あの日見た夢が実現するための力となる。競馬のGⅠ天皇賞(春)。デビュー13年目の菱田騎手が師匠、愛馬とともに悲願のGⅠ初制覇。テーオーロイヤルで巧みな騎乗
20年前のあの日に見た夢が実現するための力となった。競馬のGⅠ天皇賞(春)でジョッキー生活13年目の菱田裕二騎手が制した。31歳にとってこれまでGⅠ勝利は無縁だった。この日は愛馬のテーオーロイヤル(牡6歳)に乗って落ち着いた騎乗ぶりを披露。愛馬と師匠の岡田稲男調教師とともに悲願のGⅠ勝利をつかんだ。
28日に京都競馬場で行われた歴史ある天皇賞(春)。このビッグレースに菱田騎手は賭けていた。騎手生活13年目だが、これまでGⅠ勝利を手にしたことがなかった。今回は単勝1番人気のテーオーロイヤルにまたがって、3200mの大レースに臨んだ。
菱田騎手が騎手を志すきっかけとなったのが20年前のこのレースだった。京都競馬場で観戦した天皇賞で、10番人気の伏兵イングランディーレが大逃走で逃げ切り勝ち。菱田少年にとって人生の進むべき道が見えた瞬間だった。
ジョッキーとなって13年目。GⅠ初制覇に向けてのビッグチャンス。あの日夢見たときと同じ天皇賞(春)に参戦した。
ゲートが開き、テーオーロイヤルが好スタート。4~5番手につけて勝機をうかがう。2周目の第3コーナー手前で後続馬が次々とペースを上げていく。しかし菱田騎手は慌てない。まだ、このタイミングじゃない。そう信じて、愛馬と呼吸を合わせていった。
第3コーナーを回ってからの下り坂。ここが勝負ポイント。菱田騎手がペースを上げていく。テーオーロイヤルとしっかり折り合っている。人馬一体。第4コーナーで3番手につけた。
直線に入って他馬を抜き去ると、アクセル全開。栄光のゴールへ菱田騎手とテーオーロイヤルが突き抜けた。3分14秒2で2着に2馬身差をつけて1着でゴールイン。
菱田騎手はGⅠ挑戦30回目、師匠の岡田調教師はのべ34回目で悲願の初タイトルを手にした。
テーオーロイヤルもデビューから18戦目にしてGⅠ初制覇。放牧中にけがをして2022年11月から約1年レースを離れた時期もあった。それでも、これまでの重賞3勝はすべて長距離レース。悲願のGⅠタイトルを制するには3200mの天皇賞(春)は最適だった。
菱田騎手、岡田調教師、テーオーロイヤルそれぞれにとっての悲願のGⅠ初勝利。菱田騎手にとっては師匠、愛馬とともにつかんだ栄光だけに喜びもひとしおだろう。
レース後のインタビューで、菱田騎手は開口一番「本当に今まで生きてきて一番うれしいです」と笑顔を浮かべた。
そして、「4コーナーを回ってくるとき、20年前、ここに見にきた、あの自分に見といてくれという気持ちで乗っていた」と振り返った。自分に余裕があったからこそ、当時の自分を振り返られたのだろう。それだけ落ち着いたレースをしていたことが伝わる。
あの日見た夢が実現するための力となった。菱田騎手、テーオーロイヤルをはじめ、チーム岡田の今後のさらなる活躍に期待したい。