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米がパリ協定脱退! 日本は脱炭素辞めてトランプから石油を買おう! 2025年1月31日放送分

# アメリカのエネルギー政策、脱脱炭素
(ゲスト)杉山大志氏:キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

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【目次】
1. オープニング
2. トランプはエネルギーで優位に立つ
3. 二度とパリ協定に戻らない
4. グリーンニューディール政策をやめる
5. 環境に優しいESG投資をつぶす
6. 愚かなグリーンニューディール
7. 太陽光パネルは税関で止める
8. 温暖化で後進国に毎年48兆円払う
9. 脱脱炭素でアメリカから石油ガスを買う

(深田)
皆さん、こんにちは。政経プラットフォーム、ITビジネスアナリストの深田萌絵です。今回はキヤノングローバル戦略研究所研究主幹の杉山大志先生にお越しいただきました。先生、よろしくお願いします。
ついにトランプ 政権が発足ということで今後エネルギー 政策、特にアメリカのエネルギー政策はどうなっていくのか、そして日本はそれに追随するのかというところを教えていただきたいと思います。

(杉山)
トランプ政権になりましたが、トランプ氏は何をするかわからないという人がいます。実はエネルギーに関しては大変はっきりしていて、完璧に予測可能です。何しろ公約にもずっと書いてありましたし、選挙期間中もずっと言ってきたし、今やろうとしていることも完璧に一貫性があります。それからトランプ大統領だけではなくて議会も上下共和党がそうです。共和党はみんな同じことを言っています。一番有名なキャッチフレーズは「ドリル、ベイビー、ドリル」です。

ドリルというのは石油掘削のドリルのイメージで、「掘って掘って掘りまくれ」とか翻訳しています。「ドリル、ベイビー」とは言葉が大変分かりやすい。それをもう少し高尚な言い方にすると「エネルギードミナンス」になります。この「エネルギードミナンス」はずっと共和党の人たちは一貫して言っており、トランプ氏も言っている。ドミナンスとは支配するとか優勢に立つという意味で、最近よくウクライナの戦争のとかの話では制空権を取ることをエアドミナンスとか、そのような言い方をしていますが、「エネルギードミナンス」ですからとにかくエネルギーで敵に対して優勢に立つという大変アメリカらしい発想です。

具体的に何をするかと言えば、さきほどの「ドリル、ベビー、ドリル」です。アメリカは世界一の石油・ガス生産国で、石炭の埋蔵量も世界一です。それらをとにかく掘りまくり、自分の国の経済、産業のためにも使えば、同盟国や友好国にも供給して敵に負けない強い経済、産業、軍事力を持つことができるということです。敵というのはここではロシア、中国、イランそして北朝鮮ぐらいを念頭においていますが、そういうのが根本の発想です。

(深田)
それは燃やして燃やして燃やしまくるということですか。それをやってしまうとパリ協定が危ないのではないでしょうか。

(杉山)
パリ協定は就任初日に離脱すると言われています。今日の収録はその前になりますが、就任初日に離脱するのは確実だと誰もが思っています。パリ協定というのはパリ気候協定といって2015年に国連で合意したのですが、基本は2050年までにCO2をゼロにしましょうということを言っています。
ところがそんなものはいらない、もう離脱するということです。そして今度はトランプ大統領は、離脱するだけではなくて、二度とアメリカが戻れないようにすると誰もが思っています。

(深田)
二度と戻れないような仕組みが作れるのですか。

(杉山)
はい。第一次トランプ政権の時も就任してすぐに離脱しましたが、4年後に次のバイデン政権が誕生すると再びパリ協定に戻ってしまった。だからそういうことがないように、二度と戻れないようにする。それは手続き的には面倒くさい。パリ協定の親の条約というのは気候変動枠組条約ですが、そこからも離脱するとアメリカがもう一度それに復帰するためには議会で上院の三分の二が合意しないと戻れない。そうしますと、今上院の三分の二どころか過半数が共和党ですから、民主党が三分の二を取る見込みはまずありません。ですから、もう二度とアメリカはパリ協定に戻ってこなくなります。
そして、今のはパリ協定の話ですが、国内では何をするのかと言うと、グリーン・ニューディールを全部やめる。これも民主党政権が大好きなものでした。グリーン利権と言ってしまうとそのままですが、とにかく脱炭素を一生懸命やります、アメリカも2050年までにC02ゼロにしますと、言うだけただですから言っていただけです。それに関して電気自動車の補助金だとか、あるいは燃費規制といったものも実質上は電気自動車の導入規制のようになっていたり、そういったグリーンな政策、火力発電所もなくすだとか、そういうのはことごとくひっくり返すのだと、これははっきりしています。

