Ludens - Bring Me The Horizon

大好きなものと大好きなもののコラボレーションほど心躍るものはない。

METAL GEARシリーズでゲーム監督として確固たる地位を築いた小島秀夫監督が創造する、今まで誰も体験したことのない全く新しいストランド・ゲーム、DEATH STRANDINGがついに発売となった。

のっけから何を言ってるんだお前は状態なのは重々承知。しかし、このゲームがなければタイトルに結びつかないのだからここから始めなければ仕方あるまい。今暫くお付き合い願いたい。
KONAMIという企業がある。或る人は遊戯王オフィシャルカードゲームの会社と言い、或る人はジムの会社と言い、パワプロやウイイレの会社!と言う人も居るだろう。
これら全てが正解。そんなKONAMIにおいて、前述したMETAL GEARシリーズで「ステルスゲーム」というジャンルを確立し、傑作と誉れ高い数々のゲームを生み出したのが、小島秀夫その人である。しかし、諸々の理由により氏はKONAMIを離脱、インディーズゲームスタジオとして再起を図った。その結果、インディースタジオとしては考えられないレベルの豪華出演陣と声優陣を起用し、独立から約3年というスパンで、第一作を世に放ったのである。

その第一作、DEATH STRANDINGはまるで映画の中を自由に動いているような没入感を持ち、他人を倒すことではなく、助けになることをしたくなる新感覚のネットワークゲームであるのだが、そこに関してはネットにある特集記事やインタビューをご確認いただきたい。
本稿で取り上げたいのは、「本ゲームにインスパイアされて製作されたアルバムに収録されている楽曲」についてである。

2019年11/9に、DEATH STRANDING : Timefallというアルバムがデジタルリリースされた。タイトルには前述したゲームタイトルを冠しているが、本アルバムは、ゲームのサウンドトラックではない。ゲーム体験を外出先でも感覚として続けられることを目的として作られた、オムニバスアルバムである。R&BやEDMを主軸とするそのアルバムに、一際異彩を放つ楽曲がある。それが我らがラウドロックの旗手、Bring Me The Horizon(BMTH)によるLudensだ。

BMTHと小島秀夫監督作品とのコラボレーションは、これが最初ではない。2013年にリリースされた4thアルバムSempitarnalに収録されているShadow Mosesがそれだ。この曲のイントロはplay stationフォーマットで初めてリリースされたMETAL GEARシリーズ、METAL GEAR SOLIDの楽曲がアレンジされて使用されており、リリックも同作をインスパイアした内容であった。これについて、当時KONAMIやゲームを開発したkojima productionから正式なアナウンスはなかったように思う。あるTwitterユーザーが小島監督に問いかけたところ、リツイートによってリアクションされていたことから、少なくとも無許可で使っていたわけでは無いだろう。

それ以降、定期的にコラボするわけでもなく、事実BMTHのメンバーも今後はそのような機会はもう得られないだろうと思っていたそうだが、突然その時は訪れたという。それが、ツアー真っ最中にマネージャーから連絡が届き、正規メンバーのギタリストが不在の中、ヴォーカルのOliとキーボードのJordanを中心に、僅か5日で完パケしたというLudensなのである。

EDMを基調としたイントロからスタート。ドラムンベースをバックに、VoのOliが呟くように歌い出すヴァースから、バンドサウンドが基調となるプレコーラスへと移行。ヘヴィに跳ねるギターとは対照的に、ここでもOliの落ち着いたヴォーカルでそのままEDM基調のコーラスへ。
とにかく前半は落ち着いた印象で、初視聴時はどこがコーラスかわからなかった。アルバムに参加している他のアーティストから推測するとに、BMTHも落ち着いた曲なのかなと思っていた矢先、変化は唐突に訪れた。
2回目のヴァース終了間際に轟くOli渾身のスクリーム。ほんの数秒だが、これだけで一気にスイッチが入る。プレコーラスで再び落ち着くものの、コーラス移行時に一瞬のブレイク。その後は叩きつけるようなギターをバックに、絶叫系クリーンヴォイスをもって、キャッチーで中毒性の高いメロディがアグレッシヴに歌い上げられる。
先程とは打って変わり、この高揚感たるや、さすがはBMTHだ!と猛烈な掌返しをキメているうちに、再度Oliのスクリームが鳴り響いたかと思うと、歪みに歪んだギターソロが炸裂し、ブラストビートまで飛び出すヘヴィ極まりないブリッジへと突入。勢いそのままに、シンガロングパートを経て、リズムの刻みを半分に落とした、ヘッドバンギング誘発必至のラストコーラス。お約束的な展開ではあるが、無敵のカッコ良さだ。
アウトロでは再度、前半同様トーンを落とした囁くような声でコーラスの後半が紡がれ、消え入るように終了する。

4th Sempitarnalでオルタナティヴロック方面へ舵を切り、5th That's the spiritでコア要素を削ぎ落とし、最新作amoでは更にポップを主軸に実験的作風を前面に押し出した彼らだが、インタビューでもあるように、Ludensは直近の3作どれにも当てはまらない、新機軸の楽曲だ。彼らが積み重ねてきたキャリアと、ツアー中というアグレッシヴな環境、5日間という納期が重ならなければ生まれ得なかっただろう名曲である。短期間でこれだけの作品を創り上げる彼らには恐れ入る。

そしてなによりも、小島秀夫監督が独立しなければ、独立した氏を支える人が居なければ、そしてDEATH STRANDINGのアイデアを具現化しようとしなければ、これら全てが無ければ、このコラボレーションは存在せず、Ludensが世に出る事はなかったといっても過言ではないだろう。本ゲームが「人と人との繋がり」をメインテーマにしているが故に、Ludensを聴いていると、その繋がりがこのような素晴らしい結果をもたらすという、1つの具体例だと思えてならない。

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