地雷系祓い屋と霊感ホスト 2話
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地雷系祓い屋と霊感ホスト あらすじ・1話|日部星花(小説家) (note.com)
2話
〇ホストクラブ『Ageless』系列店 BAR『berry』店内
〈前回までのあらすじ――〉
〈典型的な『てゃ』だと思っていた太客がゴーストバスターだった件〉
落ち着いた雰囲気のレストラン・バーのテーブルで向かい合い、食事するレイヤとゆりあ。
ゆりあはおしゃれな料理を「しゃれてるんですけど~!」などと言いながらパシャパシャスマホで撮っている。レイヤはやや顔色が悪い。
レイヤ(……『詳しいことは同伴の時話そ!』ゆわれて了承してしまった……)ちーん…
レイヤ(ここでアフターじゃなくて同伴の時にしてくるあたり頭使ってくるよなこいつ……)
レイヤ(いや、それよりも)
食事に手を付けず、もらった名刺を見下ろすレイヤ。
レイヤ(なんだこの内閣府なんちゃらっておい)
レイヤ(これガチなん? 公認、祓(はら)……なんて読むわけこれ?)
レイヤ「あのさゆりあ。昨日の話なんだけど……」
ゆりあ「うん?」
レイヤ「さすがにゴーストバスターっていうのは」
ゆりあ「うんうん♡」(レイヤが話している最中に通りがかったスタッフの腰に巻き付いたムカデがゆりあのデコピンでバシュッ! と消え去る)
レイヤ「信じられないっていうか――ええええええええええ……まじい……?」
ゆりあ「も~~やっぱり視えてるんじゃん♡」
レイヤ(うおええええええまじかああああああい)
頬杖をついてぶりっこポーズのゆりあ。吐きそうなレイヤ。
レイヤ「え……じゃあこの祓……ってガチな話なわけ? 内閣府の外局がどうのってのも?」
ゆりあ「うん、祓除師(ふつじょし)ね。国怪対は秘密組織的なとこだよ」
レイヤ「こっかのひみつそしき」
ゆりあ「MI6みたいでしょ。国会怪異対策委員会なんて名前クソださいけど」
レイヤ「えむあいしっくす」
ゆりあ「ゆりあはね~全国で数百くらいいる祓除師(ふつじょし)の中でもけっこう強い人なんだよ。すごいでしょ♡」
レイヤ(いやいやいやいや……)
レイヤは顔色悪く、名刺とゆりあを見比べる。
レイヤ(まさかそんな少年漫画じゃあるまいし……いやホスクラの客がゴーストバスターじゃ少年誌にはならないか)
レイヤ(でも……確かに、あのウェイターの腰についてたのはこいつが触って消し飛んだ)レイヤの視線がウェイターの後姿に向けられる。
レイヤ(それにゆりあは今まで化け物をつけてきたこともない)
レイヤ(――マジな話、なのか? 本当に)
ゆりあ「あのねそれでね~ ゆりあ、れいぴに聞きたいことがあったんだ」
レイヤ「え」
ゆりあ「最近『Ageless』のホストがよく失踪してるみたいじゃん? ゆりあそれちょっと気になっててさ~調べてるんだよね」
レイヤ「調べてるって……」
ゆりあ「うん。――簡単に言うとお化けちゃん案件かなって思ってるわけ」
レイヤ「……っ」ぞわり
怖気を感じるレイヤ。
ゆりあは笑顔のままだが、なんだか空気が重くなったような気がしたからだ。
ゆりあ「れいぴなんか心当たりない?」
レイヤ「んなこと言われても……ホストの失踪なんてこの業界そこまで珍しいことでもないしな」
レイヤ(――この2か月で失踪したと思われるのは3名。中堅ホストの颯、新人ホストのユキヤとリヒト)
レイヤ(特に共通点はない。ユキヤもリヒトも飛ぶほど売り上げがやばかったわけでもない。颯はナンバー入りだってしてた)
レイヤ(お化けちゃん案件? いやまあ最近少し店の化け物が増えてるような気もしてたけど……)
ゆりあ「そっか……じゃあれいぴ、ゆりあのお仕事手伝ってくれない?」
レイヤ「いやいや……無理だよ俺祓うとかできないし」
ゆりあ「ええっでもぉ」
レイヤ「それにゆりあも無理して祓う必要ないよ。俺、お前に危ないことしてほしくないしさ」
レイヤ(つうかお化けちゃん案件とか! 目に視える地雷に巻き込まれてたまるか……!)
