諏訪酒造株式会社(智頭町智頭)
昭和52年2月の創刊時から連載されていた、山陰の事業所を紹介する『事業所めぐり』をnoteで順次紹介。今回は昭和52年11月25日号より、諏訪酒造株式会社の記事をご紹介します。
※地名、会社名など各種名称、役員、事業内容・方針、広告内容等記載内容は掲載当時のものです。
【事業所めぐり57】諏訪酒造株式会社(智頭町智頭)
創業が安政6年という県内でも古い酒造元の一つ。敷地面積(三区画)3960平方㍍の工場のほか3000平方㍍の倉庫を持ち、地元・八頭郡河原町、郡家などで産出する良質米を原料に銘酒「諏訪娘」「八上姫」を製造、県東部、岡山県北部一円の小売り業者に卸している。
大正4年ごろ、創業時からランク別にいろいろな日本酒を製造していたのを「諏訪泉」に統一。これを昭和初期に「諏訪娘」に銘柄変更し、初来、この名で多くの日本酒ファンに永く親しまれながら、地酒の代表的銘柄として成長。
昭和25年、合資会社諏訪娘酒造場に法人化。36年ごろから製造工程に機械を導入、大量生産を図るようになり、41年10月には河原町にあった八上酒造㈱と合理化のために合併、現商号に変更した。同時に以前から八上酒造㈱で製造していた「八上姫」もその製造を引き継ぎ、ことし10月、現代の食生活に合ったあと口のさっぱりした清酒「諏訪泉」の製造も開始。
ことしはこの3銘柄で在庫が少ないため昨年の生産量実績640キロリットルを大幅に上回る750キロリットルを生産する予定で、金額的には昨年の売り上げ高3億5000万円の2~3%―5~6%の微増を見込んでいる。
現在、清酒はビールやウイスキーなど洋酒に押され、需要が伸ぴ悩みのうえ、特に地酒は灘や伏見の大手メーカーの進出でその環境は厳しく、昭和33年4月から代表に就任している現社長は「大手の一級品の進出により、以前二級酒が主力だった地酒も今は一級酒に変わり、金額的には良いが消質者の伸び率が悪く、また、売れない清酒のダンピングによる影響もあり、本県の清酒消費量に占める地酒のシェアは10年前から減り始め、以前7割以上あったのが今は6割程度」という。
それでも、地酒のレベルは他県に比べると高い方で、その占めるシェアもまだ他県ほど低くなっておらず、「もっと地酒を見直してもらいたい」と社長の声にも思わず熱がこもる。
しかし、大手の一級品も3、4年前から伸び悩み、昨年は全国的に日本酒を収り巻く環境が最も厳しく、ことしも春、夏の消費の伸びはやや上向き加滅だったが、この秋は再び下降気味。「最盛期の年末、年始の消費の動きが心配。これからは日本酒対洋酒の時代で、特に若年層にもっと手軽に日本酒を飲んでもらうよう働きかけ、需要の拡大を図ることに各酒造場が一体となって力を入れなければならない」と語る社長の表情は厳しい。
もっとも、酒は急に売れたり、売れなくなったりするというものではないから「とにかく地道に良い酒を造り、多くの人に味わってもらいたい」。(昭和52年11月25日号)