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政治用語bot更新原文(2022.06.29)

ちょっと手が空いたのと、折角選挙があるということなので少し更新した。
選挙関連用語をいくつか更新前に作り、その他は書き溜め中だった政治学基本用語と、家族法関係の用語。
そしてbotへの質問で「そういえば書いてなかったな」と思い出した「司法制度改革」。その関連で「弁護士」「裁判官」「検察官」の項をたてようとしたが、思ったより書きにくかったので、先に関連語として「隣接法律専門職」や「公証人」やらを書いた。
それに加え、ちょっと前に、「女性が倒れていた時にAEDをするか?」って話でちょくちょく言及されていた「善きサマリア人の法」も追加した。

「善きサマリア人の法」については、自分で調べたところどうも日本でも事実上「善きサマリア人の法」は存在するようで、AEDの件で出ていた「善きサマリア人の法がない状況下では~」という言説は正当性がないと見ていいようだ。よくある誤解というやつかもしれん。

「諸派」
日本の国政選挙に名簿の届け出を行ったまたは立候補者が所属する、公職選挙法上の政党要件(所属国会議員5人以上または直近国政選挙での得票率2%)を満たさない「政治団体」を総称した言葉。選挙報道で用いられる。事実上無所属に近い立場となることから、無所属・諸派とまとめられることも。

「按分票」
選挙などでの投票の際に発生しうる、複数の候補のうちどれに投票した票なのかを判別することが難しい票のこと。例えば同じ苗字の候補者が複数いる場合に、苗字だけを書いて投票すると、その票は按分票になる。日本の選挙制度では、まず按分票を除外して集計し、該当候補者同士の得票数を比べ、その割合に応じて按分票を振り分ける(按分する)という対応をとっており、「按分票」という呼び名はこの仕組みに由来する。

「泡沫候補」
選挙の立候補者のうち、知名度や活動の規模、世論の注目度を鑑みて当選する可能性が限りなく低いと見なされた者のこと。単なる売名行為の場合ならまだしも、かつては選挙不正や有力候補に対する妨害に利用されてきた歴史的経緯があることから、選挙報道では無視されることが多いものの。有力候補者にはない独特の主張や活動が注目される場合もある。

「在外選挙」
在外投票とも。海外に居住している者が、居住している国から自国の選挙に投票すること。日本では出国時に転出届を出す際には市町村役場、その後であれば居住国の大使館・総領事館で申請することで在外選挙人名簿に登録された者が、郵便または大使館・総領事館に設置された投票所で投票する。


「不在者投票」
選挙期間を通して、出張や旅行、入院などによって投票所で投票できない者が行うことのできる、滞在先や病院内での投票のこと。自らが選挙資格を持つ市町村の選挙管理委員会に直接または郵便で申請し、投票用紙の送付を受け、その投票用紙を用いて投票する。尚、「学業」を理由に申請した場合は通らない場合がある。

「期日前投票」
ある選挙において、何らかの理由で投票日当日に投票できない者が行うことのできる、投票日前の投票のこと。選挙告示日から投票日前日までの間に、市町村が設ける期日前投票所(通常は役所)で、土曜祝日問わず投票することができ、その際には投票日当日に投票できないことを記した簡単な宣誓書を書く。なお、この仕組みは1998年に導入されたもので、それ以前は利用条件の厳しい「不在者投票」のみであった。

「選挙人名簿」
ある選挙において投票する資格を持つ者(選挙人)を記載した名簿のこと。選挙権を持っていても、この名簿に記載がない者には「その地域の選挙に」投票することはできない。日本では市町村毎に作成されており、住民票作成日・転入届の届出日から起算して3ヶ月以上住民基本台帳に記載されている満18歳以上の者が、毎年3・6・9・12月1日と選挙公示・告示日の前日に登録される。なお、海外居住者を記載する在外選挙人名簿も存在している。

「在外選挙」
在外投票とも。海外に居住している者が、居住している国から自国の選挙に投票すること。日本では出国時に転出届を出す際には市町村役場、その後であれば居住国の大使館・総領事館で申請することで在外選挙人名簿に登録された者が、大使館・総領事館に設置された投票所で投票する。

「有責主義/破綻主義」
離婚制度を、何を条件に離婚を認めるかによって分類したもの。夫婦の一方に姦通・虐待・遺棄・犯罪等の有責行為が認められる場合にのみ離婚できるのが「有責主義」。そういった有責行為がなくとも、単に夫婦関係が破綻しているならば離婚できるのが「破綻主義」である。かつて欧米諸国はキリスト教の影響により有責主義を採っていたが、現在は破綻主義。一方日本では近代法導入以前から破綻主義を採用している。

