【初心者向け】日本語ラップの作り方!【概論】
至極です。
みなさん日本語ラップ、やってますか?聴いてますか?嗜んでますか?
嗜んで味わって歌詞書いて大概手直しばっかで~♪な日々を過ごしてますか?
そんなあなたに今日も一筆。
日本語ラップの作り方!伝授しちゃいます!
あの動画からやってきた方はもちろん、日本語ラップ作ってみたいけどどうやったらいいんだろう?みたいな方にも分かりやすい説明を心がけていきますので、どうぞよしなに。
日本語ラップ学始学者のための踏み込みやすい間口となれば幸いです。
それじゃ、やっていきましょうか。
全体の流れ
テーマ選びとビート選び
テーマが決まれば全体の雰囲気が決まります。雰囲気が決まればビートも探しやすくなります。ラップとは、芸術的な言語装飾で言いたいことを言う創作表現ですので、軸となる「言いたいこと」を、ぼんやりとでもいいので見失わないようしっかり持っておくことが大事です。
逆に、良いビートから着想を得てテーマを閃くなんてこともあります。音から情景を思い起こし、それにマッチした物語を描く、というのも1つですね。
テーマから選ぶかビートから選ぶか、私は基本的にこのどちらかを決めてから創作に臨んでいます。
普段からつらつらと色々なことを思案されているような方はテーマ選びから、inst楽曲や音に溺れるのが好きな方はビート選びから入るとやりやすいかもしれませんね。そもそも、これらはn=1の再現可能な我流の紹介なので、どちらも合わないこともあるでしょう。あなたに合ったやり方を探してみてください。
フレーズ出し
さて、書きたいものの方向性が決まったら、今度はフレーズを考えていきましょう。
イメージに合う単語や文章、見せ場やその展開などの案を出していきます。
(※私はこの段階である程度ビートに乗せれるようにしてしまいます、ものぐさなので。
これはふわふわしたテーマをイメージし続けながらビートの進行を意識しつつ言葉を編むという、非常に脳味噌のメモリを割く作業であるため、慣れない内はあまりオススメ出来ません。)
ある程度フレーズ出しが出来たら、それらをどうやって韻文にするかぼんやりと考えつつ次の段階へ行きましょう。
骨子案作成
テーマも決まり、ビートも決まり、フレーズも大方出揃いました。さぁいよいよラップ制作の始まりです!
ではまず、フレーズ出しで出した案を、読み物として自然になるように並べ替えましょう。
(※ラップ制作に慣れてくると、フレーズ出しの段階でそれぞれの案がどの程度尺を取るかみたいな勘定が感覚で出来るようになってきます。それが出来るようになったら、例えば「ここ2つの要素は1番に入れて、残り4つは後半にまとめられそうだな」みたいな見通しも立てられるようになり、非常に制作がスムーズになります。)
並べ替えが終わったら、今度はそれらの点同士を結ぶ、線となる繋ぎの部分を考えていきます。
だいたいこういう流れで話を進めたらフレーズ同士が繋がるな~程度で良いので、形にしておきましょう。「形にする」の目安としては、一か月後の自分がそのメモ書きを読んで、今想定しているイメージがそのまま再現出来る、思い出せるくらいが望ましいです。
これら下準備は、肝心のラップ部分を考える際に他のことを考えなくて良いようにするためのものなので、出来る限りアウトプットして脳味噌のメモリを空けちゃいましょう。
ラッピング
全ての下準備が整ったら、さてようやくラップの時間です。ラップをするという意味のrappingと、韻で包む、包装するという意味のwrappingを掛けて「ラッピング」とさせていただきました。駄洒落です。
とはいえ私は上の3つをしながらラッピングもしちゃうのでなかなか説明が難しいんですが、とりあえず私がラッピングするときに心掛けていることについて二、三お教えしていきたいと思います。
イメージしているものを別の角度から起こし直す
例えば全く同じことについて考えていても、日本語で思考するのと英語で思考するのとでは、視野の入射角も見える景色も違ってきますよね。
それと同じで、ラッピング時には、韻文という特殊な言語で骨子案を翻訳、もしくは再構築していくという感覚がコツになるかと思います。
翻訳で済むならまだいい方で、ほとんどは再構築になるでしょう。だからこそ、下準備段階で強固なイメージ描写をしておく必要があるんですね。でなければ最初に言いたかったことと実際に出来上がった韻文に大きなズレが生じてしまいます。
正直、イメージを韻文で書き起こすという工程の、脳味噌への負荷は変わりません。こここそ気合というか、日本語ラップへの熱意だとか執念だとかが必要となる部分だと思います。頑張ってください。
(※押韻のテクニックについては、基礎は後述、発展応用は別記事で触れていきたいと思います。)
音節とビートの拍を意識する
ここからは作品の内容ではなく外形、音声的な話になります。
