘り返す

こういうやつ。
過去のM-1から例を挙げるなら、数年前の見取り図とかがわかりやすいでしょうか。マルコ牧師ね。でもあれ、後でツッコんでいるだけで伏線でも何でも無いですから。

※「伏線回収ではない=つまらない」という話ではないので、見取り図のあのネタは面白く観させてもらいました。

じゃあどういうのが伏線回収なんだよ

それを説明するのにちょうど良いネタが今年のM-1で出ました。さや香の1本目のネタですね。YouTubeで公式のアップロードもあるので観てみてください。

※以下、個人名やコンビ名の敬称略

ポイント① まずは1回目のボケとして機能する

30代で免許を返納しそれを相方にも推奨する石井(ボケ)ですが、まだバリバリ運転している父親が実は81歳。新山(ツッコミ)は思わず「いやその年齢なら父親こそ免許返納だろ!」となります。
ここでは 免許返納として妥当な年齢 が論点であり、81歳は返納だろうという話。

ポイント② 少し話が進んだ後、別角度のボケとして流れの中で回収する

新山(ツッコミ)の父親も免許返納すべきだという話になるが「うちの父親はまだ57だし」と返す。しかしここで 父親として妥当な年齢 という視点が追加され、先ほどの81歳が別の意味を持ち再度ボケとなる。


いやー、非常にキレイな流れでしたね。
ただの無意味なワードとして出すのではなく、まずは1回きちんとボケ・ツッコミとして仕事をする。そして後で再登場する時も、ただ蒸し返すのではなく、ちゃんと脈略の中で気づく。
佐賀のくだりもそうですが、無理矢理あっちこっちをひっつけた感が無いんですよね。

同じテーマで話をしているけど、ポイントは移っていくから停滞感は無い。それでいて全く違う話にリセットしているわけではないから、全体が自然と繋がっている。

こういうネタ構成はパンクブーブーも非常に上手い印象があります。

更に別パターン

最初は普通に会話の一部として出た内容が、後々ボケとして機能するやつですね。ナイツのネタとかによくあります。

後で繋がっていく時のスッキリ感はありますが、序盤盛り上げづらいのでM-1のような4分の賞レースではあまり見ませんね。

モドキは会話の一部ですらなく無理矢理なにかに触れて、後で言及する時も突然出てくるだけなので全然違います。

【おまけ】さや香のネタ全体の感想

方向性としては、いきすぎてるだけで間違ったことは言ってないボケに対し、ツッコミの方が少しやりすぎて逆にボケっぽくもなり… みたいな感じでしょうか。かまいたちも構成が似ているネタがありますね。和牛はあくまでツッコミが常識人のままでしょうか。

私個人としては非常に好きなタイプです。今年のM-1ではさや香の1本目が一番面白かったです。

ただ、あくまでボケは間違ったことは言ってないので、ツッコミのキレが増す=やや敵を作り気味になる 傾向はあるかもしれませんね笑
47歳でお子さんが生まれるのも、別に何の問題もないですから。

※ちなみに審査員長の松本人志、娘が生まれたのは46歳の時。


まぁ色々と言いましたが、皆さんお疲れ様でした。今年も楽しく観させていただきました。


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