「協議離婚/裁判離婚」
離婚のうち、夫婦による離婚に関する様々な事柄を相談し、両者の合意によって離婚に至ったものを「協議離婚」。そうではなく、家庭裁判所での訴訟によって成立した離婚を「裁判離婚」という。但し、協議離婚でも裁判所などによる承認を必要とする仕組みを採る場合が多い。日本では約9割がそういった第三者の承認を要さない協議離婚であり、諸外国と比して極めて高い割合となっている。

「親権」
自らの子を監護・養育する権利・義務と、子の財産を管理する義務のこと。夫婦両者が共同して親権を行使する場合は共同親権といい、婚姻状態の家族はこの状態となる。一方、夫婦のどちらか一方だけが親権を行使する場合は単独親権といい、日本では離婚の際に発生し、しばしば夫婦のどちらが親権者になるかが争われる。なお、離婚後も共同親権となる離婚制度を採る国も欧米諸国を中心に増加しているが、一定の条件が付される例が多い。なお、「扶養義務」とは別概念。

「面接交渉権」
離婚などによって「親権」を失った親の、その子どもと面会したり、連絡を取り合うことで親子関係を維持する権利のこと。単なる権利ではなく、子どもの側の「親子関係を維持する権利」の実現という側面を持つ。協議離婚において明確な取り決めが行われないことが多く、トラブルになりやすい。

「養育費」
離婚などによって「親権」を失った親が、親権を持つ親に支払う、子どもの監護・養育に必要な金銭のこと。親権を持たない親であっても必ずしも「扶養義務」を負わないわけではないため、その履行として行われる。日本では離婚の大半を占める協議離婚で養育費の取り決め自体を行わない例が多く、母子世帯では約6割、父子世帯では約9割が養育費の支払いを受けていないとされる。

「扶養義務」
自分の稼ぎのみで生計を維持できない一定範囲内の親族に対して、仕送りなどの経済的援助を行う義務のこと。例えば2022年現在の民法では、ある人にとっての扶養義務者は、その曾祖父母、祖父母、両親、兄弟姉妹、配偶者、子、孫、曾孫を原則とし、これより範囲が広くなる場合もある。生活保護受給、相続、離婚などに関係して争点となりやすい。なお「親権」とは別の概念。また扶養義務はその内部で「生活保持義務」と「生活扶養義務」の二つの概念に別れる。

「同居」
ある人々が生計を共にしていること。日常語では「同じ住居に住んでいること」を指すが、法律上はその限りではなく、生計を共にしていれば別の住居に住んでいたり、世帯を分けていても同居とみなされる。また逆にいわゆる家庭内別居のように、同じ住居に住んでいても生計が別の場合は同居とみなされない。

「生活保持義務/生活扶助義務」
一定範囲内の親族に対する経済的援助を行う義務である「扶養義務」のうち、援助を受ける者に援助者と同じ生活水準を保障しなければならないという義務を「生活保持義務」といい、自らの配偶者や未成年の子どもに対する扶養義務はこれにあたる。対して、援助者の余力の範囲内の援助で足るとするものを「生活扶助義務」といい、兄弟姉妹や成人した子どもに対する義務はこちらにあたる。

「家事調停」
日本の家庭裁判所における、離婚・相続・子どもの養育などを巡って家庭・親族内で発生した法的紛争の「話し合いによる解決」の仕組み。特に離婚訴訟を行う際には、事前に一度家事調停を試みる必要がある。裁判官と家事調停委員からなる調停委員会が専門的知見に基づいて紛争当事者による話し合いの援助・促進を行い、合意による解決を目指す。海外にも調停制度は存在するが、調停に公的機関が全般的に関与するのは日本の家事調停の特色。

「公証人」
ある書面や契約、事物への公的な証明の付与や、「公正証書」(私人間の権利義務関係などを定める公文書)の作成を業務とする者のこと。文書などに法的な高い証明力を付与することで、法的紛争の発生を未然に防止する役割を持つ。その立場や具体的業務・権限は各国の司法制度(特に英米法系/大陸法系)により異なり、日本はフランスの公証人制度に範をとり、(地方)法務局に所属し公務に従事する民間人(みなし公務員)として扱われ、その業務の場である公証役場は法務省管轄の行政機関となっている一方、アメリカでは純然たる民間人であり、故に公正証書を作成する権限は持たない。


