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「肘内障の整復後に残る痛みの解釈」#書く習慣21

日々の診療お疲れ様です。TROT(トロット)です。

今日は午前診療中に当院に「着替え中に腕を引っ張ったら腕を動かさなくなったんですけど」と電話がありました。

肘内障かなあと思って到着を待って患者さんを見てみるとドンピシャ。
さーて、若手の先生に整復を振ろうかなあなんて見渡すとみんな忙しそう…


というわけで…

今日は久ーーーしぶりに肘内障の整復法をさせていただくことになりました!
肘内障の整復って初心に帰るような気持ちにさせてくれますよね。(僕だけ?w)


で、この子は回内法で普通に整復できたんですけど、たまに整復後に痛みが残ってなかなか手を動かさない子っているじゃないですか?

今日はそんな状態?痛み?に対する考察をまとめていきたいと思います。




肘内障とは?


・幼児を中心に遭遇する確率が最も高い外傷の一つ

・肘の脱臼と言われることが多いですが実際は脱臼ではなく、輪状靭帯に包まれている橈骨頭が、引っ張りとねじれの力が加わることにより輪状靭帯からずれることによって発症

・引っ張られての発症も多いですが、原因がはっきりしないこともしばしば

2〜6歳の幼児に多く見られ、7歳以上の小児では発症頻度が低くなる

・小児の橈骨頭の形状は成長過程のために、軟骨成分が多く、輪状靭帯も柔軟性に富んでいることで発生するとされている


肘内障には“Jサイン”!


・XP検査では肘内障自体に異常な所見はありません

・超音波エコー像にてJサインがある場合に肘内障が疑われる

Jサイン:左(健側)と比して右(患側)は腕頭関節内に回外筋が輪状靱帯ともに引き込まれている



Jサインとは

以前までの肘内障の病態は、橈骨頭の前方亜脱臼や腕橈関節内への輪状靭帯の嵌頓と考えられてきた。

しかし、関節エコーを使用すると、回外筋が輪状靭帯と共に腕橈関節内へ引き込まれて発症することが判明した。

輪状靭帯から起始する先細りの回外筋が、輪状靭帯とともに腕橈関節内に引き込まれた像を「Jサイン」という

輪状靭帯の消失、②滑膜ヒダの巨大化、③回外筋の腕橈関節内への引き込み(Jサイン)は、肘内障の特徴的所見である

肘内障の整復後も回外筋は高エコー像化するので、自然整復例も捉えられる



回外筋の高エコー像 = 回外筋が挟み込まれことによる損傷を意味する


・わずかに腫脹があったりすること、回外制限が認められること、整復直後に痛みを有して肘を動かさない子がいることも回外筋損傷による可能性があるためだと思われる


整復は回内法を選択すべし!


・肘関節を軽く屈曲して橈骨頭を押さえながら回内させる回内法と、肘関節を軽く屈曲して橈骨頭を押さえながら回外させる回外法とが存在する

・初回、2回目の整復ともに回内方の方が整復率は高いという報告がある

・100人中4人以下の少数だが、どちらの整復法もうまくいかないという文献もある


参考文献はこちら


□ 日本臨床整形外科学会


□有明こどもクリニック


□ Cochrane


□ 柔整ホットニュース


□ ひらかまちスポーツ整骨院 はり・きゅう院



今日はここまで!

回外筋の高輝度像、つまり同筋の損傷が、整復後の痛みを継続させているのだとTROT(トロット)は考えています。

まだまだわかっている様でわからないことはたくさんありますね!

運動器エコーをもっと活用して新たな発見もしていきたい所です。