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親子の絆と七五三

着ないかもしれない、30分とモタナイだろうな、と勝手に思っていましたが、息子は着物と袴をずっと着ていました。それ自体が驚きなのに、「今度はいつ着れるの?」「明日?明日のつぎ?」と聞いてきました。

嬉しい、嬉しい!

着物は、私の父が約80年前に着たもの。袴は甥っ子が約25年前にはいたもの。これを絶対に着せたい、私は母が誂えてくれた着物を着て、とにかくまともな写真を一枚撮って両親に送りたい。お天気や機嫌が悪ければ別の日に。年内に撮れたらいいな。それだけが望みだった七五三の日は、良いお天気に恵まれ、成長した息子の晴れ姿に癒され、難なく良い思い出となりました。

つい最近、ご縁があって仲良くなれた友達や着物の先生にいろいろと教わり、少しづつ準備をしました。

80年前の着物はもしかしたら長襦袢かもしれないけれど、綺麗だからこれを着せちゃう。半襟は縫い付けてしまえばやんちゃな息子でもズレないかもしれない。紐の位置が高いから、昔おばあちゃんか、ひいおばあちゃんが丁寧に刺してくれた(かもしれない)刺繍を壊さないようにほどき、位置を調整。義母も手伝ってくれました。

学生時代に写真館で七五三の着付けのバイトをしていましたがすっかり忘れたので、動画を見ながら袴や紐の結び方などを練習。便利な世の中!

羽織もなく、家紋は大きすぎて不釣り合いだから泣く泣く諦め、草履もあったけど、当日は本人の気分で靴下にお気に入りのシューズ。

ルール違反ばかりのめちゃくちゃでしたが、家族の歴史のある着物を身につけてこの日をお祝い出来たこと、何よりも本人が喜び、楽しい1日を過ごせたことが幸せでした。

私は髪型がキマらず、コロナ以降一度も美容院に行っていないことを悔やんだり。息子の着付けばかりで自分の練習を怠り、着物の裾が少し短かったな。せっかくの写真では姿勢が悪いな…と思い残すことばかり。まあ、主役じゃないので、ヨシとしよう。

庭や神社でたくさん写真を撮りましたが、その中で一番印象的だったのは、夫と息子の写真。(その他は変顔の娘とふざける息子の写真ばかり)

二人は本当によく似ています。約40年前の夫の七五三の写真を義母に見せてもらいましたが、そっくりすぎて区別がつかないほど。姿勢・身長・髪型・色から雰囲気まで全て一緒。

写真に写る夫と息子はニコニコだけど、これから父と子の葛藤やら戦いが待っているのかなと、私の兄や父のことを思い出しては「楽しい時代」に浸っていました。

そして今朝の新聞にて。「息子と2人 弾む車中の会話」(神奈川県 80歳の方)

親しくしている柑橘問屋へ毎年自分の車で行っていたが、3年前に免許返納してからは彼の世話になっている。(2020年11月17日 朝日新聞 朝刊)

喜寿で免許返納した後、息子さんの車の助手席に乗るようになり、その時の会話が弾み、楽しい、というお話。

車中で声を上げて笑い合うと、父親として幸せな気分になる。喜寿に思い切って免許を返納してよかった。
ふと喜寿で逝った父親を思う。もっとオヤジに話しかけてやればよかった。

この記事を読んでまず思い出したのは、そんな雰囲気とはほど遠い父と兄二人。切なく、心には何だか苦い気持ちが広がりました。

私の父と兄たちは、どこの家庭にもある親子の葛藤よりも、少しだけ癖の強いいざこざがあり、未だにうまく和解出来ていない。私も兄たちには10年以上会っていない。

ふとスマホを見れば、夫と息子のニコニコ写真。

きっとこの先、たくさんの楽しい&苦い思い出をつくるだろうけど、最後にはこの記事の父と子のような、幸せな関係でいられたらいいな。

または、いつか兄や息子は「父」ともっと会話をすれば良かったと思うときが来るのかな。

私の記憶の中で、父と祖父が仲良く話している姿は見当たらない。でもこの着物がまだ真新しかった頃の父は可愛らしい子どもで、愛情をたっぷり注がれていたに違いない。(その後苦しい時代を生きることになるのだけど)

無事に七五三を終えられた安堵感と同時に、親子代々の絆について考えさせられた一日なのでした。


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seiko
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