仙腸関節の痛み 第3章
ついに夏休みが近づいてきましたね。
皆さんは長期休暇中の固定管理ってどのようにされていらっしゃるのでしょうか。しがない柔道整復師のタチ君です、どうぞよろしく。
今日はついに仙腸関節の痛みの第3章に入っていきたいと思います。
なんだか調べれば調べるほどドツボにハマってしまいそうになりますが最後にまとめみたいなのを書ければなあ、と考えております。
第3章 痛みの病態
⒈疾患概念と疫学
A.病態
仙腸関節の関節面は縦方向に近い形態をしているため、垂直に負荷がかかるとずれるような力が働きます。
そこでそれを支えるのが後方にデンと構える靭帯群です。
関節にはしまりの位置と、ゆるみの位置があるのですが
仙腸関節の場合は…
LPP(最大ゆるみの位置):中腰姿勢
CPP(最大しまりの位置):腰を反らせた状態 と、こうなります。
反復作業の繰り返しや捻れ等で骨盤周囲筋の協調運動に破綻が生じると
仙腸関節にずれや不適合が生じます。
そのまま身体を反ると関節はCPPになるため、滑らかな運動を行うことができなくなり、
仙腸関節障害(機能異常)を引き起こしてしまいます。
1)仙腸関節障害の発痛源
障害例に関節腔内・外ブロックを行なうと関節腔外の方が効果的であった(BOROWSKYらの報告)
▶︎ 靭帯領域に発痛源の存在を示唆
2)発痛機序
①仙腸関節にズレ(機能障害)
②周囲組織(特に後方の靭帯)に過緊張
③靭帯、周囲組織に分布する知覚神経終末や侵害受容器が刺激
④疼痛発生
B.誘因
1)歩行生活
生理的な直立二足歩行ができていれば頸椎や骨盤が重力線から多少逸脱していても応力を吸収し自動修復されていく
歩行不足になると歪みが修復されず病的な状態になる
2)いす生活
骨盤は 立つと閉じる、座ると開く力 が働く
長時間のデスクワーク、足組みで歪みの負荷が骨盤に加わる
C.分類
関節腔内、関節腔外に病変を有するもので大別される
大多数が関節腔外の病変である(機能障害)
①〜⑧に大別(重要な3つを紹介)
①仙腸関節障害:関節の微小なズレ、炎症ではない
②炎症性:SNSAの7疾患は仙腸関節の炎症を合併しやすい
③OA性:OAと痛みの相関はないと報告
D.腰椎疾患と仙腸関節障害との合併
最も大切なことは…
腰椎疾患と仙腸関節障害の合併する割合は少なくないという意識を持つこと
E.頻度と年齢分布
腰痛に占める仙腸関節の痛みの頻度は3.5〜30%と開きがある
⒉臨床症状
A.疼痛域
・仙腸関節の神経支配は下位腰部神経根〜仙骨神経根までと広範囲なため、多彩な症状を出しうる可能性がある
・生理食塩水を仙腸関節後方靭帯領域に注入すると最初にPSIS周辺の臀部に疼痛が生じ、その後大腿や下腿に放散していく
・PSIS周辺の臀部痛は仙腸関節痛に特徴的な領域と考えられる
B.疼痛と痺れの領域
・保存療法を行なった 100例
①PSIS周辺の殿部痛
②大腿外側部痛
③内側ハムストリング、鼠蹊部痛
④下腿、内側ハムストリング、大腿外側の痺れ
・固定術を行った重症仙腸関節障害 20例
①PSIS周辺の殿部痛
②大腿外側部の痛みと痺れ、鼠蹊部痛
③坐骨結節、内側ハムストリングの痛み、下腿外側、測定内側の痺れ
C.関連痛の把握
・下肢の痺れの原因として、血行性、神経根性、糖尿病性の障害がある
・仙腸関節性の場合は…
痛みの場合:PSIS付近の殿部痛、鼠径部痛が主体
痺れの場合:デルマトームに一致しない例が多い
D.デルマトームに一致しない症状
・L5神経障害… 下腿外側〜第1趾への痺れ
・S1神経障害… 下腿後面〜第5趾への痺れ
・仙腸関節障害の場合は…
①下腿外側〜第5趾への痺れ
②下腿後面〜第1趾への痺れ
E.疼痛発現動作
①仰臥位 ー Newton変法様?
②座位 ー 仙腸関節障害に特徴的な訴え
③患側下の側臥位 ー 負荷がかかる?
F.座位による疼痛による鑑別
・座位により疼痛が生じる頻度と疼痛部位(筆者調べ)
①仙腸関節障害… 73%(PSIS付近と坐骨結節部)
②LDH… 49%(殿部中央と大腿以下の大腿神経痛や坐骨神経領域)
③LSCS… 20%(LDHと同様)
▶︎ 頻度も高く、部位も異なるため鑑別はしやすい
⒊理学所見
A.神経学的所見
・仙腸関節障害では、神経学的な欠落所見は認められない
・重症例では下肢デルマトームに一致しない知覚鈍麻を認める
B.圧痛点(感度/特異度)
・9箇所中、以下4点の特異度が高いため仙腸関節障害の可能性が高い
①PSIS(53%/85%)
②長後仙腸靭帯(60%/84%)
③仙結節靭帯(40%/86%)
④腸骨筋(71%/73%)
C.SLRテストとBowstringsサインの意義
・SLRでは仙腸関節〜大腿後面の痛みが誘発される
▶︎大腿二頭筋が手技により引っ張られ、腸骨が後方回旋し仙腸関節の痛みが誘発される(⇔ LDHでは神経の伸長が行われる)
・骨盤の動きは下肢挙上が約20〜70°まで腸骨の後方回旋と上方移動が生じる
・それ以上の角度は仙骨と腸骨が同方向に動くとされている
⒋検査所見
A.画像診断
・仙腸関節の痛みの診断に有用な所見は画像診断では検出できない
・XP、CT、MRIも根拠にはならない
っと、今日はここまでとしましょう。
次回は 第4章 仙腸関節の痛みと診断 についてまとめていこうと思います。
ではでは🙌