鳥取YKK産業株式会社(鳥取市安長)
昭和52年2月の創刊時から連載されていた、山陰の事業所を紹介する『事業所めぐり』をnoteで順次紹介。今回は昭和52年12月5日号より、鳥取YKK産業株式会社の記事をご紹介します。
※地名、会社名など各種名称、役員、事業内容・方針、広告内容等記載内容は掲載当時のものです。
【事業所めぐり60】鳥取YKK産業株式会社(鳥取市安長)
𠮷田工業というと昭和9年に現社長の𠮷田忠雄氏が創立以来、YKKファスナーの名で一躍世界を席巻、現在では国内の9割、世界の3割をそのシェア下に収める驚異的な急成長ぶりをみせたことで知られる。
また、37年には建材アルミサッシの生産、販売にも着手、全国組織の販売網を駆使してサッシ部門でも一躍業界チップに躍り出た。鳥取𠮷田産業はその一翼を担うYKKアルミサッシの県内における総販売元であり、50年8月に株式会社として独立した。
同社は当初、44年に松江に設立された松江YKK産業㈱の烏取出張所として発足した。しかし、その後の業績の向上、シェアの拡大にともない倉吉・米子の両出張所を翼下に収め、全国に68社ある𠮷田産業の中でもベストテンに入る伸長ぶりを示している。全社員持ち株制、原料から製品までの「完全自前主義」などその特異な社風と経営姿勢で知られる「𠮷田イズム」は同社でも活かされ、「みんな自発的に8時、9時までがんばってくれて定時に帰る社員はいません」と幅慎一郎営業部長。23名の従業員の平均年齢も24、5歳とまさにバイタリティーあふれるという感じである。
今年度の売り上げは「10億円を超すのは確実です」と昨年の20%増に意欲を燃やす幅部長だが、独立がオイルショック後のちょうど不況時に当たったこともあり、苦労の連続だった様子。それと近年は大手の建材商社をはじめとして建材を扱う業者が多くなり、「サッシも販売窓口が広がり過ぎた感じで価格に乱れが出ている」との問題点もある。
特に県内では地元の代理店の力が強く、代理店を通じての不二、三協、日軽などの各メーカーがしのぎを削っての売り込み合戦を展開しているが、最近は各社とも製品開発が活発でメーカーによる特徴というものはなくなりつつある情勢。そうしたなかでYKKサッシを売り込むためには「基本的には業者が扱いやすい、苦情のこない製品ということをPRしている」という通り、アルミをふんだんに使った強度の高いサッシということで業界でも定評がある。
幅部長は「他社に比べてコストが高いという声をよく聞きますが、タフなサッシ作りという観点からアルミや地金を他社製品に比べて多く使用しており、製品と比べて決して高くはないハズ」と原料→生産→販売の完全一貫体制による合理化の成果を強調する。
今後の課題としては「シェア拡大に全力を尽くすことはもちろんだが、現在の課題としては製品の付加価値を高めていくことに力を入れたい。木造住宅の場合でいえば建築総予算の一割がアルミ建材に使用されれば良い方。たとえば雨戸など利用範囲はたくさんあるはずだ」と1戸当たりの売り上げ増を当面の目標としている。(昭和52年12月5日号)