良妻は、なぜ愚母に陥るのか
「いい人ね」と言われる男より「ワルい人ね」と言われる男のがモテるのが現実。
良いことをしても成功できない。成功するには、実効性のある方策を実行するほかないのも現実。
世の母親はワルい男に惹かれても、息子にはワルい男になってもらいたくない。
世の母親は現実的な戦略家だが、息子には賢しらな戦略家になってもらいたくない。
息子にはいつまでも純な存在でいてもらいたいーーそんな御都合主義を克服できれば、たぐいまれなる賢母よと賞賛されるのであろうが、その域に達するのは並大抵なことではない。
ここで出番なのが父親である。
だが、その頃にはすでに、手回しのいい「良妻」が万事切り盛りして、息子の成育にタッチできなくなっている。
授乳以来、成育権を完全制圧されてしまい、無力化した父親は「妻の私物」に手を出せずにいるのが現実だ。
武家の男児が乳母に育てられたのは、多産が目的だけではないのかもしれない。授乳によって母親の権勢が強まり、家中が乱れることを怖れたことも大きな要因なのではないか。
幸いにして我が家は、家内がとぼけているので、息子の成育には、私が主体的に取り組めている。坊やは私を尊敬し慕い、男として日に日にたくましく育っている。
「良妻賢母」は昔の話。「悪妻賢母」あるいは「良妻愚母」というのが当世風なのかもしれない。
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