冷たい幽波紋に込めた熱い演技
「岡本信彦といえば悪役!」の皆さん、ようこそ!第3弾!!
ギアッチョというキャラクターをご存じだろうか。
『ジョジョの奇妙な冒険』第5部「黄金の風」に登場するこの人物は、紛れもなく岡本信彦氏が演じたキャラクターの1人だ。主人公一行に立ちふさがる敵として登場するのだが、この男、非常に面白いヤツである。岡本氏の強烈な演技がドハマりしており、視聴者の記憶に深く刻まれている存在だと断言できる。
今回はこのスタンド使い、ギアッチョについて語っていく。
まずはこのギアッチョが登場する『ジョジョの奇妙な冒険』について軽く解説だ。
『ジョジョの奇妙な冒険』とは集英社出版の週刊少年ジャンプに連載されていた、荒木飛呂彦原作の大人気漫画である。1986年に連載が始まった本タイトルは、同社の青年向け漫画雑誌ウルトラジャンプにて現在も連載が続いている。30年以上も連載しているという時点でとんでもない話だ。既に単行本の全世界累計発行部数は1億をゆうに超え、世界中にファンを生み出した超大作なのである。ジャンプ作品として、今でも最前線を突っ走っている。
物語のテーマは「人間賛歌」。主人公が各部ごとに交代するという独特のスタイルを確立した本作は、初代主人公ジョナサン・ジョースターをはじめとし、現在連載中の第9部主人公ジョディオ・ジョースターまで、計9人の主人公が登場している。空条承太郎が主人公の第3部「スターダスト・クルセイダース」では、あの有名な「スタンド」の設定が生まれ、人気を博した。ちなみに第6部「ストーン・オーシャン」まではアニメ化しているぞ。
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そんな歴史の長い『ジョジョ』シリーズの中で、今回取り上げるギアッチョが登場するのは第5部「黄金の風」である。
ジョルノ・ジョヴァーナ(CV:小野賢章)を主人公とする第5部の舞台はイタリア。ギャング組織に加入したジョルノが仲間と行動を共にし、任務遂行のために、襲い掛かる敵と戦いを繰り広げる物語だ。
さて、ではギアッチョについて。
ギアッチョは、主人公一行と敵対することとなる暗殺チームのメンバーの1人である。ギャング組織パッショーネの暗殺専門部隊であり、リゾット・ネエロという人物がリーダーを務めるチームだ。物語の中で、主人公ジョルノが所属する護衛チームと衝突することとなり、ギアッチョもまた一人の敵としてジョルノらに襲い掛かる。
パッと見て取れると思うが、なかなか奇抜な格好をしており、水色の巻き髪に赤い眼鏡という容姿である。 非常に気性が荒く、作中とにかく色々な物事にブチキレており、インテリヤクザのような風貌(本当にそうか?)をしておきながら、戦闘中は常にフルスロットルな男。本当に暗殺出来るのかと疑問に思うほど常にうるさいし、真っ向勝負を挑んでくるような変人である。しかし戦闘IQはかなり高いようで、バトルスタイルはトリッキーであり、後述するスタンドの能力も相まって、主人公一行にとって厄介な相手となった。
彼のスタンド名は「ホワイト・アルバム」。他のスタンドは持ち主の背後に顕現するのに対し、ホワイト・アルバムはスーツのように身に纏うという珍しいタイプのスタンドである。
超低温を振りまき、周囲にあるものを冷却する能力を持つこのスタンドは、生命活動が出来ないほどの極寒地帯を本人の周囲に展開し、持ち主自身は身体をスーツで身を守りつつ戦闘出来る。これを本人は超低温の世界と呼び、自分の有利な環境を作りだして戦うのだ。シンプルだが強力な能力で、対峙したジョルノは不利な戦闘を強いられることとなった。
そんなギアッチョ、アニメ化したことでその魅力度が倍増したのだが、その理由はなんといっても岡本信彦氏の名演技にある。
先程説明した通り、ギアッチョはとにかくブチギレているシーンが多く、冗談抜きで登場時間のうち80%は大声で怒鳴り散らかしている。
その内容はいつも突拍子が無いもので、例えばイタリア語を語源とする名詞について
「フランスの『パリ』ってよォ……。
英語では『パリス(PARIS)』っていうんだが、みんなはフランス語どおり『パリ』って呼ぶ。
でも『ヴェネツィア』はみんな『ベニス』って英語で呼ぶんだよォ。
『ベニスの商人』とか『ベニスに死す』とかよォ……。
なんで『ヴェネツィアに死す』ってタイトルじゃあねえーんだよォオオォーーッ!!!!!!!!!
なめてんのかァーーーッ!!!イタリア語で呼べ!イタリア語で!!
チクショオーーームカつくんだよ!コケにしやがって!ボケがッ!!!」
というように突然ブチギレる。車の上で、戦闘中に。敵を前にして。
……聞こえてこないだろうか?これらの台詞を読み、岡本信彦氏の声が自動再生されないだろうか。
この狂暴な性格と怒鳴り散らす個性はまさに岡本信彦氏の演技のクリティカルゾーンにぴったりと当てはまっており、ギアッチョの狂気を見事に表現していた。まさにハマり役というやつである。
ギアッチョは作中、他にも色々なことに対してイライラしており、その都度このような独り言を繰り出し始めるので、是非アニメを観て確認してほしいところだ。もちろん、戦闘中や会話の演技も絶好調で、実に「岡本信彦らしい」ハッスルを楽しめる。
以上、ギアッチョについて少しでも理解が深まってくれたら嬉しい。
この男、とにかく一挙手一投足が面白いので、この記事を読んで興味が湧いたら『ジョジョの奇妙な冒険』第5部「黄金の風」、観てみてほしいと思う。安定の岡本信彦ボイスが歓迎してくれることだろう。
またギアッチョに限らず(というより、ギアッチョを中心にこのタイトルをオススメすること自体が不自然なのだが)、『ジョジョの奇妙な冒険』シリーズには他にも多くの素敵なキャラクターが登場し、アニメのクオリティも相まって文句無しの名作となっているので、未視聴の方、是非一度トライしてみてほしい。すべて観るにはかなりの時間を要するが、歴史ある王道のバトル漫画としての面白さが詰まっている。決して後悔することはないだろう。
それでは、また。
(文章:和田)