(深田)
本当に羨ましいです。私もEVとか馬鹿らしいと思っています。

(杉山)
イーロン・マスク氏が政権に入っていますが、彼はテスラをどうするのだろうかという話があります。まだあまり見えないところもありますが、ただ補助金ジャブジャブでEVを入れるというのが変だというのはマスク氏も納得しているようです。自力で勝負しましょうということで、お金を出してテスラを買いたい人は買えばいいのではないかということです。

(深田)
テスラはそもそも富裕層しか買っていません。

(杉山)
あのようなものに補助金がつくのかというのもあります。

(深田)
金持ち優遇政策です。

(杉山)
試算によるとテスラ一台あたり750万円の補助が実質的についているだろうと言われています。普通の車より高いではないかと。いろいろな補助金があって全部足すとそのぐらい実は受け取っていたということです。

(深田)
確かに補助金がなければテスラはそれほど儲からないそうです。

(杉山)
結構な割合の補助だと思います。しかし、それでもどうせお金持ちは買うでしょう。アメリカのカリフォルニアの電気自動車のように。

(深田)
シリコンバレーに行くと本当にみんなテスラです。

(杉山)
ところがアラスカに行くと全く走っていませんでした。

(深田)
向こうは無理でしょう。

(杉山)
みんなピックアップトラックでした。それはともかく、あと大きいのがESG投資というものです。Eが環境(ENVIRONMENT)、Sが社会(SOCIETY)、Gがガバナンス(GOVERNANCE)です。日本ではSDGsという言葉の方が流行っていますが、それは日本だけで海外に行くと大体ESG投資です。これが共和党の人たちはみんな大嫌いで叩き潰しにかかっています。これはトランプ氏というよりはもう共和党全体です。

(深田)
ESG投資というのは結構企業の中の多様性のようなものも推進されています。

(杉山)
DEIとかいうものですね。多様性(DIVERSITY)、公正性(EQUITY)、社会的包摂(INCLUSION)。

(深田)
そうです。だからいろんな種類の人を入れなければいけない。

(杉山)
共和党の人たちがESGの何に怒っているのかと言うと、Eについて環境に優しいというのは一体誰が決めるのかということです。この場合、金融機関が環境活動家と一緒になって、これが環境に良いとか悪いとかを決める。石炭を掘ってはいけないとか、石油を売ってはいけないとかそういう基準を決めて、それに応じて企業にお金を融資するかどうか、投資するかどうか決めるのですが、それは待てというわけです。
州であれば州の年金とかがあるわけで、そのお金を運用する機関がそうやって勝手に基準を作る。州によっては化石燃料の石油産業とかの州もたくさんあるわけです。でもそこには投資しないとか言われると、ふざけるなということになります。もうそのような金融機関は出入り禁止にするという風になるわけです。フロリダの州知事が一番、あとテキサスの州知事とかがそうです。
すでにもう大手銀行がこれまで国際的な銀行グループ、ネットゼロ・アライアンス(ネットゼロ・バンキング・アライアンス(NZBA))をバタバタと脱退しています。これまで投融資先はネットゼロにする、C02ゼロにすると言っていたのですが。

(深田)
ゴールドマン・サックスが一抜けたと言った。

(杉山)
ゴールドマンが抜けて、シティグループとかも抜けました。さっきニュースを見たら大手6つのうちモルガンだけは残っていました。

(深田)
モルガン・スタンレーかJPモルガン・チェースかどっちかが抜けたような気がします。

(杉山)
いずれにせよ、これを放映するまでには壊滅しているでしょう。ところが、今でも日本の新聞を広げると、これからはESG投資だなどと言っています。

(深田)
日経・東洋経済の2025年の予測は、炭素を出さないものに投資しましょう、グリーン投資が今年は来ます、EVで乗り遅れています、というようなことがまだ書かれています。そのトレンドはもう終わったのに。その予測絶対外れるでしょう。

