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中井酒造株式会社(倉吉市中河原)

 昭和52年2月の創刊時から連載されていた、山陰の事業所を紹介する『事業所めぐり』をnoteで順次紹介。今回は昭和52年6月15日号より、中井酒造株式会社をご紹介します。
※地名、会社名など各種名称、役員、事業内容・方針、広告内容等記載内容は掲載当時のものです。


【事業所めぐり26】中井酒造株式会社(倉吉市中河原)


倉吉市から小鴫橋を渡って関金温泉へ向かう国道313号線沿いに、道路をはさんで中部の銘酒「八潮」で知られる中井酒造㈱の本社・工場がある。現社長のおじいさんの代からというから「創業開始は明治初年までさかのぼるだろう」と、中井憲一社長。

”酒の王者"として君臨していた日本酒は、ウイスキー、ブランデー、ビール、ワインなどの洋酒愛好家が増えたため、いささか押され気味の昨今だが、懇命な巻き返し作戦を展開中だ。その成果が現れたのか、いま全国的に地酒が見直され始めており、県産の日本酒の需要も静かな高まりを見せている。もっとも、灘や伏見といった大手メーカーの攻め込みはきびしく、防戦に必死。

そこで、この4月には県内一斉に「地酒まつり」を開催、消費拡大を呼びかけた。中部でも4月11、12、13日の三日間にわたり、倉吉商工会議所で催したが「3000人近くの入場者があって、もっと閉館を延長してくれという要望も出たほどで好評でした。会場内で酒のカスの使用法を説明したパンフレットを配ったり、きき洒大会を行ったりして、かなりの成果があったと喜んでいます」と、倉吉酒造組合の組合長でもある中井社長は満足そう。

もっとも、県内で県外酒の占めるシェアは二割程度だから、他県に比べて地酒の需要は比較的に高いといえよう。しかし、毎年のように変わる消費者の嗜好傾向には手を焼いており、対策の「決め手がつかめない」らしい。ことしの地酒まつりにも、いろいろなタイプの容器や、工夫をこらした新商品の展示がみられたが、コンスタントに伸びているのはワンカップだという。「倉吉館内はPRが活発な方で、特級や一級など高級酒の売れ行きは比較的いい」らしく、高級酒が全体の70%近くを占めている。

同社では、昭和29年からビールの卸しを行っており、進物用などには圧倒的に需要が多いが、ウイスキー、ジュース、ワインなども売れ行きは急成長している。清酒は、不況ということで、51年からカルテルを実施、生産調整に乗り出しているが、昨年の売り上げ伸び率は全国平均で0.6%前後。同社でも0.8%程度で終わった。需要の伸び悩みに加えて、年ごとに上がる米価を初めとする原料の高騰に抗し切れず、今月にも値上げする意向だ。先ごろ大手メーカー2社が値上げしたが、値上げ幅は「やはりメーカーに追随という形になりますね」と、10%以下ということらしい。

昭和26年に法人化して以来、36年に現在の鉄筋ビルを建設、続いて48年には和田地区に共同精米所(6600平方㍍)を四社で設立するなど、同社は、中部の銘酒「八潮」の地盤を着実に広げてきた。社員は26人だが、醸造期の11~4月には島根から七人余りの職人さんが来て、酒の仕込みに励むという。(昭和52年6月15日号)



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