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中国EV車に日本が敗北 どうなる日本車の未来 !? モータージャーナリスト池田直渡が語る 2024年12月17日放送分

# 中国EV車
(ゲスト)池田直渡氏:モータージャーナリスト

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【目次】

  • 00:00 1. オープニング

  • 00:40 2. 中国はアニマルスピリットの国

  • 03:38 3. ルールはあるが監視が恣意的

  • 05:17 4. 売る必要がないほどの補助金

  • 07:37 5. 中国のEVがドイツに流れ込んだ

  • 09:56 6, 日本だけが中国EVに補助金

  • 12:40 7. ものに対する愛がない

(深田)
皆さん、こんにちは。政経プラットフォーム、ITビジネスアナリストの深田萌絵です。今回はモータージャーナリストの池田直渡先生にお越しいただきました。先生、よろしくお願いします。

(池田)
よろしくお願いします。

(深田)
ここ最近は中国の輸出車台数が年々100万単位で伸びてきていて、日本にも中国のEV車が入ってきているのですが、今後どうなっていくのか、食われてしまうのかというところなどをご解説いただきたいと思います。

(池田)
日本の話から行きますか。中国サイドの話から行きますか。

(深田)
中国サイドの話からお願いします。

(池田)
中国というのはとてもアニマルスピリットの強い国です。

(深田)
アニマルスピリットとは。

(池田)
アニマルスピリットというのは、例えば日本人は株を買おうと思えば、いや ちょっと失敗するかもしれないから貯金で銀行に積んでおこうというように、とにかく リスクを取らない。

(深田)
そうですね。

(池田)
でも、中国人というのはとにかく借金してでも投資する。

(深田)
彼らは大好きですね、 デリバティブのようなリスクが高い方が面白いというか。

(池田)そういうある種夢を見る力、と言うと聞こえがいいけれども、やばい橋を渡るのがアニマルスピリットというのです。

(深田)
知りませんでした。

(池田)
日本人はアニマルスピリットは足りないけれども、中国人はアニマルスピリットが旺盛すぎる。とにかく借金をして借金の利率より高いリターンが来なければ儲からないのにどんどんかけてしまう。そんな高い勝負をしていたら、普通に考えていずれ焼け死にます。今まで歴代見ていくと例えば鉄。鉄が儲かるとなると全然鉄と関係ない業種の人が鉄に参入してくる。それでどうなるかと言うと、当然高品位の鉄など作れないから安い鉄がいろんなメーカーからやたら粗製乱造されるわけです。それで、作りすぎる。みんなで儲かると思ってみんなが投資したらその先値崩れするという想像力は残念ながらアニマルスピリットが邪魔して、想像がつかない。だからみんなでやってしまう。

(深田)
分かります。中国の上場企業の有価証券報告書を見ているともう全然違う業種から違うところに転々と変わっていって、その自信の根源は何ですかと言ったら、中国共産党との人脈がありますと書いているだけでした。

(池田)
そういうことからアパレルとか食品とかから鉄に行くぐらい飛躍するわけです。

(深田)
本当にその通りです。

(池田)
それは日本人からすると、気は確かかという話なのですが、でもそれが今ここまでは中国の成長を支えてきたのも事実です。討ち死にを顧みずにみんなが多産多死型のチャレンジをするわけですから、それは全体としてはバルクする。

(深田)確かにそうです。でも、ああいう部分はちょっとは学ばなないといけないなと思うのですが。

(池田)
でも彼らは学習しない。鉄の後は太陽光パネルです。やはり一つ西側諸国として大変迷惑なのは、鉄の極端なディスカウントを世界で始めた結果、世界中の製鉄企業が非常に苦しんでいる。

(深田)
そうですよね。だから廃業して、再生に結構かかったところもあります。

(池田)
廃炉してしまったところも多い。それで、しかも前回の放送で言ったように、コンプライアンスギャップがあるから、ではそれで石炭をガンガン燃やして高炉作っても罰則はないわけです。日本でやったら大変なことになる。株主総会とかでめちゃめちゃくちゃやられる。だけど向こうは共産党がOKだったらOKです。

(深田)
有価証券報告書の一ページ目に書くぐらいですから。

(池田)
結局そういう中で彼らはルールを破っても罰則はありません。 彼らも同じルールを持っているはずです。中国のいろんな法律を見ると、すごくルールとしてはちゃんとしているなと思うけれども、結局ルールを守っているいかどうか監視する側が恣意的に手を緩めているのでどうとでもなってしまう。