まず日本語ラップの基礎の基礎として、脚韻という技術があります。これは文章の末尾で韻を踏むことを指すのですが、実際ビートに乗せる際は、大抵4小節目で韻を置く、押韻する形になると思います。
なので、脚韻とは「文章の最後の母音を合わせる」ではなく「4小節目で韻を踏む」と覚えてしまってよいと思います。
ラップで使用されるビートというのは、そのほとんどが4分の4拍子ですから、4小節を1つの区切りとして、その区切りの中の同じ箇所で韻を踏むことさえ出来れば、最低限のラップは出来たことになります。
と、いうのも厳密には違うんですよね……。少し分かりづらいので具体例を出しましょうか。
とりあえず太字の部分だけ見てみましょう。これらは全て各小節の4拍目で踏まれている韻です。一行が1小節に対応していて、これらを1小節ごとに区切ったとき、太字の押韻部分が同じ拍数目で発音されているんですね。
今回は小節の最後の拍、4拍目で踏まれています。
これが脚韻です。
脚韻の無いラップはラップと分かってもらえないほど韻の存在感が薄れてしまいます。小節末の韻による着地というのは、それだけラップにラップ然とした雰囲気を与えているわけなんですね。
また、これの応用として、さらさらと流れるようなフロウのラップは、大抵拍あたりの音節数が同じことが多いです。
実は、母音を合わせるよりも、拍内、小節内におけるこの音節の配置を合わせた方が、実は聴こえはよくなったりします。ただそれって音楽的過ぎるので私はこれだけでは日本語ラップとは認めていません。別にラップじゃなくてもいいじゃんそれ。
例えば、以下なんかはそれに近いかもですね。
(※大分崩した発音をしているので「〇音」という数え方にしました。)
同じ音節数が繰り返されると心地よいというのは、俳句の時代からそうですし、自由律俳句ですらこの音節の韻律からは抜け出せていないように思えます。
時たま、凄く語呂が良いフレーズに出会うことがあります。
「花束みたいな恋をした」や、「しかのこのこのここしたんたん」「咳をしても一人」などは、
「445」「44222」「333」と、ある程度近い音節数のまとまりが連続しており、そしてこれがそのまま語呂の良さに繋がっているのだろうと私は考えています。
韻とか踏む気無いんだろうなぁ、ビートにゃ不向きな三日坊さん、みたいなラッパーがよくやってる、「たら~だら~いわ~しが~たい~りょう~だ~」みたいなフロウあるじゃないですか。あれも要は「2~2~2~……」なんですよね。
音節数、これはあまりにも効果が強いです。日本語ラップにおいては何もかもを陳腐化してしまう依存性のある劇物です。語感踏み (※別記事で紹介してます。) やアクセント韻のような応用技術との併用が出来ない場合は使わないことを強く推奨します。
(そんなラップを上げようもんなら私がお灸を据えに行きます。)
最終的には、位置と音節数を同時に考慮しながら韻を踏めるようになりましょう。とはいえ、韻が踏めればもう自動的に音節数は揃っていますから、あとはその韻を同じ位置に置けば良いだけです。
ではなぜ考慮する必要があるのか、それは一つの展開、フレーズの中に、2つ以上の韻が存在する場合が出てくるからです。
私のラップでは、ライムのほとんどが2つ以上の韻によって構成されており、それによってフロウが作られています。
原曲ではそれぞれの拍の位置と対応する拍は以下のように表せられます。
小節数 拍数:歌詞 →対応箇所
04:おめぇ →22
11:とうとい →14
12:にっぽんご →21
13:べんきょうし →23
14:とっぽい →24
21:しろうと
22:おめい
23:へんじょうし
24:ろ
別記事で解説しているので一応そちらのリンクも埋め込んでおきますね。
おめぇ、/尊い日本語/勉強し
↓ ↓ ↓
汚名/「とっぽい素人」/返上し
↓
「とっぽい素人」汚名返上しろ
このように、対応する拍の位置をズラすことによって、独特なフロウを構築しています。
この部分、やろうと思えば
11→21、12→22、13→23、14→24
みたいに、拍の位置も対応させて踏むことも可能ですからね。その場合はとても素直な、悪く言えば面白味の無いフロウになります。
最後のはかなり進んだ例でしたが、「音節とビートの拍を意識する」をマスターすれば、誰でも再現可能な技術だと思います。頑張ってください。
(※1拍の中に何音節入っていて……みたいな意識は、録音時にも凄く役立ちます。実際にビートに乗せてみて、ライムがもたついたり走ったりする場合はこの音節数が関係しているでしょうし、理論上は問題無いのに口が追い付かないみたいな時も、リリックを楽譜に当てはめるようにイメージすることで、フロウのイメージがしやすくなります。)
お好みでトッピング
さぁ完全にリリックが書きあがりましたね!そして最後の鬼門、録音が待っています。
まぁ録音こそ頑張ってもろてとしか言いようがないのでそこはこれで終わらしますが……。
でもボーカルトラック一本っていうのも物足りないですよねぇ?
