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股関節内転位拘縮のキホン(外転できない)#書く習慣18
先日当クリニックの院内勉強会にて
【トレンデレンブルグ歩行】について発表させていただきました。
その際に股関節内転位拘縮(外転制限)に対しての原因や治療について尋ねられましたので、その辺りを一部シェアしていきたいと思います。
こちらの文章は…
□ トレンデレンブルグ型への治療方法の介入の糸口を探っている
□ 関節包靭帯のおさらいがしたい
といったセラピストの方にお読みいただけますと役立てるのではと考えています。
内転筋は切らなくても内転拘縮は改善する
早速ですが、本家秀文先生の書かれた文献でこんな一文があるのをご存知でしょうか?
内転筋腱切離を行わなくても、内転拘縮が改善する理由としては
⑴内転筋群での筋成分が腱成分と比較して十分に長いこと、や
⑵術中に関節包を十分に切除していること、や
⑶可動時痛の消失、などが考えられる
性格が悪いので逆説的に捉えると(笑)
成分の違い、関節包の問題、痛みさえ除去すれば可動域は改善する、ということです。
で!
その中で唯一答えを提示されているのが関節包なのでそこを攻めるのが戦法としては理に適っているのではないかと思います。
というわけで関節包とそこにくっつく靭帯を紐解いていきたいと思います。
関節包靭帯
まずはじめに関節包靭帯について列挙していきます。
・股関節の線維性関節包は肩関節の関節包よりも強靭である
・関節包の前方を腸骨大腿靭帯、恥骨大腿靭帯が補強する
・関節包の後方を坐骨大腿靭帯が補強する
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⑴腸骨大腿靭帯
・Y靭帯ともよばれ、外側束(横部)と内側部(下行部)に分かれる
・内束部(下行部)は伸張性が低い
・内側束:大腿骨体部軸と平行に走行し股関節伸展で伸長
・外側束:大腿骨頸部軸と平行に走行し股関節外旋で伸長
⑵恥骨大腿靭帯
・腸骨大腿靭帯(内側束とともに)股関節外転、伸展で伸長
⑶坐骨大腿靭帯
・非常に伸びやすい
・その他の線維:内転時に伸長
・表在線維:内旋と伸展時に伸長
外転の制限因子と伸長肢位
・以上のことから外転の制限因子は関節包下部(特に恥骨大腿靭帯)である可能性が高い
・ではその恥骨大腿靭帯を伸長するために必要な肢位とは?
伸長位 → 外転>>伸展、外旋位
短縮位 → 内転>>屈曲、内旋位
・この伸長位(外転>>伸展、外旋位)⇄ 短縮位(内転>>屈曲、内旋位)を反復的に繰り返すことで関節包下部(恥骨大腿靭帯)の柔軟性を出していく
参考文献
□ 股関節の解剖と運動
□ THAにおける内転拘縮の改善について (本家秀文ら)
□ 股関節の痛みと機能障害
□ 股関節周囲靭帯の伸長肢位を検討する