そういう中で鉄を粗製乱造して、結局西側の先行企業に迷惑をかける。太陽光パネルに至っては日本の企業は全部潰れてしまいました。

(深田)
そうですよ。そもそも日本の技術だったのに。

(池田)
不動産に関しては残念ながら輸出ができない。オーバーに開発してもどうしようもなくて、今中国市場ではゴーストタウンがいっぱいできている。

その次に今EVに来ているわけです。EVもさっき言ったアパレルとか飲食の人とかまでが、バーっとみんなEVを作って儲かる。ひどいのに至ってはEVの補助金です。これは中国共産党が2015年に「中国製造2025」というプランを立てて、この中で10項目で世界のトップを取ると決めている中に「新エネルギー車」という のが入っている。中国ではネブ(NEV)と言うのですが、このNEVでもトップを取るためにEVをどんどん作るようにという話をして、そこに補助金をいっぱいつけます。そうすると、本当に最低限動かなくはないぐらいのEVを作る会社が現れてしまう。補助金であるはずなのに作ったら補助金の方が原価を上回っているので作るだけで売る必要がない。

(深田)
それがEVの墓なのですか。

(池田)
一番最初のEVの墓はそれです。

(深田)
そういうことですか。

(池田)
だから最初から売る気すらないくらい手抜きした製品が「EVでございます」と言って—

(深田)
売る気がないし、売れない。

(池田)
売れない。商品ではない。補助金のための道具です。

(深田)
盗んでもいいよと言ってもNo,thank you ですね。

(池田)
そうです。そういうものからスタートしているのです。当然あっという間にそういう抜け道は塞がれたのですが、結局いろんな会社がEVは儲かるらしいということでどんどんどんどん参入して、想像通り作りすぎた。それで今困っているから世界中に売ろうとしたのですが、アメリカはいち早くインフレ抑制法で100%でシャットダウンした。ヨーロッパも34.6%だったか、ちょっと数字うろ覚えですが、フォン・デア・ライエンが突然EVの規制を始めるという、すごいギャグだなと思いますね、あれだけEV、EVと言っていたのに。

(深田)
そうそう。EVを推進してきた欧州が急に—

(池田)
そう、欧州委員会が。

(深田)
中国に儲けさせてやらない、「デフレを輸出するな」と言いました。

(池田)
そういうことです。私は最初から予測していたのですが、ヨーロッパというのは、EVだけではなくて車に関するあらゆる規制を中国に合わせさせたのです。教えてあげるという名目のもとに。そうすると特にドイツがドイツ車を中国に輸出しやすくなる。基準が同じであれば輸出しやすい。日本の場合には中国ローカルの基準に合わせないと輸出できないけれども、ヨーロッパならそのままの基準で出せるというわけです。実際には現地生産しか認めない中国政府の方針があると言いながら、ドイツ車だけ結構入れたりする。よくわからない。法律の本音と建前が違うのです。共産党のよくあるパターンです。ただ現地で作るにしてもドイツと全く同じ仕様なものを作ればいいのであれば楽です。投資もいらない、開発もいらない、価格競争力も出るということでそういう風にルールを作った。しかし、当然こっちから向こうへの高速道路は向こうからこっちへの高速道路でもあるわけで、大量に中国の安いEVがドイツに流れ込む。労働コストを考えれば当然ヨーロッパが勝てるはずもありませんが、労働コストの裏側の話に入ると、色々大変なので今は言いません。

(深田)
奴隷労働系ですか。

(池田)
それは少数民族に対する—

(深田)
やっぱりまたあの人たちが犠牲になっているわけですね。

(池田)
調べると分かると思いますが、やはり少数民族地域に工場を作っているドイツの会社とかがあるわけです。そこはとりあえず今日はやめておきますが、そんなことが起きていてヨーロッパもこれはまずいと言って現実的に関税を立てました。そういう補助金の不正の率に応じてランキングして、ここは高くここが低くといったことは一応やっている。日本だけはなぜかまだ中国車に補助金まで出るらしい。

