【ルクスリアは見た!~未来のみやげ話編~】(ルクスリアは見たシリーズ3)完結 2023-07-02
またまた見てしまったのじゃ! 秋月のヤツめ、今度の相手はユリカじゃと? ――――なんと、そなたらユリカが分からんと申すのか? 仕方がないのう。マリーの母親じゃ! 最近、出番が少ないからの…………。
じゃがこの状況、何気にピンチじゃぞ? ユリカがアヤツに篭絡されて家事も手に付かんようになったら、わらわの食事はどうなるのじゃ! こ、これはいかんのじゃ!!
ほう、あそこのホテルに入るのか? …………?? 入らんじゃと?
ならば、そこの公園のトイレの個室でパッコンパッコン済ませる気かや? なんと、まるでエロマンガじゃな、乱れておるのう……さすがはアラフォー同士のメイクラブじゃ! ハード路線じゃな!?
うむむ? 挨拶して別れてしまいよった。まだそこまでの関係ではなかったか? じゃが、時間の問題と見たぞ! いかんのう、これではマリーに話す事もできん。まいったのう。……秋月めっ! 許しがたいヤツよ!
いかんっ! 近づき過ぎたか? アヤツと目が合ってしもうた! 気づかれたか!? むむ、こちらに向かって来よる――――。
「こんにちわ、ルクスリア君。今日も可愛いね♪」
「あ、ああ、昨日ぶりかの? くるしゅうないぞ!」
「はい、献上品! 今日はどれがいいかな?」
「おお、またいろいろもってきおったのう。毎日、大儀じゃ! そうじゃな、このチョコ味のチュッ〇チャプスにするかの!」
~~~~ 付近の公園のベンチ ~~~~
「そなた、こうして会うたびにわらわに献上してくれよるが、どういうつもりじゃ? 直接的ではないが、わらわも口説かれておるのかのう? 守備範囲が広いヤツじゃ!」
「あははっ! うん、そうだね、口説いてるんだろうね。君は将来すごい美人になるだろうから、今のうちから仲良くなっておきたくてさ。先行投資って言ってもいいのかな?」
「わらわはじゅうぶん大人じゃ! 小僧めが!」
「そうなのかい? なら、早速、口説いちゃおうかなぁ?♪」
「はたから見たらいわゆる声掛け事案じゃがな?w」
「あ~~っと、それはイケナイね!」
「ふははははっ!」
よくわからん男じゃがコヤツとじゃれ合うのは楽しい。『コクリとハクリ』を失ってしまったと思い、気落ちしておる今のわらわには、こんな男との拙いやりとりにも多少なりとも安らぎを感じておるようじゃ。
…………いかん、このままではわらわまでいずれコヤツの毒牙に――――。
自身の心の動きにブレーキをかけておるつもりじゃったが、言うてはいかんと思える言葉を口にだしておった。
「特別に、そなたをわらわの眷属にしてやってもよいぞ!?」
「感謝の極み!」
秋月は間髪置かず片膝を地につけ、右手を心臓に掲げて礼をとった。条件反射のような速さじゃな。迷うと言う事がないのじゃろうか? などと考えつつ言葉を続ける。
「……ひとつ条件がある! わらわには『コクリとハクリ』という名の従者がおるのじゃがその2人が行方不明なのじゃ! 見つけ出してみよ! さすれば貴族の位をも――――」
秋月は静かに立ち上がり、膝に付いた土を落としながら聞いてきた。
「その2人と言うのは白い顔をした双子の悪魔だよね?」
そうだとうなずくと秋月はわらわの背後を指さす――――。
「その子たちなら、ずっとそこにいたよ…………?」
振り返ると『コクリとハクリ』は確かにそこに居た。――――それぞれに色違いの小さな花を手にして――――。
「どこに行っておったのじゃ!! わらわがどれだけ心配したかっ! ばかものどもがっ!!」
つい声を荒げてしもうた。強く叱るつもりはなかったのじゃ、涙が溢れそうでそれを誤魔化そうと……。じゃが2人はすっかり縮こまってしまい……。
――――しばらく時をおいてから2人は話し始めた。
「花を探しに行ってたんだよ」、「いろんな所をさがしたよ」
「なかなか見つからなかったんだよ」、「お姉さまの御髪を飾る花」
2人が手に持った小さな花はすでにしおれていた。
「綺麗な……花じゃな……早速、わらわの……髪に結ってくれる…………か?」
声がつまるのをこらえながら、わらわは2人を招き寄せ、かがみこんだ。2人の手がしばらくわらわの髪に触れて離れた。わらわはそのまま2人を抱きしめ続けた。小さくて細い2人の腰を抱いたまま、わらわはしばし動かなかった。……2人もそのままに……わらわに感謝された喜びに満たされているようじゃった。
少し気持ちが落ち着き立ち上がって周囲を見渡すと、すでに秋月の姿はなかった。コクリとハクリに向き直り、話を始める。
「わらわは、そなた達はかまってもらえんので拗ねてしまったのかと思うておった。最近はマリーとばかり遊んでおったのは事実じゃからの。寂しい思いをさせたのかと……」
コクリとハクリは言葉にせず、ただ首を振った。
「マリーとの時間を大切にしたかったのじゃ。刹那の間であるのが分かっておるゆえな……。人間の持ち時間はわらわ達に比べて儚く短い。そのうえにマリーはもう年頃じゃ。遠からずツガイをみつけて自分の家族をつくるじゃろう? わらわはその邪魔はしとうない……」
2人の頭をなでながら話を続ける。
「しばらくすれば、また3人の旅に戻るのじゃ。……待っておれ。……さて、次はどこに行くとするかのう? 目的もなく漂うのはさすがに厭きておる。…………そうじゃのう、人間ではとてもたどり着けぬほど遠い異界などはどうじゃ? そこでの冒険譚をみやげ話に、またマリーを訪ねるのじゃ……。その頃には子供がおるかもしれん、孫かもしれんがの? 羨ましがらせてやろうぞ。……マリーがおる限り何度でも…………」
コクリとハクリは白く瓜二つの顔を見合わせて笑った。
ふと、先刻の事を思い出して思考を切り替える。
「おっと、目先の問題の解決が先じゃったな! まずは秋月の正体と目的を調べねば! 何とも怪しいヤツじゃ! 少なくとも全女性の敵なのは間違いあるまい! もはや誰に相談する必要も無い! わらわの決意は硬いのじゃ!」
2人に向き直って、拳をつきあげて叫ぶ!
「調査じゃ! エレボス探偵団の出動じゃ! 行くぞ、コクリ、ハクリ、ついてまいれ!!」
駆け出したわらわの顔はきっと満面の笑顔なのじゃ。
おしまい
おまけ
エンドカード:駆け出すルクスリア
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