【note創作大賞2023入選】地雷系祓い屋と霊感ホスト あらすじ・1話
あらすじ
繁華街でも指折りの人気ホスト、レイヤ(本名:畑中礼)。数々の女に貢がせ、ブランド品で身を固め、今一番輝いてるとされている彼は、悪霊やら呪いやら異形やらの化け物を見る力があり、割と毎日鬱だった。
そんな中、レイヤの店のホストが謎の失踪を遂げる事件が相次ぐ。まさかおばけ関係じゃねえだろうなと戦々恐々のレイヤは、接客中目の前に現れた悪霊のせいで悲鳴を上げかけてしまう。咄嗟に取り繕うが、客に「もしかしてれいぴ〜、『見えてる』?」と指摘される。それはいかにも『地雷女』なレイヤの客・ゆりあだった。
ゆりあはなんと妖を滅する祓い屋なのだそうだ。レイヤは半ば無理やりゆりあとバディを組むことになるが……。
登場人物など
〇レイヤ(畑中礼)
金髪細マッチョのイケメン。歌舞伎町の有名店でナンバーワンの売れっ子ホスト。明るくて人当たりがよくて金持ちの年上の女によく好かれるタイプ。反面、普段は無気力ぎみのクズだが、ここぞと言う時には度胸がある。
幼い頃から霊感があり、墓地などが多い田舎から逃げてくる時にホストになった。とはいってもホストはホストで闇深い世界なのでお化けちゃんもかなりいてSAN値がやばい。レイヤは霊嫌から。
おばけちゃんスルースキルが高い。
〇ゆりあ(玉寺百合愛)
黒髪ハーフツインにピンクメイクの地雷系美少女。めちゃくちゃ地雷っぽい話し方をするし、一人称は「あたし」のほかだと「ゆりあ」だが、性格はかなりドライ。顔のいい男に貢ぐのが好き。金があるので。最近の最推しはレイヤ。
金があるのは、ゆりあが天才的な祓い屋だからである。出身である祓い屋の老舗『玉寺一門』から独立して活動しており、主に民間から依頼を受けている。実力は界隈でも5指に入るとされており、武器は刀。
〇妖
悪霊、妖怪、異形、具現化した呪いなどなどのおばけちゃんを総称した言葉。
危険度順にS、特A(ex-A)、A、B、C、D。諸外国でも妖ちゃんはいるのでアルファベットで表しているそうだ。
〇祓い屋
妖を祓う組織や個人のことを指す。正式には【祓除師】。
一族によっては千年以上続く家業を営み、基本的に勝手知ったる国からの依頼や、華族の血筋のものからの依頼を受ける。
玉寺一門は関東最大の祓い屋一門。後述する国家怪異対策委員会とズブ。
〇国家怪異対策委員会
内閣府外局の秘密国家組織的なもの。祓い屋の正式名称は祓除師。祓除師が単独で活動する時の許可を出したり、祓い屋一門を支援したりする。ゆりあはここの許可を受けて単独で活動している。
登録されない野良祓除師は祓い屋一門と基本的に敵対している。
1話
〇繁華街 ホストクラブ『Ageless』店内
煌びやかな店内。
客の1人から高い酒の注文が入り、従業員がシャンパンコールのために集合している。
金髪のイケメン・レイヤと、派手な格好をした女子が並んで座り、周りをホストたちが取り囲んでいる。
ホスト「なんと! なんと! なんと!」
ホスト「素敵な!」「姫と!」「素敵な!」「王子の!」「なんと!」「テーブルより!」
ホスト「ドカンと一発!」「ドンペリニョン!」「いただきました!」
ホスト「ごちそうさま!」「ありがと!」「いただきます!」「ありがと!」
ホスト「それでは素敵な姫より一言!」
客の女性「レイヤのためならこのくらいなんのその♡ これからもよろしくよいちょ!」
ホスト「ヨイショォ〜!」
〈――ホストクラブ。欲望うずまく夜の世界〉
〈きらびやかで賑やかなその裏では〉
〈人には見えない汚いものもある〉
〇ホストクラブ『Ageless』バックヤード
レイヤ(いやまじで今回もきたね〜〜〜もん見た! 最悪なんですけど!)
きらびやかな店内から一転、ホストクラブのバックヤードで吐きそうな顔のレイヤ。うっぷと言いながら顔をおさえている。
レイヤ(あの女肩にやべえのつけてたァ!)
