見出し画像

【常磐病院】アルコールが身体に及ぼす影響|耳寄り健康講座28

 常磐病院の新村です。暑くなるとお酒を飲む機会も増えてきますね。適量の飲酒は、心地良い気持ちになりますが、過剰な飲酒は禁物です。今回は「お酒が及ぼす身体への影響」についてお話していきます。

 【お酒の適量】

 古くから日本人に愛されているお酒ですが、飲み過ぎてしまうと身体に様々な悪影響を与えます。厚生労働省は「通常のアルコール代謝能力を有する日本人においては〝節度ある適度な飲酒〟の量として、1日平均純アルコールで約20㌘程度」としています。これは、5%のアルコール濃度のビールで500㍉㍑程度、7%のチューハイだと350㍉㍑程度の量になります。もちろん、アルコール代謝能力が低い人や女性は、より少ない量で留めるのが望ましいです。なお、厚生労働省が発表している「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」には純アルコール量の計算方法も出ていますので、参考までにご紹介します。

 ●お酒に含まれる純アルコール量(㌘)の計算方法

 純アルコール量(㌘)=摂取量(㍉㍑)×アルコール濃度(度数/100)×0・8(アルコールの比重)

 ※厚生労働省「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」より

 【アルコール摂取後の体内の働き】

 口から入ったアルコールは、胃で約20%、小腸で約80%が吸収され、血液によって身体を巡った後、肝臓に運ばれ体内で分解作業がおこなわれます。アルコールは、アセトアルデヒドという毒性のある物質に分解され、さらにアセトアルデヒドは酢酸に分解。酢酸も二酸化炭素と水に分解されて、最終的に体外に排出されます。

 【影響①アルコールによる脳への作用】

 アルコールを含んだ血液が肝臓に向かう途中、脳にも血液が巡ることでアルコールが脳を麻痺させる働きを与えます。血中アルコール濃度が、 0・02~0・1%程度であれば心地良い気持ちになる、いわゆる「ほろ酔い」の状態ですが、血中アルコール濃度が高まると、呂律が回らなくなったり、まっすぐ歩けなくなったり、適切な判断ができなくなってしまいます。

 【影響②毒性のあるアセトアルデヒド】

 肝臓に運ばれたアルコールは、酵素の働きによってアセトアルデヒドという発がん性のある物質に分解されます。アセトアルデヒドも酵素によって酢酸に分解されていきますが、アセトアルデヒドを分解する力が弱い人は、頭痛・めまい・吐き気などの影響が現れます。

 日本人の約40%はアセトアルデヒドの分解酵素の働きが弱い「お酒が苦手」な体質であるとされ、その中でも約4%がアルコールを全く受け付けない体質と言われています。

 【飲酒の際に気をつけること】

 飲み過ぎないことは当然として、飲酒の際は以下の点を心掛けると良いでしょう。重要なのは「血中アルコール濃度を上げない」、「体調不良を引き起こすアセトアルデヒドを蓄積させない」という点です。

 ・空腹で飲酒しない(アルコールの急激な吸収を避ける)

 ・飲酒中は水も飲むようにする(血中アルコール濃度を上げない)
 
・ゆっくり時間を掛けてお酒を飲む(アセトアルデヒドの分解時間を設ける)

 なお、アルコールには利尿作用があり、排尿の頻度が普段より高まります。この点からも飲酒中はお水を積極的に飲むことをおすすめします。


しんむら・ひろあき 1967年生まれ。富山大学医学部卒。専門は泌尿器科。2015年から現職。
月刊『政経東北』のホームページです↓

いいなと思ったら応援しよう!

月刊 政経東北
よろしければサポートお願いします!!