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雪の日の記憶と息子の夢

先日降った雪。午後にはすっかり溶けてしまったのですが、その前に・・・と朝、息子を庭に連れ出しました。

雪を転がして雪だるまの胴体・頭を作る息子。大きな雪のかたまりを抱えて、ぬれたテラコッタの上で何度もころぶ息子。

彼の頭の中の「雪だるま」は3段らしい。鼻やボタン、腕のための石や枝を探してきて一生懸命作り上げました。

すっかり汗をかいて何度も着替えたり、ズボンをドライヤーで乾かしたり。登園前にバタバタと大忙しでしたが、一年に数回降るか降らないかの雪。この機会を逃すわけにはいきません。

雪国ではないため、これが「雪の思い出」として残るのだろうな。と考えると急に寂しくなってきました。

神奈川で育った私も、それほど雪の日の記憶はないけれど、「あの時、そういえば雪の日だった!」という記憶があります。

外は真っ白。静かな夜。居心地の良い自分の部屋。まだ兄たちも反抗期に入っていない、平和な時代。30cmくらいの棒2本に、セロテープでベタベタと紙を貼ってつなげ、巻き物のようなものを作りました。セロテープにピンクの蛍光ペンの色がつかずに苦労したのも覚えています。

出来上がった巻き物には、「私の夢」を書きました。大きな黒いマジックで、太く太く、一生懸命書きました。

ニヤニヤしながら、リビングでくつろぐ両親のもとへ。

「ジャーン!」と言いながら巻き物を広げた小学生の私。両親の笑顔が一瞬で苦笑いになるのを見逃しませんでした。

苦笑い。この言葉を覚えたのもその時かもしれない。

私が書いたのは「デザイン家になりたい!」でした。どうやら世間では「デザイナー」と呼ぶらしい。

絵が好き、色が好き。そんな小学生がデザインなんてかっこいいカタカナを知り、早まって夢を書いてしまった。しかもマジックで太く太く、丁寧に、一生懸命。

写真家、書道家、小説家、画家。いろいろいるけど、私はデザイン家になりたいのだ!と、沸き上がったホヤホヤの熱い気持ち。

最初に誰か教えてくれなかったのかな。職業名の語尾がこうなる可能性を。

その時の両親の気持ち。痛いほど分かります。

「い、いいね……。でもね。ま、いいや。すごいね。がんばれ!」

雪の日。それは雪とは全く関係の無い思い出ですが、真っ白に消せない、苦く恥ずかしい記憶に結びついているのでした。

そんなことを思いながら幼稚園へ急ぐ、雪解けの朝。車の中。

新聞で見た「はやぶさ」の話を私がしていたら、ウルトラマンなど宇宙に関する話に。

その流れから、「宇宙に行ってみたい?将来は宇宙飛行士だね、かっこいいなあ!」という私の言葉。

そして息子はすかさずこう答えました。

宇宙飛行士になんかなりたくない。ボクは宇宙人になりたいの!

デザイン家なんて可愛いわ。あの時も両親はただ、「可愛いな」と思っただけ。きっとそうだ。と笑いが止まらないのでした。

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