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萬葉歌プレートを巡って、五感で文学を深めてみよう
成城学園はこの地に移転してきた当時から今に残る樹木や、色彩豊かな花が数多く植えられています。
学園生活で何気なく目にしている植物のなかに、萬葉歌が書かれたプレートが設置されています。
このプレートは2018年、文芸学部の小林真由美教授(以下小林先生)が中心となり制作され、成城大学構内に15カ所取り付けられました。
今回は、萬葉歌プレートを発案した経緯や、小林ゼミで実践した「データサイエンス×萬葉歌」の授業について、お話を聞きました。
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--なぜ萬葉歌プレートを設置することになったのでしょうか。
授業をする中で、学生たちが萬葉集に出てくる花を知らなかったことがきっかけです。
文学や言語は、文字を追うだけではなく、知識を広げ、実感的に学ぶことで、はじめて深く理解できるものです。そこで、植物に詳しい職員の方と一緒に、構内にある植物を調べることにしました。萬葉集には数多くの植物が詠まれており、構内にも萬葉歌に詠まれた植物がたくさんあることがわかりました。
植物園の説明書きのように萬葉歌のプレートがあれば、学生たちも萬葉歌に親しみを持てるのではないかと思い、制作することになりました。
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--4500首もある歌の中から、構内にある植物と照らし合わせていくのは気が遠くなりそうな作業ですね。
はい。協力して地道に、私も学びながらの作業でした。発案から完成までに確か1年ほどかかりましたね。
元々構内にあった植物以外にも、当時、国文学科にいらした小島孝之先生がご自宅で育てていた萬葉植物を寄付して下さり、学園の許可をいただいて、成城池のほとりに植えていただきました。
環境が合わず、育たなくなってしまった草花もありますが、萩や日本固有種の紫陽花(七段花)などしっかり根差し、毎年きれいな花を咲かせています。
--プレートに選んだ萬葉歌の基準はあったのでしょうか。
有名な歌や、学生たちに知ってほしい歌を選びました。
また、樹齢100年ともいわれる成城池のほとりの柳にもプレートが付けられてよかったと思っています。成城学園の創立者、澤柳政太郎氏の名にもちなんで、数年前から大学祭は「柳祭」という名称になりました。
でも、残念ながら老朽化で倒木の恐れがあるため、近いうちに伐採されるそうです。
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--プレートを設置してから、授業や学生たちに変化を感じることはありますか。
特に大きな変化ということはありませんが、日々の学園生活の中で、何気なく目にしてそれぞれに感じてくれていたらいいなと思います。
国文学科の「国語国文学実習」で俳句の授業を担当されている市村栄理先生が、構内吟行の際にいつもプレートを紹介してくださっているそうで、そのおかげで少しずつ広がってきた感じがあります。
学生に限らず、成城学園を訪れるいろいろな方に、身近な文学散歩を楽しんでいただけたら嬉しいです。
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--小林先生が古代国文学に興味を持たれたきっかけを教えてください。
国文学を学ぶ際に、一番古い時代を学べば全体が見渡せると思って選びました。大学時代に萬葉集の研究で有名な中西進先生と佐竹昭広先生に教わったことも影響しています。
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--データサイエンス教育研究センターと協力しておこなった授業についても教えてください。
データサイエンス教育研究センターの小宮路雅博先生が、萬葉プレートとデータサイエンスを組み合わせたらおもしろいのではないかとひらめいて、声をかけてくれました。キャンパスの画像を3D化したメタバース空間の中で、植物と歌を見せる仕組みを作りました。
JP UNIVERSE社のディレクター此木氏に技術指導をしていただき、学生たちが手分けして作業していきました。画像を取り込む作業の調整が難しく、苦戦する姿も見られましたが、無事に完成してホッとしています。メタバースの中のアバターが、構内の萬葉植物を案内してくれます。
オープンキャンパスでも展示して、多くの来場者の方に見ていただきました。
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--国文学科や萬葉集に関心がある人に伝えたいことはありますか。
教科書や書籍を頭の中で読むだけではなく、体験的に楽しんでほしいと思います。たとえば、萬葉集に詠まれた花が咲くのを見て、1300年前の萬葉歌人と同じ感情を共有できるかもしれません。
私のゼミでは毎年、古代文学にちなんだ土地にゼミ旅行に行きます。現地で歴史や風土を体感すると、古代文学に対する理解が格段に違ってきます。五感を使って感じたり考えたりすることで言葉や文章の理解が深まり、文学をより楽しめるものと思います。
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