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冬に多発する「ヒートショック」|耳寄り健康講座23
常磐病院の新村です。寒さも本格化してきましたね。皆さん寒さ対策はしっかり取られているでしょうか。日中だけでなく、「お風呂場での寒さ対策」にも注意が必要です。今回は、冬の浴室で多発する「ヒートショック」についてお話していきます。
【ヒートショックとは】
ヒートショックは、気温・室温等の変化によって血圧が乱高下し、血管疾患等が発生してしまうことを言います。
特に冬の浴室で発生することが多いです。暖かい部屋から寒い浴室に移動した際、急激な室温の変化に身体が対応できず、頭痛やめまい、失神などの症状が生じます。時には脳卒中や心筋梗塞など命の危険につながる場合もあります。
【温度差と血圧の関係性】
寒い時、人は体温を維持するために血管が収縮します。血管が縮むと血液の流れが悪くなってしまうため、心臓はより多くの血液を送り出そうとします。ポンプの役割を果たす心臓がより多くの血液を流そうとするので、血管にも圧力がかかります。これが寒い時に血圧が高くなってしまう理由です。
入浴の際、服を脱いで裸になると、体が冷えて血圧が上がり、温かいお湯に入ると今度は逆に血圧が下がります。この寒暖差が大きいとヒートショックのリスクが高まってしまいます。
【命を落としかねない】
警察庁の資料によると、2020年の交通事故の死者数は約2800人。
それに対し、毎年浴室で亡くなる方は約1万7000人(東京都健康寿命医療センター研究所調べ)に上っており、その原因の多くがヒートショックの影響とも言われています。交通事故による死者数よりも、浴室での死亡者の方が多いという点はぜひ覚えていただきたいです。
特に、身体の体温調節機能が低下しがちな高齢者は注意が必要です。急激な温度変化に対応できずヒートショックが発生するリスクが高いです。ヒートショックで失神してしまった際に、転倒し頭を強く打ったり、浴槽で溺れてしまい亡くなる方も毎年多数います。比較的若い方でも、高血圧や糖尿病など生活習慣病の方、動脈硬化と言われている方は注意が必要です。
【ヒートショックの予防方法】
ヒートショックは温度差によって発生するので、入浴前に脱衣所や浴室を温めておくことをおすすめします。また、いきなり浴槽に入らず、手や足の先から体を温め、お風呂の温度に身体が慣れてから入浴すると良いでしょう。
日が出ている時間帯や冷え込む前の時間に入浴したり、冬場はお湯の温度を少しぬるめにするのもおすすめです。
【まとめ】
ヒートショックが原因で亡くなられる方は、交通事故による死者数よりも多くいらっしゃいます。高齢者や基礎疾患をお持ちの方は、ヒートショックのリスクが高いため、急激な温度変化が発生する冬場の浴室などは特に注意が必要です。
若い方も「自分は大丈夫」と思わず、ヒートショックに気をつけて入浴するようにしましょう。
しんむら・ひろあき 1967年生まれ。富山大学医学部卒。専門は泌尿器科。2015年から現職。
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