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適切な治療が肝要な腎盂腎炎ー耳寄り健康講座⑤
今月のアドバイザー
常磐病院 新村浩明 院長
皆さんこんにちは。ときわ会常磐病院の新村です。今月は「腎盂腎炎」についてご説明します。
「腎盂腎炎」とは、膀胱から細菌が逆流することによって引き起こされる、腎盂および腎臓の感染症のことをいいます。比較的女性に多い病気で、適切なタイミングで、適切な治療(抗生剤の投与、補液)を行わなければ、細菌が血液中に侵入し、いわゆる「敗血症」と呼ばれる生命をも脅かす状態になってしまいます。
【腎盂腎炎の症状】
発熱、側腹部痛、頻尿、膿尿、血尿など。
【原因】
典型的な腎盂腎炎は、膀胱に感染した細菌が、腎臓へ尿管から上行することによって起きます。これを「膀胱尿管逆流症」といいます。ごくまれに血流が腎臓まで細菌を運んでしまい腎盂腎炎になることもあります。
【危険因子】
尿路結石や前立腺肥大症などによる尿路の閉塞、がんや糖尿病などによる免疫力の低下、神経因性膀胱(神経障害によって膀胱の知覚・排尿に障害が生じた状態のこと)、膀胱留置カテーテルの長期間使用、膀胱尿管逆流症(先天的に膀胱の尿が尿管から腎臓に逆流する症状)など。
【腎盂腎炎のリスク】
腎盂腎炎を適切に治療せずたびたび繰り返すと、腎不全となり透析が必要となる場合もあります。また、重症の腎盂腎炎では細菌が血液に侵入し、敗血症、菌血症などの合併症を引き起こして、危険な状態になります。
【検査方法】
腎盂腎炎の検査は尿検査、尿培養、血液検査、CTやエコー検査による画像診断により行われます。
【治療方法】
腎盂腎炎の治療は、まず抗生剤の投与です。軽症の腎盂腎炎であれば、外来通院で点滴による抗生剤投与、また内服の抗生剤等で治癒します。しかし、高熱が持続する重症の腎盂腎炎の場合、入院して治療が必要となります。
また、腎盂腎炎の原因として、前述した尿路結石や前立腺肥大症などによる尿路閉塞を伴う場合は、尿路の閉塞をカテーテルなどで解除し、体外へ膿の排除をしなければ治癒しません。
膀胱尿管逆流症で、たびたび腎盂腎炎を繰り返す場合、腎盂腎炎の発症の防止のため、手術的に膀胱尿管逆流症を治療しなければいけない場合もあります。
【予防方法】
①水分摂取
適切な量の水分を摂取することによって、尿量を確保し、侵入した細菌を体外へ洗い流すことが大切です。
②排尿を我慢しない
排尿を我慢することで、侵入した細菌が膀胱内で繁殖しやすくなり膀胱炎を引き起こしやすくなります。そのため長時間我慢せず、排尿することを心がける必要があります。
③性行為の後の排尿
性行為の後は膀胱内に細菌が侵入している確率が高く、そのため性行為の後排尿することによって、膀胱炎を予防することができます。
【最後に】
腎盂腎炎は風邪とは違い、抗生剤投与なしで自然に治癒することはありません。前述した症状が認められる場合は、医療機関を受診して適切な治療を受けるようにしてください。治療のタイミングが遅れると、治療に時間がかかるだけではなく、腎臓のダメージも大きくなるので、腎機能の面からも適切な治療が肝要となります。
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しんむら・ひろあき 1967年生まれ。富山大学医学部卒。専門は泌尿器科。2015年から現職。
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