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河野太郎氏「年末調整廃止」の背景と影響を考える① 発言の背景を探る

2024年9月、自民党総裁選に立候補した河野太郎氏は、Xにて「年末調整の廃止」を主張し、各報道機関が一斉に報じた。各界から様々な反応が出て大いに盛り上がっている。
この話題は我々一般市民にも関心がある話なので、彼がこの政策を打ち出した背景とその影響を考察してみたい。

そもそも「年末調整」とは何か。それを説明するためには「源泉徴収」を説明しなければならない。
源泉徴収とは、雇用主が従業員の毎月の給与支払い時に所得税を天引きして国に納付することで、年末調整はその年の最後に源泉徴収額が本来の所得税額より過大あるいは過少だったときの金額を従業員へ還付あるいは徴収することである。

本来は所得税の徴収は国が行うもので、しかも年末に実施すればよいのだが、日中戦争の最中、戦費を賄うための増税の際に、国民の負担感を軽減するため源泉徴収を導入したらしい。給与から天引きされ、かつ毎月徴収されるので負担感が薄まる効果を期待したものらしい。
しかも毎月前払いしてもらっているわけで、国としてはうまみが大きい。
年末調整は戦後の荒廃で行政能力が欠如し、徴税能力が低下したことを補うために導入したものらしい。

つまり、源泉徴収も年末調整も「国が行うべき仕事を企業に押し付けたもの」のようだ。しかも年末調整(源泉徴収も?)は当初、国から企業へ代行手数料が交付される制度だったのだが、いつのまにか消えてしまったらしい。つまり現在は単純に「タダ働き」させられている状態で、ずいぶんひどい話である。

そのうちの「年末調整」について河野太郎氏は廃止を打ち出したようなのだが、この議論は何も今回彼が初めて言い出したわけでもなく、以前から界隈では議論されていたようだ。

上記の答申では、年末調整が税制の度重なる改正やマイナンバーの導入などにより税制が複雑化し、企業にとって負担が増大していることが説明されている。とはいえ年末調整の廃止は従業員本人や税務署の負担増でもあるため、ただちに廃止することは適当ではないが、なんらかの制度改革は必要だとしている。

よってこの話題は新しい議論というわけでもないのだが、総裁選で河野氏が話題にしたことで、世間への認知度が高まり、その反応が報道されるようになった。

報道によれば河野氏は「すべての国民に確定申告していただく」「税の使い道に厳しい目を注いでいこうという環境がつくられる」とXで発言したとし、それに対して税務署の反発などを伝えている。

しかし面白いことに、河野氏は総裁選に向けて特別サイトを立ち上げているのだが、そこには「年末調整廃止」は全く記載されていないのだ。

となると「年末調整廃止」は彼の政策の柱ではなく、Xで「付け足し」する程度のものだということが分かる。「国民が税に関心を」と言ってはいるものの、実際のところは彼がデジタル行革大臣で、マイナカードをごり押しする立場だから言ってみた、というのが実際のところではないだろうか。

背景はそんなものだったかもしれないが、せっかくなので年末調整廃止が実現する場合、どんなことが起きうるか、次回で考えてみたい。

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