有限会社山本おたふく堂(東伯郡東伯町八橋)
昭和52年2月の創刊時から連載されていた、山陰の事業所を紹介する『事業所めぐり』をnoteで順次紹介。今回は昭和52年4月25日号より、有限会社山本おたふく堂をご紹介します。
※地名、会社名など各種名称、役員、広告内容等記載内容は掲載当時のものです。
【事業所めぐり15】有限会社山本おたふく堂(東伯郡東伯町八橋)
現社長の山本一寿氏で5代目という同社は創業100年という伝統を誇る。山陰名物「ふろしきまんじゅう」として各物産展に出品、第17回全国菓子大博覧会では金賞を獲得した。これは、創業以来一貫して維持してきた着色料を使わない、黒砂糖とこしあんだけの新鮮で、自然なままの風味が中央でも認められたことを意味している。
しかし、同社急成長の契機はなんといってもマイカー時代を先取りした昭和41年の国道9号線沿いへの進出だろう。シーズンともなれば、県外観光バスが列を並ぺる同店駐車場も進出当時は、田畑の中の一軒家。「おたふく堂もこれでオシマイだ、と批判がありました」と、同社山本孝則専務は、当時をふり返る。
43年には店舗・工場を拡張、この3月には新型機械も導入して製造の完全自動化をも実現した。同時に4月から毎週火耀日の定休日を取り止め、「お客様本位を」と年中無休を実施している。
「ここまで伸びてきた原因はやはり創業以来の味を尊重、製造直売を重点にして、支店をあまり拡大したりしないで、拠点販売を中心にしてきたお陰かもしれません」と同専務。
チェーン化など各社とも支店拡大に躍起となっている今日、その営業方針は注目に値する。「山陰の名物”ふろしきまんじゅう“はこの八橋に来なければ買えないという意識を消費者に定着させる、という商法もあっていいと思います」と、自信のほどをのぞかせる。
とはいっても、毎年各物産展に出品したり、デパートで実演即売をしたりしてPRにも抜かりはない。
年間売り上げ目標をことし1億6000万円に置いている同社は、この不況下、順調に業績を伸ばしているが、「やはり、食べものということで強いのかもしれません。それと、観光客の財布のひもが固くなったといっても土産ものとしては安いですからね」と見掛けよりも食べ物本来の生命である“味”で勝負、ということで創業以来の素朴な風味を今後も大切にしていく、という。(昭和52年4月25日号)