レイヤ(サイズはちいせえけどなんなんあれ! なんかしゃべってたんですけど! 言葉の意味はわからんけど!)
先程のシャンパンコールを思い出すレイヤ。
レイヤビジョンでは客の女性の肩に、蝿と蛾が一体化したかのような拳大の異形の怪物がいるように見えていた。
レイヤ(最悪……何年経っても慣れるかあんなんクソが……)
〈――レイヤ(本名:畑中礼) ナンバーワンホスト〉
〈特性:霊感S〉
レイヤ(――昔から俺はおかしなものをよく見た。たぶん、妖怪とかお化けとか幽霊とか言われるものだ)
レイヤ(忘れもしない。初めてお化けを見たのは年長さんの時――)
年長レイヤ『母さん、電柱のそばに立ってる人、あたまにケガしてるよ? 大丈夫かな?』
レイヤ母『え……どこの電柱? 母さんわかんないや……』
レイヤ(それからも……この霊感にはほんっとに……)
中学生レイヤ『あははっでさァ〜……(目の前を血だらけの女を追加)ッギャ!?!?』
クラスメイト『どしたん礼』
中学生レイヤ『……あはは! いや、なんかきもい虫いてさァ〜!』
クラスメイト『そんなんいた?』
高校生レイヤ『――は!? 別れるってどういうことだよいきなり!?』
彼女『いやだってなんか……礼あたしの顔見て突然叫ぶことあるし……無理に付き合ってんじゃないのかなって。あたしの顔嫌い?』
高校生レイヤ『いやお前の顔見て叫んでるのは……(たまにやべえ化け物が張り付いてるからで……)』
彼女『なんでなんも言わないわけ!? ちょっとイケメンだからってバカにしてんでしょ!』(平手)
高校生レイヤ『っテェ!』
レイヤ(ほんっっ(略)っっとに苦しめられてきた……!)
レイヤ(地元がそこそこ田舎だから変なのがいるかと思って東京に出てきたってのに……)
ちらりとバックヤードを見回すレイヤ。
小さい妖怪がそこかしこにいる。壁の隅には何やら蹲ってブツブツ言っている小男。
レイヤ(――東京にもいるじゃん! つうか東京の方がいるじゃん!!)
壁にガンガンあたま打ち付けるレイヤ。涙目。
レイヤ(いや……いや薄々わかってた……。この妖怪とか幽霊とか、負の感情とか欲とかが起きやすいところに湧きやすいんだ……)
レイヤ(なんで俺ホストやってんだろまじ。自分から鬼門に突っ込んでってどうすんの? 馬鹿なの? 死ぬの?)
レイヤ「ぐおおおおおおおでもやめらんねぇぇえええ」
〈レイヤ:年間3億5000万プレーヤー
『Ageless』ナンバーワンホスト〉
レイヤ「なんで俺は調子こいてナンバーワンなんかになってしまっ――」
ホストA(以下:あさひ)「レイヤさんお疲れ様で〜す!体調大丈夫すか?」
レイヤ「――ああ、大丈夫。ちょっと酔い醒まし」
後輩・あさひの登場に即座にかっこつけるレイヤ。にこっと余裕そうに微笑む。
あさひがおおおかっけー……と呟くあさひ。
レイヤ(こいつ新人で人当たりい~けどなんか苦手なんだよな~。誰か来ないかな)
ホストB(以下いつき)「おつかれーおっあさひにレイヤくん」
あさひ「あ、おつかれーす」
レイヤ「よう」(ホッ)
いつき「なああさひ、リヒト知らん? あいつにタバコ買いに行かせて戻らねんだわ」
あさひ「え? 知りませんけど。いつごろ出てったんすか」
いつき「3時間前くらい」
あさひ「なんだそれ。バックレすか?」
レイヤ(おいおい……)
あさひ「このまま消えると困るすね」
いつき「まじそれな。最近こうゆーの多くね? ちょっと前にユキヤ消えたじゃん。あいつどこ行ったわけ? 店の金に手ぇつけて消されたって話まじ?」
あさひ「ユキは掛け飛ばれて逃げたんじゃありませんでしたっけ」
いつき「どっちにしろ迷惑だろ。ねえレイヤくん」
レイヤ「――だな。2人はそうならないようにしてよ」
