見出し画像

腰痛解消かわら版 第2号


腰痛予防のための基礎知識

 腰痛を理解するためには腰の周りの筋肉や関節の知識が必要です。少し退屈かもしれませんが、簡単に腰の周りの様子を説明しますのでご辛抱ください。

 腰部は、単一の骨ではなく、5つの腰椎と骨盤が上下に組み合わさることにより構成されています。そして、驚くべきことに頭、腕、胸廓の上半身と骨盤・下肢の下半身は、この腰椎という5個の積み木のような骨でつながっているだけなのです。
 これらのことを考えると腰が痛くなるのも納得できますね。
 ところが人間は、そんな、腰のもろさを気にすることもなく重量物を持ち上げたり、反動をつけて身体をねじりながら移動したりと、さまざまな運動をしています。
 同じ仕事をして、腰が痛くなる人と痛くならない人、何がちがうのでしょうか?
 この素朴な疑問を理解するためには、腰に関する基礎的な知識が必要です。ここでは、腰の運動の仕組みについて勉強してみましょう。

1.脊柱の構造
 脊柱は、7個の頚椎と12個の胸椎、5個の腰椎、仙骨、尾骨が連結し構成しています。脊椎のそれぞれの骨を椎骨といいますが、椎骨と椎骨とは椎間板というクッションの役割をする弾力性のある組織で接続されています。また、それぞれの椎骨は、関節包や靱帯という硬い膜状の組織で何重にも覆われています。そして、その上から何束もの筋肉が包み込むように付着して連結されています。それらのどの組織が損傷しても腰痛が発生する原因になります。したがって、腰痛の原因をしっかり把握することが大切なのです。

 また、脊柱は、真っ直ぐな棒ではなく、いくつかに彎曲しています。身体を横方向から見てみましょう。前方に凸になるように彎曲していることを前彎、後方に凸になるように彎曲していることを後彎といいます。頚椎は前彎、胸椎は後彎、腰椎は前彎というように交互に曲がりながら接続しています。この彎曲を生理的彎曲といいます。この生理的彎曲が今後重要になってきます。

2.腰部の筋肉
 腰部の筋肉を背面から見ると背中に上下に何本もの筋肉が走っています。これらの筋肉は、脊柱起立筋と呼ぶこともあります。

 一方、腹部の筋肉を表面からみてみましょう。まず、腹部を上下に走る腹直筋という筋肉が見えます。これは、よくボディビルなどで見られる、お臍の横に上下にいくつもの隆起がある筋肉です。その横には、斜めに走っている外腹斜筋と内腹斜筋があります。そしてその腹斜筋のさらに深部には腹横筋と呼ばれる、真横に腹巻のように走る筋肉があります。腰痛予防ではこの腹横筋が腹筋群の中では最も重要な働きをします。
これらの筋肉は大きく、身体を前方に曲げたり、後ろに反らせたりするようなダイナミックな動きをする時に働きます。このような筋群を強化するためには、その筋肉の働きとは反対方向に抵抗を加えるように、筋肉にストレスを与えるようなトレーニングを行います。
 よく仰向きで膝を立て、上半身を起こすような運動、上半身の体重を利用し、腹直筋に負荷をかける運動です。よく見かけるトレーニング方法ですが、腰痛体操として行っている人はいませんか?                                     
さまざまな動作をする時には、これらの身体の表面にある大きな筋肉の働きが目立ちますが、実は運動を行う上で、もっと重要な筋肉がたくさん隠されています。

腰椎の小さな突起と突起の間に、これまた小さな筋肉が、さまざまな方向に走り、たくさん集まっています。これらの小指より細く小さな筋肉は、多裂筋・回旋筋と呼ばれています。この小さくて細い筋肉が、腰の骨と骨の間に帆船のロープのように複雑に張り巡らされています。これらは棘筋群とかローカルマッスルなどとも呼ばれています。

 この多裂筋や回旋筋が収縮すると、それぞれの腰椎を「ガッチリ!」と固定する働きがあります。そのためこれらの筋肉を「腰椎の安定化筋」(スタビライザー)と呼んでいます。これらの安定化筋が弱くなると、それぞれの腰椎の連結がグラグラになり不安定になります。不安定な腰椎での運動は腰部の損傷を誘発し易く腰痛を悪化させる原因となります。腰痛を予防するためには、この多裂筋や回旋筋を強化し腰椎を安定させると同時に腹横筋を収縮させて腹圧による天然のコルセットのような作用を促すことがポイントです。 安定化筋がしっかり働き、脊柱を支えてこそ、腹直筋や脊柱起立筋によって体を曲げたり伸ばしたりスムースに運動することができるのです。 

 以上のことから腰部を安定させ、腰痛を予防するためには、腹横筋や多裂筋などの安定化筋を強くし、必要な場面でうまく収縮させることが大切だということがおわかりいただけたと思います。腰やお腹の筋肉が大切といっても、腹筋や背筋だけをトレーニングしていたのでは、腰痛は良くなりませんね。その理屈がわかっていただけたでしょうか?
 今回は、腰痛を理解する上で必要な基礎知識をご紹介しました。

いいなと思ったら応援しよう!