私は日本語ラップたるものボーカルトラック一本でも満足出来るようなラップであれよと思ってはいるんですけど、それでも遊び心だったり聴き心地だったりを追求するのはアリだと思います。夏油君、それは"アリ"だ。
聴き心地を追求する場合は、韻を踏んでいる、それも脚韻箇所にコーラスというか、ダブリング(?)をすると良い感じですよ。かなり人気な手法なので、君のお気に入りのラップ楽曲とかラップ風楽曲を聴き返してみると、この脚韻を強調する手法が使われているかもしれないですね。
あと合いの手って選択肢もあるんですけど、私は合いの手入れるくらいなら韻踏めやボケナスがって思っているので、むやみやたらに使うのはオススメしません。掛け合いみたいな合いの手とかだと楽しいかもですが、どっちかというと遊び心よりのアレンジかもな。
遊び心を追求する場合は、もう自由にやっちゃいましょう。ハモリ増し増しのコーラスとか入れてもいいし、セリフっぽいニュアンスのトラックと歌っぽいニュアンスのトラックを重ねてもいいし、それこそダブリングで勢いをつけてもいいですね。
曲全体を通して聴いた時の流れ、抑揚を崩さない範囲を見極めるのが難しいですが、そこさえクリアすれば何やっても良いと思っているので、どんどん挑戦しちゃいましょう。ファイトb
韻の踏み方
結局これが知りたいんだと思うんですけど、正直、裏技みたいなものは無いです。一つ一つしらみつぶしに音を合わせていく、その練習あるのみだと思います。
母音踏みの練習
オススメの練習法としては、目についた単語と同じ母音の語や文章を考えるというものがあります。
最初は2~4文字くらいがいいでしょう。それが安定して出来るようになったら5~7文字、それも安定するようになったらもう10~15文字くらいは踏めるようになるでしょう。
というのも、日本語の語彙って基本的に1文字~5文字で収まるんですね。
「にほんご / の / ごい / って / きほんてき / に / いちもじ / から / ごもじ / で / おさまる / んですね」
ね?
なので、長く踏むにしても結局は5文字以下の語彙をパズルのように組み合わせていけばいいだけなんです。
どうですか?出来そうな気がしてきませんか?
じゃあ「5文字」で踏んでみましょうか。
とりあえず当面は母音踏みで良いと思います。どういう踏み方をするかは自由です。例えば「踊り」「ホモイ」「ほとり」でぴったり踏んでもいいですし「どの道」「底力」「コロニー」みたいに後ろにはみ出したり、逆に「出戻り」「居残り」「空と森」と前にはみ出しても良いですね。
あとこれはちょっと応用なんですが、特殊拍を採用して「相撲取り」「荒療治」「蕩尽」「もとい」とするのもまぁ良いでしょう。でも厳密には踏めてないというか、音としては遠い韻――私は弱い韻だとか副韻だとか呼んでますが――になるので、まずは固い韻から考えられるようになりましょう。
一つコツがあるとすれば、お題→母音→行ごとに子音を入れ替える、というのを頭の中だったり口に出して行うと、音のイメージが掴みやすくなります。
「5文字」であれば、
5文字→ごもじ→おおい→ここき→そそし→ととち→ののに→ほほひ→……
といった具合ですね。これ結構馬鹿にならなくて、子音に囚われずに韻が踏めるようになるのでオススメです。
お題から直接韻を考えようとすると、どうしても元のお題の音素に引っ張られてしまいます。
「5文字」だと「5」の有声軟口蓋破裂音「g」に引っ張られて一文字目を「ど/こ/と/ぼ」などで考え出してしまいがちです。
(有声歯茎破裂音「d」、無声軟口蓋破裂音「k」、無声歯茎破裂音「t」、有声両唇破裂音「b」)
練習する際は、母音を絶対に崩さないようにしっかり母音を意識して、子音を入れ替えるパズルをするつもりで訓練すると良いでしょう。私はそうしました。
色んな種類の韻を紹介
母音踏み
さっきのやつですね。母音を揃えます。