(杉山)
しかしこの変わり身の速さが何とも言えません。日本のメーカーとかは、これからは脱炭素しないと融資が受けられないらしいとか言っている。いや日本の銀行もまだ多分この時点では世界的なネットゼロ・アライアンスとか多分入ってはいるのですが、どうするのしょうか。みんな抜けるのでしょうか。抜けて、この間までメーカーに説教していたのに、これからESGでないと投資できませんとか言って、みんなコロコロ変わる、くるっと変わるのでしょうか。

(深田)
金融機関の言うことは信用しない方がいいです。私は勤めていましたからよく分かります。

(杉山)
これはメーカーのセンスからすると、脱炭素とか言ってこのような設備投資をしてしまったらどうするのかということです。分かってやる方が悪いと言えばそうですが、CO2削減というのは実際は大変です。

(深田)
本当に大変です。と言いますか、CO2を減らすことの意味が全然わかりません。

(杉山)
おっしゃる通りです。そこも共和党の人たちは共有しています。もうトランプ氏だけではない。国務長官に指名されたマルコ・ルビオ氏もそうです。

(深田)
「アホのグリーン・ニュー ディール」と言っています。

<スライド愚かな脱炭素を止めろ—マルコ・ルビオ(国務長官指名)>

(杉山)
翻訳すると「アホの」となるでしょうが、私は品良く「愚かな脱炭素」と書いています。

(深田)
「シリー」なのでそんなに品のいい言葉ではありません。

(杉山)
これはフォックスニュースで、全国ネットのテレビ番組に出てこれをはっきり言っています。この人はさきほどのエネルギードミナンス的な発想で言っているのですが、アメリカは石油もガスもあるのだから、ガンガン掘ってそれを売りまくればよい。ロシアが今力を持っているのは石油とガスを掘りまくって売りまくったからで、それでお金も持っているし、軍事力もそれで整備している。ヨーロッパもロシアのガスの中毒になっていたから(笑)、ロシアに対してやたら優和的な態度を取っていた。そういうのはふざけているというわけで、アメリカはガンガン石油もガスも掘るのだ、だからもう「シリー ・グリーン・ニューディール」などやめてしまうべきだとはっきり言っているわけです。ルビオ氏は対中強硬派でもあります。

これまで一生懸命議員立法でやっていたのが、中国産の太陽光パネルは人権侵害の疑いがあるからアメリカに輸入しないというその法案の整備をこの人がやっていた。中国から直に来るものをある程度防いだけれども、ベトナムとかから迂回して輸出してくるのがあって、それも潰せということを言っていた。そういう人が今度国務長官ですから、日本なんて中国様の太陽光パネルをガンガン買いまくっている。あれはきっと、アメリカの税関で止められるようなものを日本が買っているのでしょう。アメリカがせっかく輸入禁止措置をとっているのに足並みを乱すとは怪しからんと、ルビオ氏に日本に説教してもらいたいところです。

(深田)
でも日本はもっと太陽光パネルを敷き詰めると言っています。

(杉山)
それについては次回やりたいと思います。その他にもエネルギー省の長官はこのクリス・ライト氏というガス会社の社長です。

<スライドクリス・ライト(ガス会社CEO、エネルギー省長官に指名)>

(深田)
現役ですか。

(杉山)
当然辞めるとは思いますけれども、これまでの経歴はそうです。シェールガスと言って岩を水圧で破砕してそれを吸い上げるという、そのイノベーションの企業を率いていた人です。こういう人がエネルギー省の長官をするようになる。そして、先ほどの気候変動の話ですが、アメリカの議会というのはちゃんとみんなデータを見せるのです。アメリカの議会公聴会というのはプロが分厚いレポートを書いてそこにこういうデータをびっちり書いてそれで議会で証言する。

<スライド気象災害の激甚化など起きていない>

世界の強いハリケーンの数というのも、下の線ですが、ずっと50年ぐらい横ばいです。上の線はハリケーンの総数です。これを見るとハリケーンは強くなっていません。それなのにハリケーンがあるたびに、バイデン氏とかはもう気候変動だ、気候危機だと言って、今のロサンゼルスの山火事もそのせいにしているのです。全然気候変動のせいではありません。元々ロサンゼルスはよく山火事が起こる場所です。

