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株式会社小銭屋(鳥取市永楽温泉町)

 昭和52年2月の創刊時から連載されていた、山陰の事業所を紹介する『事業所めぐり』をnoteで順次紹介。今回は昭和52年7月25日号より、株式会社小銭屋をご紹介します。
※地名、会社名など各種名称、役員、事業内容・方針、広告内容等記載内容は掲載当時のものです。



【事業所めぐり33】株式会社小銭屋(鳥取市永楽温泉町)


定かではないにせよ、古文書によると江戸時代は文政年間の創業というから160年の歴史を誇る。とはいえ、はっきりしてくるのは明治初年ごろ、故小谷栄蔵氏が元大工町で開業していたあたりから。もちろん、現社長が何代目に当たるかは不明。

戦前は時世を反映して、軍関係者、官公庁の人たちが多く利用してにぎわっていたが、戦後まもなく現在地・永楽温泉町へ移転し、昭和23年に株式会社小銭屋として再スタート。40年には新館を完成させるなど増改築を重ねながら現在に至っている。その間には、昭和40年天皇皇后両陛下が大山植樹祭の折にご宿泊、また、翌41年には皇太子ご夫妻が国立公園大会の折にご宿泊になるなど、格式の高い日本旅館として、広く知られている。

鳥取温泉の中心街に位置する同旅館は、約5000平方㍍の広大な敷地を有しており、本・旧館合わせて客室が29室、80畳と40畳の大宴会場がそれぞれ一室ずつ、また、館内から豊富に湧き出る60度の温泉を利用した大浴場などがある。なかでも客室から望む日本庭園の美しさはバツグン。池の周囲には、四季を通じて様々な花が咲き誇り、また、庭園の一隅にひっそりと建っている茶室も庭園の美しさに色どりをそえており、思わず目を見張らせるものがある。

ここ数年の間に鳥取市内でも近代的ビジネスホテルがあちこちで建ち始めており、わずかではあるが利用客減の一因にもなっている。とはいえ、”質素な趣“”日本庭園“をキャッチフレーズにしている典型的な日本旅館である同旅館へ訪れる和風好みの利用客も少なくない。

質素な趣のある日本旅館が改めて見直されるようになったわけで、家族連れや5~10人程度のグループをはじめ新婚のカップルの宿泊が一段と増えてきたという。また、年末年始の宴会も格別多く、低迷気味といわれる業界にあって同旅館の景気はまずまずのようだ。しかし、ご時世がら、以前のような”ドンチャン騒ぎ“はさすがに影をひそめ、代わって会食的な静かな宴会が主流を占めるそうだ。

小谷種夫常務は「現在のような低成長時代こそ、いまある設備を生かし、まじめに経営していくことが、より大事なことだと思います。高度成長時代のような過剰な設備投資をして、収容能力などを増やしてお客さんを待つというのは、これからはもうダメ。いまは、投資をするよりも、サービス体制の強化を進めることの方が賢明」と、時代に即応した経営方針を披露。従って、従業員教育に余念がないのはもちろんだが、なかでも調理師教育には力を入れている。

利用客のし好に変化が生じたこと、冷凍食品の普及などで、調理方法も従来からのやり方だけではダメなので、調理師たちが研究する時間を十分とれるよう気を配っていると同社長。(昭和52年7月25日号)



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