レイヤ(俺が一番逃げたいのに俺より売上上げてねぇヤツらに先に逃げられてたまるか)
いつき「俺らはないですって! おいあさひ、新人だからってすぐ逃げんなよ!」
あさひ「俺の事なんだと思ってんすか」
レイヤ「……だといいけど」
レイヤ(でも確かに最近失踪多いってオーナー言ってたな)
レイヤ(はーまじ……やってらんねー)
〇ホストクラブ『Ageless』店内
指名され、呼ばれたレイヤがテーブルに赴くと、そこには黒髪をハーフツインにし、ピンクのトップスに黒のスカートを合わせた二十歳くらいの地雷っぽい女。
スマホをいじっていた女(以下、ゆりあ)がレイヤに気づき、ぱっと表情を明るくさせる。
ゆりあ「あっ! れいぴ〜! やっと来たあ」
レイヤ「ゆりあ! 来てくれてありがと」
ゆりあ「寂しかったんだよぉ?」
レイヤ「俺もだよ」
ゆりあ「ほんとぉ?」
レイヤ「当たり前じゃん。何、疑うの?」
ゆりあ「ううん♡ 嬉しい♡」
隣に座ったレイヤの腕にしがみつくゆりあ。笑顔でゆりあを見つめるレイヤ。
レイヤ(ちなみにこれはマジだ)
レイヤ(なぜならこいつは――、
客の中で唯一、今まで一度もやべえお化けをつけてきたことがない!)
レイヤ(太客、かつ、ノーお化け客! 地雷のくせに俺的癒し枠の超絶レア客なのだ――)
ゆりあ「嬉しくなっちゃったからシャンパン入れるね♡」
レイヤ「まじ? ほんとありがとう。でもあんまり無理すんなよ」
レイヤ(それになんか知らんけどこいつ異様に金払いいいんだよな……あの手この手で営業かける必要ないから楽だし……)
ゆりあ「れいぴやさしぃ〜♡ いいの! れいぴのためなら無理なんかじゃないから!」
レイヤ「ゆりあ好き」
ゆりあ「えへ♡ ゆりあも!」
レイヤ(こいつの金まじでどっから湧いてんだろな……風俗(フロ)やってる感じもしないし)
レイヤ(――まあいっか!そのほーが気持ちよく貢がせられるしな!!)
ゆりあ「そーいえばれいぴ、ユキヤ蒸発したってほんと? ゆりあユキヤがヘルプついてくれるの楽しかったけどな」
レイヤ「なーに俺の接客じゃやなの」
ゆりあ「そぉゆーことじゃなくってぇ〜も〜」
レイヤ「なんだよじゃあどういう……、っ!?」
ゆりあ「……れいぴ?」
途中で言葉に詰まったレイヤが額に汗を滲ませる。
その視線の先には、店内を移動するホストBの背中。そこには、彼の背中全体を覆い隠すくらいに大きな蜘蛛。
レイヤ(なんっだよっアレ……あんなでかいの久々に見たぞ……)
ゆりあ「大丈夫? れいぴ」
レイヤ(いやだめだ、接客中だろ、平常心……つうかこっちが気づいてるのバレたらその方がまずい……)
ゆりあ「ねえれいぴ」
レイヤ「っあ、悪いゆりあ、ぼーっとして……」
ゆりあ「ううん、平気。……それよりれいぴ、もしかしてだけど」
レイヤに耳打ちするゆりあ。
ゆりあ「……視えてる? アレ」
レイヤ「――っ!?」
驚いてゆりあから身を話すレイヤ。
レイヤ「……あ、れって……はは、ゆりあ、なんのこと……」
ゆりあ「やっぱれいぴ視えてたんだ? あ、じゃあされいぴ、コレ見て!」
ゆりあが黒いハート型バッグから取り出したのは、名刺入れ。
黒い飾りネイルがされた指で彼女が取り出したのは、モノクロの非常にシンプルな名刺だった。
『内閣府外局怪異対策委員会公認
祓除師 玉寺百合愛』
レイヤ「……は……?」
ゆりあ「ゆりあね、実はゴーストバスターなんだ」
〈――ゆりあ(本名:玉寺百合愛) 特性:霊感A 霊力S 戦闘能力特A〉
〈職業:S級祓除師〉
ゆりあ「ちょっとれいぴに聞きたいことあるんだけど、いーい?」
次回
この記事が受賞したコンテスト
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?