株式会社イブキ(鳥取市秋里)
昭和52年2月の創刊時から連載されていた、山陰の事業所を紹介する『事業所めぐり』をnoteで順次紹介。今回は昭和52年3月5日号より、株式会社イブキを紹介します。
※地名、店名、役員、広告内容等記載内容は掲載当時のものです。
【事業所めぐり5】株式会社イブキ(鳥取市秋里)
同社の前身は、明治16年創業の伊吹商店。県東部地区の肥料販売の”草分け”でもある。昭和に入ってからは“統制経済時代”などを乗り越え、10年に化学肥料に転換するなど着々と現在への基礎を築いた。
戦後、日本人の食生活が向上するのに伴って、鶏卵・食肉の需要は高まった。このため増加してきた畜産農家に向け、27年ごろから飼料販売を業務の主軸にするようになり、今日に至っている。32年に現社長が㈱伊吹肥料本店を設立。50年7月、現在の社名に改称。
昨年(昭和51年)の売り上げ約10億円(対前年比43%増)と、この不況のなかにあって驚異的な伸び。同社では好調の原因として、▼本来鳥取県は晨業県であり、また公害も少なく畜産の立地粂件に適している(ブロイラーの生産は全国でも上位)▼日本人の食肉化、国の農業政策などに対応して、家畜農家の事業化・企業化が拡大した▼特約店やメーカーなどが一体となり共済組織を確立。全農を通じ、畜産農家の保護に当たった▼これまで20キロ詰めの紙袋で神戸や尼崎の工場から飼料を運送していたが、二年前からトランスパック(500キロ詰めのビニール袋、トン当たり2000円安)に切り替え、輸送コストを小さくした―など。
「お客さんの身になって考える」という同社長の基本姿勢のもと、現在畜産農家を助成するため技術を提供したり、増設資金のあっせんを行っている。また、53年には関係者の横の連絡を密にし、畜産発展のための拠点「畜産センタービル」を国道9号線沿いに設立する予定で、すでに用地も確保済みとのこと。
同社長は、「将米は畜産物の加工販売やペットフードの販売、さらには園芸肥料など幅広く手掛けていきたい。また、200カイリ時代を迎え日本人のタンパク質の供給源として、ますます畜産部門への需要が大きくなる。それにつれてわれわれの社会的使命も重大となろう」と話している。
創業時の並々ならぬ苦労というのは、あらゆる事業に共通したことだが、同社の創業当時は川底、池の底などから泥を採取し、それを乾媒させて飼料を製造したということで、真冬の厳寒のなかで川ざらいをするなど、先人の苦労話をもれ聞くたびに身が引き締まる、とは社長の弁。(昭和52年3月5日号)