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トランプ政権の自動車政策で、どうなる日本の自動車産業!? 2025年1月8日放送分

# トランプ政権、自動車産業
(ゲスト)加藤康子氏:元内閣官房参与

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【目次】

  • 00:00 1. オープニング

  • 00:56 2. 自動車部品が関税で高くなる

  • 02:12 3. EVに対する補助金と税額控除

  • 07:39 4. アメリカで売れている半分は日本車

  • 11:10 5. EVは中国だけで普及している

  • 13:55 6. 2025年は日本の自動車産業が大復活

(深田)
皆さんこんにちは。政経プラットフォーム、ITビジネスアナリストの深田萌絵です。今回は元内閣官房参与の加藤康子(こうこ)さんにお越しいただきました。

前回はトランプ新政権の顔ぶれ、入閣予定である反WOKEの方々をご紹介いただきました。ここからは私たちが本領の分野「トランプの自動車政策はどうなるのか」を伺っていきたいと思います。

(加藤)
これから実際どうなっていくかは、トランプ氏が就任してからの具体的な様子を見ないと分りませんが、予測する上でのポイントが3つあると思います。

関税の強化

1つ目は関税の強化ですね、どんどん保護主義になっていくでしょう。中国製EVに対しては既にバイデン政権時代から100%の関税が課されていましたが、今後はメキシコ・カナダなどNAFTA(北米自由貿易協定)諸国から輸入される自動車部品にも最大25%程度の関税がかかってくると予想されますので、米国内で組み立てられる車両であっても、部品コストは間違いなく高くなるでしょう。また現時点でははっきりしていませんが、日本からの輸出車両についても5~10%程度の関税がかけられる可能性があり、その場合はやはり販売価格が上がるでしょう。

EV補助金の廃止

2つ目は、トランプ氏が選挙演説会場で毎回のように公言していた「EVに関する補助金=購入補助や税控除を廃止する」政策です。現在既にその交渉が進められています。

(深田)
EVに対する補助金は、いわば中国にプレゼントする助成金みたいなものでしたよね。

(加藤)
まあそうですね。そこで皆が不思議に思うのは、EVであれだけ一世を風靡したイーロン・マスクのテスラ、いま北米のEVマーケットシェア5.6%の7割弱を占めるテスラにも(補助金廃止の)影響が及ぶのではないか、との疑問です。しかしアメリカのEV市場はそもそもカリフォルニア周辺の西海岸、そして東海岸がほとんどで、真ん中の内陸部ではあまり売れていません。

(深田)
それは当然でしょうね、両海岸側は市街地がコンパクトで充電ステーションもたくさん設置されていますが、(施設も少なく長時間走行が必要な)内陸部はガソリン車でなければ縦断できないですものね。

(加藤)
ただ東海岸と言ってもニューヨークは別ですよ、路上駐車が多いですからEV普及はまず無理でしょうね。

補助金廃止の話に戻しますが、大統領選キャンペーン中に現職副大統領ハリス候補が盛んに言っていた「現行7500ドルの税控除に、4000ドルの購入補助を上乗せする」というプランも、トランプ氏は全くの無駄と切り捨てていました。これに反発したカリフォルニア州ニューサム知事が先日「州は独自に購入補助と税控除をしていく」と表明しましたが、テスラは喜んでいません。何故かと言うと、ニューサム知事は「テスラを除く」と言っていたからです。

(深田)
わざわざテスラ名指しで排除ですか、憎たらしい政策ですね。

(加藤)
テスラは充分普及したから補助しない、という建前ですね。E・マスクにしてみれば自分の競合相手を増やすだけの政策ですから、断乎反対しています。

(深田)
そもそもの話、アメリカのEV補助金はテスラが除外されるような仕組みがありましたよね。たしかバイデン政権がEV補助金を増額した時「増額部分は労働組合のある自動車メーカーのEVにだけ」と決めてしまい、実質上組合のないテスラは補助金の恩恵を受けられないでいました。