(深田)
そうなのです。それを心配しています。今後うかうかしていると中国自動車メーカーが日本の補助金目当てにどんどん車を輸出してこないかなとか。

(池田)
ところがですね。日本というのは輸入車の墓場と言われていまして、車が売れない。

(深田)
外車は売れない。

(池田)
というのは、輸入車のシェアは、バブルの最大ピークの時でかろうじて10%を超えたぐらいで、今は6、7%です。

(深田)
それだけしかないのですか。

(池田)
それだけしかない。都内にいると輸入車がいっぱい売れて走っているように見えますが、 大体全国で見れば売れている車の4割は軽自動車です。

(深田)
そうですね。奈良出身ですが、ほぼ皆さん家の前に軽自動車が2台とかあって一台はお父さんとかお母さんが使い、もう一台は子供たちが使う。

(池田)
だから、そういう中で輸入車はそもそも10%です。どんなに跳ねても10%です。今6、7%で、その中のほとんどがドイツの高級車なわけです。

(深田)
だから、やっぱり外国の車を買うのであれば、嗜好品でちょっとステータスを表すようなものであって、安いから買うというわけではない。

(池田)
それがうまくいくのであれば、かつてインドのタタという会社が28万円の「ナノ」という車を出して、だんだん値段が上がっていきましたが大失敗しました。結局「安かろう悪かろう」は瞬間的には騒ぎますがなかなかうまくいかない。それは例えば中国も最初ホンガンMiniという車がすごく売れたと言って騒ぎになりました。日本の軽自動車よりちょっと大きいサイズですごく安かった。40〜45万円ぐらいでしたか、それが要するに価格破壊であると言ってすごい騒ぎになったのですが、結局売れたのは2年ぐらいでした。

(深田)
2年しか売れなかった。

(池田)
世界中でです。結局日本に限らず世界中でそのようなものなのです。だからとにかく、価格で勝負しようという車の寿命は意外に短い。

(深田)
結局何十万というか、100万、200万、300万して当然のもので投資して、 何年も使うという前提だからそれだけのお金を投入するわけですよね。

(池田)
それとそこには居心地みたいなものもある。車の中にいて快適であるとか、あるいは人を乗せる時に恥ずかしくないとか、そういういろんな要素が人間心理の非常に複雑な面があるわけです。例えばそれがすごくマニアックなもので、いや「人から評価されないけど俺大好き」って言うのであれば、それはそれでありですね。例えば ジープみたいなものに乗るとか。

(深田)
ありますよね、そんな変な車どうして乗るのというような。私はいつもロータスに乗ってる人を見ると、そんな車に日本で乗って、都内で乗って面白いですか、と思います。

(池田)
私ロータス好きです。

(深田)
でも、やっぱり車が好きな通の人はあれ好きなんです。 通の人は車のシートが固くて座ったらお尻が痛くて、その上タイヤもめちゃくちゃ硬くて地面がお尻に響いてくるような、ああいうのが好きだという方もいらっしゃいます。

(池田)
それは色々で、嗜好はそれぞれ違いますが、そういう人もいます。

(深田)
そういう評価されるポイントが中国のEV車にはないのですか。

(池田)
彼らには伝統がないですから。昨日までアパレル作っていた人が作っているEVだけだから、伝統も何もありません。

(深田)
そもそも物づくりに愛がない。好きだから一生懸命やっているという、日本人とかヨーロッパ、アメリカの人達は、物を作る時にそこに愛を注ぎますよね。池田中国にそれが全然ないのかと言うと、例えば昔の硯とか筆とか、ああいう世界にはとんでもない世界がある。お茶もそうです。だから、ないわけではない。ただ、今世界のビジネスに打って出るような人たちはアニマルスピリットだけでほぼ100%できているので、そこに物に対する愛とかは全然ない。それだとやっぱり伝統は作っていけない。あるトヨタの幹部が言っています。もし世の中のお客さんが価格が全てだと、車としていいものだとか、味わいだとか信頼性だとか、そういうものは一切評価しないとなったら「我々に勝ち目はない」と。それはもう新興国の方が強いと。

(深田)
私、新刊で中国製のEV車は爆発しまくっているとか、私は命が惜しいのでEV車はちょっとお断りということを書いています。

(池田)
じゃあ、その先に何を乗せていくかということで、今トヨタなどが新しく始めているのは自動車文化の輸出です。海外でモータースポーツイベントを今一生懸命やっている。先月は韓国でやっていました。それからその前の年末はタイでやっていました。

(深田)
どんなモータースポーツイベントですか。

(池田)
例えば一つは耐久レースをタイでもやりました。それからトヨタGRというモータースポーツを基準に開発されたような車があって、そういう車でトヨタ会長が、ドライバーの時は「モリゾウ」と言うのですが、モリゾウとして手を振りながらお客さんの前でドリフトやって回ったりする、。

