支配力

正直、もう完全に降りたと思っていた。
ドラマに出ても映画に出ても気にもならないし。
え?映画が公開されたの?いつ???
くらいのレベルで。

今回、10年来の推しが出る邪魚隊
倫也さんが出るバサラオ
GENICの雨宮翔くんが出るキミゼロミュージカル
3つが重なったので上京した。

劇団新感線だし?倫也さんだし?
せっかくだから観てみようかな。
と思ったのが間違いだった。
こんなに心を揺さぶられるとは
思いもしなかった。

まず登場シーンから驚き。
客席を使って所狭しとキャストが動き回る。
まだ観て無い人もいるから詳細は控えるが。

まず、作品としてのパワーが桁違い。
舞台装置や光での演出、装置の大きさ。
衣装の色や客演以外の脇を支える役者の安定感。
そして何より脚本と演出。
最後まで展開が読めずハラハラする感じ。
新感線ならではのスピード感と
作品の重厚感が見る側に一瞬の隙も与えない。

そして本題 中村倫也。
もうね。あっぱれだわ。
完敗です。
幕間までは、かっこいい展開にそわそわして、
さすがだなあと、まだ呑気に構えていたのだが。

最後15分くらいかな?体感だから
細かい時間は分からないけど、
手が震えて呼吸ができなくて
涙が出てきて双眼鏡が震えて
焦点が合わなくなるのを必死で
押さえて息を殺して見入ってしまった。

中村倫也の舞台に惚れた人は
すぐに思い浮かぶだろう

声に緩急をつけての凄み。
ちょっと見下した目線の動かし方
殺陣の綺麗さ。所作。
袖へはけるときの走り方。
自分のセリフじゃない時の表情や
体の動かし方を。

全部全部、一瞬でも目が離せない。
本当は舞台全体も観たいのに
倫也さんから目が離せない求心力。
客席の視線を全部掻っ攫う演技力。

終わった後、冗談抜きで客先から
立ち上がれなくてフラフラしながら
何とか劇場を出た。

そりゃね。あのエンタメを見せられたら
誰も帰らないって。
しゃーない。
(カテコ5回くらいあった)

ちなみに最近の中村さんの舞台は
いい意味で安定感のあるお芝居で
きっと1回目に観にきた人や
1回しか見れない人も満足するだろう
というお芝居をされていた。

ところが今回のお芝居は
昔の倫也さんのような、まだちょっと
余裕が無いような、怒りを込めての頃の
ヒリヒリした空気感で
『こっちを見ろ!!!』と
強引に演技力で支配するような。

それが私はとても好きだ。
きっとこれを求めていたんだ、私は。

きっと立ち位置にも関係していると思う。
倫也さんは主演でも勿論輝くけど
誰かが上にいることでより一層輝くし
相手を輝かせることのできる類稀な役者だと思う。

降りたとまで思わせたファンを
板の上の輝きで振り向かせる。
これが正に『芸』と『能力』のある『人』だな。
舞台からは降りられないかもしれない。













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