ゆりあ「れいぴ………でもゆりあ心配だし」
レイヤ「んん……じゃあさ――」
〇ホストクラブ『Ageless』店内
シャンパンコール。従業員ホストがゆりあ・レイヤのテーブルの周りに集まっている。
にこにこのゆりあと笑顔がやや引き攣っているレイヤ。
ホスト「素敵な姫様より! 輝くシャンパン・ロゼ! いただきました!」
ホスト「姫様より一言!」
ゆりあ「今日もれいぴにいっぱい褒めてもらいま~す! よいちょ♡」
ホスト「いえーい!!」
カットはゆりあとレイヤのみのテーブルに移る。
ゆりあ「――てわけで手伝ってくれるよね? れいぴ」
レイヤ「……わかったよ。ゆりあの覚悟、受け取った」
レイヤ(受け取った じゃ ねえ~~~~~~!)内心頭を抱えるレイヤ
レイヤ(ロゼ(※めちゃくちゃ高いシャンパン)入れてくれたらいいよ! だなんて言うんじゃなかった~~~~!!!)
レイヤ(ハァ~~~?? なんで入れられるんだよこの女、昨日もシャンパンゴールド入れてたばっかりだろおい!)
レイヤ「……でもさ、ゆりあ、マジ無理してない?」
ゆりあ「してないよ~。ゆりあ月収〇〇(ピー)万だから」
レイヤ「格差社会…………」
レイヤ(何!?! ゴーストバスターってそんなもうかんの!?)
ゆりあ「まあ母数が少ないし、命がけの仕事だからね」
レイヤ(んなさらっと言うことじゃないだろ……)
いちゃいちゃするふりをしながらこそこそ話すゆりあとレイヤ。
ゆりあ「一人目は颯だったよね? ユキヤとか、店のお金に手を出して消されたとかいう噂掲示板で見たけど」
レイヤ(まあなくはないかも……ここのオーナーちょっと反社と繋がりありそうだもんな……怖いから触れないけど)
ゆりあ「もともとこういう夜職の店には妖……お化けのことね、が湧きやすいんだけど。嫉妬とか悪意とかいろいろ溜まるからぁ」
レイヤ(やっぱそうなんだあ……)
ゆりあ「でもなんか最近いきなり数が増えてるんだよねぇ」
レイヤ「……ゆりあはさ、そういう妖? の監視のためにホスト来てんの?」
ゆりあ「ううんただの趣味」
レイヤ(おい)
ゆりあ「イケメンに貢ぐの好きなんだ~。というか金ありすぎて使い道ないし、国に納めるなられいぴみたいなイケメンに金納めたい♡」
レイヤ「そっかあ~まじありがとな~(棒)」
レイヤ(格! 差! 社! 会!)
ゆりあ「れいぴは三人の行き先とか心当たりないんだよね?」
レイヤ「正直……珍しい話ってわけでもないから、店側が追うならともかく同僚が血眼になって行方探すとかはないな」
ゆりあ「三人の共通点は?」
レイヤ「それも特に思いつかないな」
ゆりあ「そっか……ゆりあとしては、何らかの条件を満たした三人がどこか妖の作った異界に連れてかれちゃったのかなとか思ったんだけど」
レイヤ「は!? 何、そんなことあんの!?」
ゆりあ「うん。異世界エレベーターって都市伝説聞いたことある? ああいうふうに、決まった手順で『儀式』を行うと、おかしな場所に繋がっちゃうことがあるんだ」
レイヤ(怖すぎなんだが???)
ゆりあ「霊力があったりするとなおさらチャンネルが合いやすいからさ。もしかしたら三人もそういう体質だったのかなって」
レイヤ「……」少し考える素振り
レイヤ「ん~いや。そんなことないと思うけど」
ゆりあ「え?」
レイヤ「俺、颯たちからそういうの感じたことないし」
レイヤ(ちなみに俺は人間相手でも不思議な気配を感じ取ることもある)
レイヤ(中学生のとき、たまたま見かけた占い師にオーラみたいなのが視えた)
レイヤ(インチキ霊媒師と、マジの霊媒師の区別とかもたぶんできる)
ゆりあ「え、うそ、れいぴ霊力の気配もわかるの……?」
レイヤ「霊力てのが何かまだよくわかんないけどな。あ……でも俺、ゆりあがゴーストバスターだとか全然わかんなかったし、アンテナけっこうガバかも」
ゆりあ「……や……ゆりあは意図して隠してるからわかんなくっても無理ないよ。強い妖だとこっちの気配を悟られるとまずいから」
ゆりあ「――そっか、れいぴ、ゆりあが一回ちょっぴり力を漏らした時反応してたもんね。感知能力が高いんだ……それも多分ゆりあより……」
レイヤ(力を漏らす……? あ……)
アフターで、一度ぞわりと来た時のことを思い出すレイヤ。
レイヤ(あの時か……つか、あれで「ちょっぴり」かよ……)
ゆりあ「……そっか、なんかちょっとわかってきたかも」
レイヤ「え……?」
ゆりあ「れいぴってさ……今職場に」
ゆりあ「――苦手な人っていない?」
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