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生物部部長に聞く!成城学園で出会える生き物の世界

成城学園の自然の中には、たくさんの生き物が生息しています。
日々なにげなく目にしている風景の中に、小さな命や神秘的な営みが隠れているかもしれません。

大学の生物部の部長をつとめる阿久津あくつ 勇壮ゆうそうさんは、学園内や近隣をじっくり歩いて生き物を観察します。
1限がはじまる前に少し早めに登校して、成城池や杉の森、仙川沿いを歩くことも多いといいます。

生物部部長 阿久津 勇壮さん

「歩いてみないとわからないことがたくさんあります。日々歩いて観察していると、鳥が成城池に飛んでくる時間や、季節ごとの虫の行動なんかも、だんだんとわかるようになってきます」

成城だけでも30種ほどの鳥が見られ、鮮やかなコバルトブルーと長いくちばしが特徴のカワセミは、成城池の岩場がお気に入りの定位置だそう。
鳴き声で近くにいるとわかることも。
生物部のインスタグラムには、阿久津さんが成城池で撮影したカワセミの写真が投稿されています。

成城池のカモを撮影中

小さい頃から生き物を眺めることが好きだったという阿久津さん。様々な生き物が自然の中で暮らす様子を、観察し記録することを楽しんできました。

「飼育するよりは、自然の中で生きる姿を見るのが好きなんです。一番好きなのは鳥。推しはルリビタキというスズメくらいの大きさで、名前の通り青くてかわいらしい鳥です。縁起がいいのでスマホの待ち受けにもしています」

生き物の声に耳をすます

成城池のそばには樹液が出る木があり、夏にはクワガタ、カナブン、チョウなどの姿が見られます。

学園内で採取した昆虫を標本に

学園内で採集した昆虫は標本にして、今年の柳祭(大学祭)で披露しました。部長だけでなく部員たちとの共作です。
阿久津さん含め、部員たちもみな標本作りの経験はほとんどなく、先輩の指導や独学、講座で学んだことをすぐ実践に生かして、数ヶ月で形にしたというから驚きです。

標本づくりの魅力を語る

「生物部として活動する中で、眼に見える標本として発表できたのは、成果だと感じています」
標本で特に苦労したのは形を整えて乾燥させるため、展翅板てんしばんに固定する作業。チョウの羽を傷つけないように慎重に針を刺します。

展翅板(てんしばん)に固定中の蝶

はじめは羽が破けてしまうこともあったそうですが、だんだんとコツを掴んで、きれいな状態で標本にできるようになりました。

固定して乾燥中の昆虫

標本だとわかっていても、今にも動き出しそうなリアルな昆虫が並ぶ姿は圧巻です。
中には、こんな昆虫を学園内で見かけたら、ちょっと動揺してしまいそうなサイズのものもありました。

大学祭で展示した昆虫標本

現在、生物部には58名が在籍しています。活動の一環で動物園や水族館に行くこともありますが、まずは部員みんなが学園内にいる生物を把握できるようになることが目標だと、阿久津さん。
クラブハウスの階段にいた黄緑の昆虫を手に乗せて「キリギリス系のヒメクダマキモドキですね」と瞬時に教えてくれました。

部長の手に乗るヒメクダマキモドキ
生物部の部室前にて

今後の生物部の活動は、記録に力を入れていきたいという想いがあります。
これまでの先輩たちの活動の記録は、残念ながらあまり残っていません。1984年の部誌や2017年に作成された写真集など、わずかに残る記録の中には、今はない馬場が描かれていたり、学園内で撮影された生き物や自然を見ることができたりと、興味深い情報が得られます。

先輩方が残した観察ノート

今、当たり前に見ている景色も、いつかはなくなってしまうかもしれない。そばにいる生き物たちも、何年、何十年という長い期間の記録によって、変化に気づくこともあるでしょう。

生物部OBの岩波桂二さんが、成城学園創立百周年の頃の学園の自然を記録するため に制作した「自然のアルバム」

「今年の柳祭で販売したポストカードや生物図鑑のように、日々記録を残しながら、たくさんの人に知ってもらえるような活動をしていきたい」

大学祭でポストカードを販売

阿久津さんが撮影した写真や、部員の活動はインスタグラムやXで発信しています。
観察の賜物ともいえる羽化途中のセミや、野鳥の決定的瞬間を捉えた写真が投稿されています。

学園内の「杉の森」を歩く

阿久津さんおすすめの都内の観察スポットは、葛西臨海公園の鳥類園と白金台にある国立科学博物館附属自然教育園。
どちらも木々や湿地があって、自然豊かな環境で野鳥観察ができます。

「成城だけでもたくさんの生き物が見られるので、知っておくと応用ができます。例えば先日、生物部の合宿で高尾山に行きましたが、そこで出会えた生き物と成城で見られる生物にはある程度重なる部分がありました。もちろん山にしかいない生き物もいますが、成城の自然を観察していると、東京の生き物はある程度網羅できるくらい、ここが恵まれた環境だと気づきます」

野鳥の撮影中

一緒に構内を歩きながらも、耳をすまし、じっと見つめ、小さな生き物たちに気づく阿久津さん。同じ場所にいながら、まるで違う世界を見ているような、そんな気さえしてきます。
身近な環境でも、自然や生き物の生態を知ることで、景色が広がっていくのかもしれません。
明日から、鳥のさえずり、虫の声、生き物の呼吸を意識して、ゆっくり歩いてみませんか?

成城池の島に咲くチャノキ
生物部の部室で飼育しているアカハライモリ

■成城学園生物部 公式Instagram  https://www.instagram.com/seijo_biologyclub/
■成城学園生物部 公式X 
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