(深田)
しかも火事に便乗して放火魔も出てきて、強盗して回っています。

(杉山)
実際何かひどいことが起きていれば、それは気候変動以外の理由なのですが、みんな気候変動のせいにしてしまう。こういうのは嘘だというのをもう共和党の支持者はみんな知っているわけです。議員も含めて。ところが、日本でこういう話をすると、お前は陰謀論に染まっている、トランプが変人だから気候変動を否定するのだ、とか言いますが、全然違います。 共和党の賢い人たちはみんなこの嘘がよく分かっているのです。

<スライド途上国への資金提供を48兆円@2035年に>

パリ協定は色々行き詰まっています。2050年CO2ゼロなどできるはずもありません。それだけではなく、この年末にCOPがアゼルバイジャンで開催され、先進国は途上国に毎年3000億ドルの資金提供をするという話になりました。3000億ドルは48兆円です。今すでに1000億ドル提供しているのですが、あと10年、2035年までには3000億ドルにするという合意になりました。これも理由は何かと言えば、途上国が温暖化の被害にあって大変だとか、途上国が温暖化対策をするためにお金が必要だとか、先進国が被害を及ぼしたからその賠償だとか言うわけです。年間48兆円というのは先進国全体でということですが、それでは日本はどれくらい払うのか。一割です。一割ならおよそ5兆円です。少し割り引いてもらったとしても、それでも払いますか。どうしてこのようなことを勝手に約束してくるのでしょうか。

(深田)
ありえません。どうしてそのようなお金を我々が払うのですか。

(杉山)
お金を出すのですから、当然国会へ通さなければいけませんが、おそらくまだ何も話していない。

(深田)
そそもそも、二酸化炭素を一番出しているのは中国です。中国とアメリカに払ってもらうのが筋というものです。

(杉山)
中国は払いません。先進国ではないから払わない。パリ協定ではそうなっています。アメリカはもちろんバイデン氏が約束しただけなので、もう全部おシャカになります。このようなことをするから、アメリカはパリ協定を離脱するわけです。

(深田)
日本はどうでしょうか。

(杉山)
日本も離脱すればいいのです。

<スライド日本離脱でパリ協定は空文化する>

かつて日本は京都議定書を離脱しました。2010年に数値目標を提出しなかったのですが、それで事実上離脱だったわけです。そしてパリ協定の今度の数値目標の期限が2月10日です。そこで日本はそのバカな数値目標を出さなければいいのです。

(深田)
そうするともう自然に終わっていくということですね。

(杉山)
ところが日本は今その数値目標を出そうとしています。

(深田)
恐ろしいですね。そろそろ我々日本も「脱」脱炭素に移るべきです。トランプ政権に見習って「脱」脱炭素をやってほしい、パリ協定脱退を実現してほしい、というところですが、それはまだ難しそうだということでしょうか。

(杉山)
菅義偉氏以来自民党はずっと左翼リベラル的なことを一生懸命やってきたので、この脱炭素というのもその一環です。政府役人ももうそれに逆らえない。今役所利権が、グリーン利権ができてしまったから、役所からも変わることができない。しかし、アメリカから圧力がかかったら変わって面白いかも知れません。

(深田)
もう日本のグリーン利権を木っ端みじんにしてもらいたいというところです。

(杉山)
日本のエネルギー安全保障を考えれば、今石油はまだ9割以上中東から輸入していますが、アメリカから石油を買うというのはすごくありだと思います。ガスも買えばいいし、石炭も買えばいい。いずれにせよ、トランプ氏は通商でも色々言ってくるわけです。いいことばかりとか言えませんが、そうしたらエネルギーを買いますと日本が先手を打って言えばいいのです。もちろん条件は交渉しますが、アメリカのエネルギーを是非買いたいと言えばカードとなるし、本当に安全保障のためにはいいはずです。中東からの油などはいつどうなるかわかりません。

(深田)
今回はトランプ氏のエネルギー政策、「脱」脱炭素 、パリ協定も脱退、それに日本が追従してくれたらいいけれども、どうなのかというところを杉山先生にお話しいただきました。先生ありがとうございました。

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