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協同組合やよいデパート(米子市錦町)
昭和52年2月の創刊時から連載されていた、山陰の事業所を紹介する『事業所めぐり』をnoteで順次紹介。今回は昭和53年2月5日号より、協同組合やよいデパートの記事をご紹介します。
※地名、会社名など各種名称、役員、事業内容・方針、各種表現や広告内容等記載内容は掲載当時のものです。一部数字を漢数字から英数字に変更。
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【事業所めぐり68】協同組合やよいデパート(米子市錦町)
昭和44年3月、国道9号線の拡幅工事に伴って店を追われた商店主18人が共同出資、協同組合として発足した。設立にあたっては県の高度化資金などを積極的に利用しながら、各組合員からの出資金1億円を募り、翌年の45年9月に売り場面積1万平方㍍を有する大型デパート「米子やよい」を設立、営業を開始した。
協同組合という性質上、運営に際しては「組合員間の意志の疎通、調整」を特に重要視、相互研修を夜遅くまで繰り返した。そうした初期の信念は現在も毎日の朝礼とか、頻繁な役員同士の話し合いという形で生かされており、相互の信頼は強い。現在の成功の要因について、上森副理事長は「まず、梅林理事長という強力なリーダーを得たこと。そして、組合員の相互理解が円滑に行われたこと。それと好況時に恵まれたということも見逃せない点としてあげられる」と今日までの歩みを振り返りながら感慨深げ。
全国300社あまりで構成する全国共同店舗連盟のなかで数年来、トップを続ける売り上げは昨年実績で米子やよいが96億円、松江やよいが66億円を記録。オイルショック後―特にこの1、2年間は個人消費の急激な落ち込みで各デパートとも減益を余儀なくされているが、しかし、そうした中でも4~5%の実質伸び率を維持している。
いずれにしても―と岡田精肉店の岡田常務は「今日あるのはそれぞれの組合員が一国一城の主であるという意識を捨てて協力し合ってきたということが一番だと思う。片方で自分の商売をやりながら共同事業をやるというような中途半端な考え方では、とても成功はおぼつかない」ということらしい。
県下でも各所で共同店舗化構想や協同組合事業が様々な業種にわたって計画されているが、こうしたやよいの教訓は各経営者にとっても参考になるものと思われる。特に大型店が進出するからということで対抗上、「では、われわれも…」というような安易な考え方で発足したところがいずれも厳しい実情にさらされていることを思うと、要は気構えの問題ということか。
設立当初から「大衆化」ということを前面に押し出しての営業姿勢を維持する同デパートだが、梅林理事長はことしのスローガンとして▽お客さま優先、現場主義に徹する▽先手必勝、自己の限界に挑戦しよう―などを掲げ、「7~8%の伸びは確保したい」と意欲的。低成長下、転機を迎えた小売り流通業界だが、本部も昨年6月に増改築し、新時代に対処しようとしている。(昭和53年2月5日号)
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