ZEN展
2023年初夏、抗がん剤治療で単身東京で滞在していた際に、病気について一番最初に話を聞いてもらった友人Hさんから、ZEN展という公募展にご自身の作品を出展しているので見に来ないかというお誘いを頂いた。
ZEN展HP
https://zenten.info/
6月の金曜日、いそいそと上野にある東京都美術館に向かった。待ち合わせ時間より前だというのに、美術館の前で、既にHさんは待っていてくれた。
医療従事者のHさんはとっても思慮深く、思いやりのある方で、私が心から尊敬している友人の1人だ。そんなHさんに案内され、中に入ると、同じ建物の中で、マティス展も開催されているようだった。色彩の魔術師マティス展の案内を横目にZEN展の会場に引き込まれる。
入ってみると衝撃が走った。テーマや統一感が一切ない。多種多様な作品群、個性がさく裂した一つ一つの作品のパワーの強さに圧倒される。
ZEN展は国籍、派閥、流派、年齢を問わず、広く公平に開催することを信条とする公募展であるが、正にその哲学を痛感するような展示だった。
色鉛筆で繊細に描かれた動物の絵、糸を組み合わせて紡ぎだされた立体作品、光を帯びたガラス細工、手の込んだお人形。悪趣味だと感じるものも少なくないが、それもまた個性。私にとって悪趣味と思うようなものに、すっかり魅了される人がいるであろうことも良く分かった。
Hさんの作品はモダンな版画作品だった。部屋に飾ったらスッと空間が引き締まりそうな知性を感じる作品だった。枠にとらわれない展示作品に圧倒されながら、ふと、母が遺してくれた絵画が脳裏をよぎった。
Hさんは一つの作品を出展する費用は約1万5000円と教えてくれた。直ぐにZEN展について検索すると、約3か月後の9月に横浜での開催が告知されていた。ママが生まれ育った街にある横浜市民ギャラリーでの開催。是非ともママの作品を出展したいと思った。
7月1日は亡き祖父のお誕生日。今はママも一緒に眠る藤沢の墓苑に、ママの絵画教室のお友達Nさんと一緒にお墓参りに行くお約束をした。妹家族にも声をかけて、Nさんとお墓参りの後にランチをした。ランチの際に思い切ってママの絵の出展についてNさんにご相談したところ、大賛成して背中を押して下さった。絵画教室のお友達にもお声かけして下さると仰って下さった。
7月に入り、北京と東京を家族で行ったり来たりしながら、ついに本帰国となった。コロナ禍の3年間の北京生活がやっと終わった。抗がん剤治療の前半は脱毛も倦怠感も何もなかったが、7月下旬になると夏バテのような疲労感を感じるようになっていた。そんな折、ZEN展の応募を頻繁にチェックしたが、なかなか募集が始まらなかった。
8月も中旬に差し掛かり、少しづつ髪が抜け始めたころ、公募の募集が始まった。夏の疲れも出ていたので、正直出展に迷いが生じ始めていた。折角出展したら、なるべく沢山のママのお友達に見てもらいたい。一方で、体力的に沢山のお友達にご案内をする自信がなかった。そんな、心の葛藤を看護婦さんに伝えたら、8月末から新しいお薬にも切り替わるし、今年はやめておいた方が良いんじゃないか、っとアドバイスを受けた。私は天邪鬼な方ではないが、その看護婦さんの言葉に返って背中を押され、出展することを決めた。
体力と気力に自信が持てなかったのでお知らせする対象は極力絞った。
ママが通っていた絵画教室の先生とお教室のお友達と、ママと毎月のようにランチにいっていたKさん、家具やママの絵画も含めてママの遺品を預かってくれていたママのお友達Uさん。ママが旅行にお付き合い頂いていたFご夫妻。それから、ZEN展について教えてくれたHさんと、ママのことも良く知っている私の幼馴染Mちゃん。ママの家や大切にしていた家具や絵画を撮影して下さったカメラマンの友人Sさん。
夏の暑さがまだまだ厳しかった9月初旬、お声掛けさせて頂いた方は皆さま来て下さった。そんな甲斐があってか、ありがたいことに母の作品がZEN展の理事長N先生の目にも留まり、また沢山のご投票を頂き、優秀賞を頂いた。
ZEN展 横浜市民ギャラリー展受賞作品発表
https://zenten.info/yokohama_award/
色々なご縁もあり、3月には埼玉県立近代美術館のZEN展にも出展。4月16日から銀座で選ばれた作品だけが展示される選抜展にも出展予定でいる。今回は広く母の友人知人にも告知したいと考えている。
アーティスト脳を刺激したい方、是非、4月16日~21日まだ銀座・大黒屋で開催されるZEN展にお運び頂きたい。作品一つ一つから、燃えるような情熱を感じ、生きる活力が高まるに違いない。
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