「公正証書」
公証人によって作成される、私人間の権利義務関係などを定める「公文書」のこと。公文書であるため法的な証明力が極めて高く、またそれ自体が法的効力を持つこともある。複数の私人の契約関係を定めるものや、遺言のように個人の意思表示を示すもの、公証人自らが見聞して何らかの事実についての状況を記すもの(事実実験公正証書)がある。なお、いかなる内容の契約であっても、適法な契約であれば公正証書として作成することができる。


「名望家政党」
政党の類型の一つ。財産や能力を持つ名望家(いわゆる地方の名士など有力者)の個人的繋がりによって形成される政党のこと。選挙での勝利に大衆的支持を要さない制限選挙制の下で成立し、互いに独立した政治家達の(暫定的な)協力関係という色彩が強く、またそれ故に閉鎖的であるという特徴を持つ。

「大衆政党」
政党の類型の一つ。大衆的支持を獲得する必要から組織化・巨大化した政党のこと。選挙権保有者の増加に伴い、それまでの名望家政党のように政治家個人の能力だけで当選することが難しくなった結果生じた。政治家個人の活動のみならず、政党としての政策提示や一般党員の日常的活動が重要な位置を占める。

「包括政党」
政党の類型の一つ。大衆的支持を獲得するために組織化・巨大化した大衆政党が、さらに左右両翼に渡る広範な支持を獲得するべく、穏健かつ多岐に渡る理念・政策を掲げるようになったもの。選挙での勝利のために独自性をあえて放棄して利害調整機能を重視した政党ともいえる。「福祉国家」の成立・維持を支えたが、その一方で政治の停滞を招いたとも評価される。


「社会的養護」
貧困や虐待、死別などで保護者のない子ども、若しくは保護者による養育が適切でない子どもを、公的に保護・養育することや、そういった家庭への支援のこと。里親や特別養子縁組、児童養護施設といった仕組み・取り組みの総称。現在の日本では約4万5千人が対象となっている。

「司法制度改革」
 2000年代の日本で行われた、裁判・訴訟の手続き、法曹養成の仕組みなど司法制度全般に関する大規模改革のこと。国民と司法の距離が遠く、司法サービスの行き渡りが不十分という現状認識、及びその状態では社会・経済の複雑化、新自由主義改革による規制緩和や国際化による法的紛争の増大に対処できないという問題意識の下で行われた。裁判迅速化、「法テラス」設置、司法試験改革や裁判員制度の導入はこの例。関連法令は2009年に全て施行済みとなっている。なお、改革の必要性自体は1964年の「臨時司法制度調査会」設置とそこでの議論にまで遡る。
 この改革は、訴訟コストの重さや裁判への忌避感、知識のなさ等によって、法的解決が可能なものを法的解決に委ねずに不利益を被るという事態の是正、すなわち「法治主義の貫徹」という規範的目的を持つ。しかしこの改革の目的はそれだけでなく、、先に「新自由主義改革による規制緩和や国際化による法的紛争の増大に対処できない」と書いたように、この改革は1970年代以降の国際化や経済成長の鈍化によって、国家による「規制」という形での経済・産業への介入を前提とした社会・経済構造の限界(≒福祉国家の限界)への対応という政治的目的も持つ。つまりこの改革は、政府による「事前規制」によって紛争を予防するという政策観から、政府による規制を最小限とし、発生した紛争は訴訟等によって当事者が「事後解決」するという政策観への転換でもある。


「隣接法律専門職」
弁護士の職域に包含される、または隣接する特定の職域の業務をより専門的に行う法律専門職のこと。他人からの依頼を受けて法・法律に関する事務を行う、資格を要する専門職のうち、弁護士でない者、と言い換えることもできる。隣接法律専門職の発達は日本の司法制度の特徴であり、司法書士、行政書士、弁理士、税理士、社会保険労務士、海事代理士がこれにあたる。

「法曹」
法・法律に関する業務を行う専門職。もっぱらその中でも裁判官・検察官・弁護士に限って用いるのが通例であり、法曹三者と呼称する場合もある。この言葉の原義は「法を司る官僚」であり、日本での弁護士の発達が裁判官・検察官のそれよりも遅かったことを反映し、またここから弁護士を特に在野法曹と言う場合もある。具体的な司法制度や法文化には国家による差異が大きいため、この法曹という言葉は他の言語への翻訳が難しい言葉の一つ。

「善きサマリア人の法」
災害や病気・怪我などの被害者を助けようと善意によって行われた救助行為については、その行為によって損害が発生したとしても責任を問わないもしくは軽減する、という趣旨を持った法・法律のこと。主に英米法系国家で発達したものだが、大陸法系国家においても「緊急事務管理」などで実質的に規定する。新約聖書における「善きサマリア人のたとえ」が語源。


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