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【常磐病院】空気の乾燥が与える影響|耳寄り健康講座34
年が明け、2025年を迎えました。皆さま、本年もどうぞよろしくお願いいたします。
1月にもなると、気温がだいぶ低くなりますね。冬場は寒くなるのと同時に、空気が乾燥する季節でもあります。今回は乾燥した空気が身体に与える影響について、ご紹介していきたいと思います。
【冬はどうして空気が乾燥するのか?】
冬場に空気が乾燥する理由は、気温が低くなると空気中の水分量(飽和水蒸気量)が減少してしまうためです。
もう少し大まかに説明すると「温度の低い水蒸気は水や氷に変化しやすく、空気中の水蒸気の量が少なくなってしまう」というとイメージしやすいかもしれません。
【空気の乾燥と身体への影響】
通常、我々の肌や粘膜は、水分を保つことで細菌やウイルスなどの侵入を防いでいます。
肌の角質層には「セラミド」という脂質があり、これが細胞同士を結びつけるなどの役割を担い、細菌やアレルゲンなどの刺激が侵入することを防いでくれます。
また鼻やのどなどの粘膜は、粘液を分泌することで、ウイルスや細菌を吸着させます。その後、鼻水やたんなどとして体外に排出し、体内への侵入を防いでくれます。
しかし、身体が乾燥してしまうと、それらのバリア機能が低下してしまい、さまざまな病原体が身体の中に入りやすくなってしまいます。
また、身体が冷えることで内蔵の機能が低下し、免疫力が低くなってしまいます。
一方、ウイルスは乾燥した空気の方が生きやすく、長時間空気中を漂いやすいという性質を持ちます。このようなことから、乾燥した冬場に感染症が流行しやすくなります。
【乾燥対策】
冬の乾燥対策として、以下のことに気をつけると良いでしょう。
○加湿器を用いて、室内の湿度を50%前後に保つ。
○温かい飲み物を小まめに飲む。
○保湿用クリームなどで肌乾燥を防ぐ。
そのほか、入浴時に熱めのお湯で洗顔をしたり身体を強く擦ったりすると、皮脂が必要以上に落ちてしまうほか、皮膚を傷つけてしまう恐れがあるため、冬場の入浴はぬるめのお湯で身体を優しく洗うことをオススメします。
加えて適度な運動、バランスの良い食事、十分な睡眠を心掛けることで、身体の免疫力を保つことに繋がります。
【乾燥と病気】
空気の乾燥は、前述の通り、感染症が流行しやすくなります。そのほか、下記のような病気にもお気をつけください
○気管支炎、気管支喘息……乾燥し空気が気道を刺激し、炎症が起こりやすくなり、咳が出やすくなります。
○鼻炎……鼻の粘膜が乾燥することで炎症を起こし、鼻汁過多(鼻水)や、鼻閉(鼻づまり)などを引き起こします。
○乾燥性皮膚炎(皮脂欠乏性湿疹)
……皮脂の分泌が減ることで乾燥が進み、かゆみやかさつき、ひび割れなどが現れます。
なお、乾燥を防ぐために室内に加湿器を設置している方も多いと思います。ただ、加湿器は定期的に清掃しないと、カビや細菌が水蒸気と一緒に放出され、過敏性肺炎を引き起こす可能性もありますので、ご注意ください。
しんむら・ひろあき 1967年生まれ。富山大学医学部卒。専門は泌尿器科。2015年から現職。
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