(深田)
すごいですね。

(池田)
この間も、ヒョンデの会長を助手席に乗せてぐるぐるやっていました。

(深田)
すごいですね。やっぱり運転に自信があるんですね。

(池田)
だから、ああいうことの楽しさを知ってもらうことが長期的にはブランドになるということなのです。というのはつまりモータースポーツみたいなものというのは、今中国などは絶対にやらない。利益がわからない。やったら儲かるという話ではないからです。ブランドを育てるための長期的な種まき、そういうことには彼らは興味がない。それいくら儲かるのかという話だから、儲からないものはやらない。しかし、やらないところにこそ勝ち点があるというのが今トヨタがやっていることなのです。

(深田)
文化を育てるということですね。昔、大阪ガスがオーブンを売っている時にうちの母がオーブンを買ったのですが、何を作っていいかわからないわけです。そうするとお料理教室でオーブンを使ってすごく美味しいパイとかを作る。毎週土曜日とか日曜日になると、今週はお母さんがアップルパイとかアプリコットパイを作ってくれるぞ、という楽しみを持つと、それが文化として根付いて、毎週家庭の中でオーブンを使ってお菓子を作るという可愛い文化が定着していくというあのやり方に似ていますね。

(池田)
そうですね。会長と一回話したのですが、我々が若い頃というのはヨーロッパのレース文化に散々憧れて、ああいう風に日本がなっていったらいいなと思ったじゃないですかと、それが日本のモダニゼーションの発展に明らかに貢献していた、そういう風にアジアから見られるブランドになるべきです。そう言うと、「池田さんその通りだよ」とおっしゃいました。

(深田)
本当にそう思います。私は奈良に住んでいましたが、毎週金曜日と土曜日は生駒山を攻めている人たちがいるのです。

(池田)
分かります。

(深田)
多分奈良は暴走族が一番多いという風に聞いたことがあります。やはり走るのは楽しいのですね、信貴山スカイラインとかあんな田舎を走って楽しいんだと思うのですけど。

(池田)
楽しいですよ。

(深田)
楽しいのですね。車のジャーナリストになられた背景には車が大好きすぎたというのがあるのでしょうか。

(池田)
そうですね。ただ、私の場合ちょっとだけずれていて、いわゆる自動車評論家からは同業者だと思われていないのです。どちらかというと決算だとか経済だとか、要は車が出てきた背景としては、世界的な、例えば規制であるとか、環境規制があるからこういう車が出てくるとか、その中で世界的なマーケットのどこを取りに行きたいからこういう車になっているとか、そういうことを記事にする。

(深田)
経営戦略、経済的背景そして世界的な規制という政治的な背景まで話す方があまりいないからですね。私もそれは思いました。だからこそ来ていただきたいと思っていました。

(池田)
だからみんなに同業者だと思われていない。あの人はなんかちょっと違うジャンルだと。

(深田)
いや確か、普通のモータージャーナリストはヨイショ記事しか書かない。

(池田)
いやいや、それ簡単に私はここでそうですねとは言えないです。

(深田)
そうですよね。すいません。そのような気がしまして、私の妄想かもしれないのですが。はい、でもやっぱり投資家目線でもちゃんと車のことが見えている、そして政策的にどういう風に日本がやるべきなのかというところまで提言できるということを含めて、池田さんはすごい方だなと思って、今回ご登壇いただきました。ということで、中国の自動車輸出台数が今世界でトップにはなったけれども、日本市場は—

(池田)
多分全然不発。アメリカとヨーロッパはそれぞれもう防衛を始めているので、ポイントは日本にとって都合が一番悪いとすればASEANを攻略されることです。

(深田)
確かにホンダがそれでやられていますから。

(池田)
ASEANは日本がずっと水だの電気だのを整備するところから産業の基礎を育ててきた場所なので、ここのエリアで中国に取られるのは非常に厳しい。

(深田)
ホンダがASEANで二輪は大丈夫ですが、四輪がかなりやられていますから、確かにその通りだと思います。

(池田)
だからそこをどうやって戦うか。さっき言ったように、トヨタは一生懸命アジア地域でモータースポーツイベントをやっているわけです。

(深田)
憧れの車になるということですね。今回はモーター ジャーナリストの池田先生に世界で一番になった自動車輸出国中国、日本に対しての攻勢は利くのかというところについてお話をいただきました。安心しました。ありがとうございました。

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