(加藤)
確かにテスラは除外されていました。でも実は、他のメーカーにとっても補助金は恩恵ばかりではなかったのです。アメリカの自動車ディーラーは日本と異なり、リスクを負って在庫を「買い取り」しなければなりません。しかしEVは売れず在庫ばかりが積み上がってしまい、2023年11月には「これ以上EVを応援しないで欲しい」とわざわざバイデン政権に申し入れていたくらいで、実際に補助金支給額も一時的に抑えられていたのです。しかしニューサム知事は、トランプ氏への警戒心や対抗心からでしょうか、この補助金制度をもう一度満額復活すると言い出したわけです。

州独自の政策への対応

そこで予想されるのは、今後トランプ新大統領が「各州独自の政策を止めさせ、連邦で一括にしたい」と言う構想を打ち出して、反トランプの各州とバトルになる可能性です。これが3つ目のポイントですね。

(そう予想する背景として)もともとカリフォルニア州に追随する州は11ほどありましたが、その11州でさえ必ずしもEV推進に乗り気だったわけではないのです。例えば民主党の牙城であるコネティカット州でさえ、バイデンの片腕とも言われたネッド・ラモント州知事が提案した「EVシフト州法案(内燃機関使用の自動車規制州法案)」は州議会の猛反発にあい、結局2023年11月末に取り下げになりました。

【編注・関連記事:米国のEV普及にブレーキ】

https://www.fnn.jp/articles/-/624774

EVの売り上げが伸び悩む現況ではこのように、カリフォルニア州に追随する11州といえども決して横並びとは言えず、今後も脱炭素政策を推していくかどうかは疑問なのです。

(深田)
日本でも日産がEV推進に特化して何千億円も投資してきた結果、利益が9割減で9000人のレイオフという事態になってしまいました。ガソリンエンジンとのハイブリッドに注力しなかったばかりに、日本有数の大企業ですらいまや1年分くらいしか資金繰りがもたない、潰れるのではないかと言われていますね。

(加藤)
まあ日産は潰れないと思いますし、復活するとも思っています。ただもう一つ、前回お話ししたトランプ政権の顔ぶれを見ていて「やってしまうのではないか」と思えてくるのが「燃費規制(の見直し)」です。

(深田)
燃費規制、ですか。

(加藤)
はい。この燃費規制が緩和されれば、規制に引っかかって売れば売るほど罰金を払わされてきたガソリン車等は重圧からかなり解放されます。これは日本車、内燃機関産業にとっては最高の展開です。

(深田)
強い日本の復活が見えてくるというわけですね。

(加藤)
自動車産業がこの先どうなるか、楽しみに待ちましょう。ここで一つ、北米に興味がありそうな深田さんに面白いデータをご紹介しましょう。北米の2024年第1~第3四半期の集計において、最も売れた20車種のうち日本車はどれくらいの割合だったと思いますか?

(深田)
どれくらいでしょうね、2~3割程度いっているのではないでしょうか。

(加藤)
なんと、半分です!

(深田)
半分もいっているのですか!

(加藤)
そう、半分です。

(深田)
それはガソリン車とハイブリッド車ですか。

(加藤)
そうです、ガソリン車とハイブリッド車両方ですけれど、要するにエンジン車ですよね。EVやプラグインハイブリッド車はほとんど含まれていません。

(深田)
(日産の)ローグが売れているのですね。

(加藤)
まず3位がトヨタで、RAV4ですね。5位がホンダのCR-V、8位がトヨタのカムリ、9位に日産のローグ、売れているのですよ。そして10位がホンダのシビックです。

(深田)
ホンダ、堅いですね。

(加藤)
11位がトヨタのカローラ。

(深田)
カローラ、私も好きですね。

(加藤)
その他スバルが3車種食い込んでいます、クロストレック、フォレスター、アウトバック。

(深田)
スバルも、地味に強いですね。

(加藤)
あとはトヨタのピックアップトラック、タコマも20位以内につけています。全体的に見てトヨタとスバルが人気ですね。

(深田)
スバルの人気の秘密はなんでしょう。

(加藤)
やはりスバルは、冬の雪道に一番強いですから。

(深田)
スバル、そんなに強いのですか?