(※自立拍同士、似たタイプの特殊拍同士で揃えると響きの近い韻――私は強い韻だとか主韻だとか呼んでます――になり、自立拍と特殊拍、遠いタイプの特殊拍同士で揃えると副音になります。この辺の話はややこしい上に、そもそも私がまだ仮説に確証を持てていないため、語るのはまたいつかということになります。)
子音踏み
子音を揃える押韻方法です。
巷では子音と母音を揃えるものが子音踏みと呼ばれていますが、これでは子音のみを揃えるものと全ての音を揃えるものを区別できないため、ここでの子音踏みは子音のみを揃える押韻方法として定義します。
同音踏み
子音も母音も揃える押韻方法です。
特殊拍をカウントしないもの、または歌い方で無理矢理揃えるものも多いです。それらは同音踏みの中では弱い韻として認識しています。
脚韻
前述した、小節末で揃える押韻方法ですね。
というか、同じ位置で揃える押韻方法の中で最も効果的で最もメジャーなものが脚韻というイメージです。
頭韻
本来は子音踏みも含むんですが、ここでは差し当たり「連続する単語、あるいは密接に関連した音節が同じ音で始まるものを指す。(wikiより一部省略)」を定義とします。
同じ位置で揃える押韻方法の中で、位置的な点で脚韻と対称の押韻方法といえますね。
連続韻
同じパターンの母音の配列を持つフレーズが2回以上繰り返される押韻方法、とここでは定義します。
以下具体例。
アクセント踏み
メロディのアクセントとなる位置で1文字ないし2文字程度で短く踏む押韻方法。頭韻に近いです。
以下具体例。
終わりに
なんというか……作文の書き方と韻の概念の話でしたね……。
流石に文章だけで音的、音楽的な感覚の話をするのは難しいものがありました。
ただ、とりえあず脚韻については伝えられたので、とりあえず形にはなると思います。
脚韻がしっかり出来るようになって、母音踏みの練習も難なくこなせるようになってきたら、次の段階に進みましょう。その時までには私ももう少し研鑽を積んでおきます。
あと!これも作文の範疇ですが、語彙力を増やすのはとても大事です。
本や活字を読んでいて知らない言葉や分からない言い回しが出てきたときは、その瞬間に辞書を引いて、メモ帳にその言葉と読み、そして意味を記しておきましょう。(暗記が得意な人は言葉だけ書き留めておいて、定期的に見返しながら意味を覚えていくのでもいいと思います。)
そうやって自らの血肉となり、自在に操れる語彙が増えれば増える程、韻のレパートリーは指数関数的に広がっていきます。いくはずです。いけるとおもう。いくんじゃないかなぁ。
これは持論ですが、ある界隈で創作する際に、同じ界隈でだけインプットをしていると表現が先細りしていきます。これを創作の自家中毒と表現した方がいましたが、言い得て妙ですね。
ラップを勉強する際はラップだけではなく、本やニュース、ツイートからスーパーのチラシに至るまで、あらゆる活字から日本語を摂取することを強く推奨します。
音楽的な面に関しても、他ジャンルの音楽のみならず、普段の生活で聴く音にも注意して、心地良いリズムや語呂についてのセンサーを高め引き出しを増やしていきましょう。私はビートボックスが好きなのでそれがリズム感や滑舌の向上に繋がっていますね。あとドラムパターンがそのままフロウに応用出来るので、本物のドラムを嗜むというのもありだと思います。
最初のうちはなかなかうまくいかないものですが、それでも続けていけばどんどん洗練されていくはずです。私も最初は酷かったですから……ここにその処女作を貼っておくので、ハードルを上げ過ぎてしまいがちな完璧主義者の方は是非これを見て、「あぁこの人にもこんな下手くそで聴いてられないラップしか出来ない時期があったのか」と安心してください。
下手なのに上手ぶって調子に乗ったりしない限り、私はあなたの味方ですよ。
それじゃ、この記事を読んでラップ制作の光明開けたり!と思った方は感想なり共有なりフォローなりなんなりかんなりしてください。
それじゃあ、また今度。