(加藤)
強いですよ、馬力もあるしね。私もスバルファンでずっと乗っています。とにかくこの結果でも分かる通りハイブリッド車に人気が集中していますけれど、その中身は「基本的にエンジン車が人気」だという事です。

(深田)
結局、EVでアメリカのように大きな大陸は渡れませんものね。

(加藤)
その通りです。ここでいま一度、国際的な自動車市場を俯瞰しておきますと、現在日本メーカーが強い市場は日本国内をはじめ、圧倒的にASEAN諸国と北米、そして以前は中国も主要市場でした。中国市場はいまEV化政策のもと、中国産メーカーがどんどん強くなってきているのは明らかで、基本的にはドイツ車も日本車も、外国勢はみな苦戦しています。日産の場合はEVにおいても、中国の国内メーカーに負けているわけです。

一方北米はどういうマーケットかと言うと、圧倒的にエンジン車が強いわけです。今後はガソリン代もますます安くなる見通しなので、既に動き出しているGMやフォードを筆頭に、内燃エンジン車復権に向っての投資は益々加速していくでしょう。

(深田)
素晴らしいですね。私はそもそもEVの存在意義が分かりませんでした。エネルギー資源をわざわざ燃やして発電し、それを送電したら(自然)減衰し、バッテリーに充電したら(自然)放電するし、電力からエンジン動力にエネルギー転換する時もまたロスが出る。各ステップでのエネルギーロスが多すぎて、余りにも非効率です。どうせ燃焼エネルギーを使うのなら、直接エンジンを駆動した方がはるかに効率的だと思っていました。

(加藤)
そうですね、トランプ氏も演説で色々なエピソードをあげていましたが、その中でトラックを例にとり、運送会社を経営している友人の話として「ロサンゼルスからニューヨークまで、ディーゼル車なら途中でほとんど給油しなくていいけれど、EVトラックでは大変だ。何度も何度も充電が必要で、その都度ものすごい時間のロスがある。しかも橋やインフラも全部作り直さなければいけない」と盛んに主張していました。実際、ヨーロッパにおいても大型EVトラックの普及率はものすごく少ないわけです。

(深田)
それは無理ですよね。

(加藤)
先ほどお話ししたようにASEANやアジア、それから北米や中国などの市場でEVが普及しているのは中国だけです。ASEANもアジアも99%が内燃機関です。

(深田)
北欧のほうでは一部EVが伸びているようですが。

(加藤)
北欧はね、非常にニッチな、特殊で小さいマーケットなのです。日本車が売れている主要マーケットでは圧倒的に内燃機関で、もともとそういう需要があるわけです。だから私は2025年も内燃エンジン車復活の時代だと思っています。いま日本国内では2%弱くらいがEVで、日産の「サクラ」がそのほとんどを占めていました。それが2024年後半では、月変動は多少あるものの(売上が)従来の6割ほどにダウンしています。それは何故か。ガソリンスタンドがまばらな地方などでEVは確かに便利なのでしょうが、やはり一番の不安材料が「充電」だからです。

(深田)
バッテリーが劣化しやすいこと、交換時の莫大な費用もデメリットですね。

(加藤)
それから、EVは中古市場で値が付かないという事情もありますね。

(深田)
そうですよ、暴落していますものね。

(加藤)
EVを4~5年乗って中古に出そうと思っても値が付かないなど、色々と複合的な理由から(EVの売れ行きには)全体的にブレーキがかかっていると思います。

(深田)
車を転売する場合も含めて考えたら、EVという選択はちょっと厳しいですよね。

(加藤)
やはり車というのは、家と同様ひとつの資産なのです。その「資産価値」はエンジン車のほうが間違いなく高いです。

(深田)
アメリカでは25年落ちの軽自動車がものすごく売れていると、池田直渡先生から先日教わりました。

(加藤)
そういえば日産だって、スカイラインとかフェアレディZなどは中古車市場でものすごく高価格で売れるのですよ。

(深田)
あの名車、復活したらいいのにと思いますね。あとイギリスでも最近は日本の軽自動車が人気だそうで、このあたりも日本の自動車産業、2025年は復活するぞという予兆を感じます。

(加藤)
私も、2025年は日本の自動車産業にとってもの凄くプラスの年になると思いますよ。

(深田)
はい、私もそのように願っています。という事で、今回は加藤康子先生から「トランプ政権における自動車政策、そして日本の自動車産業は復活するかも知れない」というテーマでお話しいただきました。どうもありがとうございました。


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