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耳垢ベートーベン 【小説のアイデア】

 とてもくだらない事を思い付きました。でも、これをネタに小説を書こうとは今のところ思ってはいませんが。

 以前、マーベルのヒーロー物で映画作品になった「デアデビル」というのがありました。主人公は失明しているのですが、その代わりに音にとても敏感で目が見えない事がハンデにならず逆に超能力になります。人の感覚のうちどれかがダメになると他がそれを補おうとして敏感になる事があると言われます。その極端な例でしょう。

 大作曲家のベートーヴェンは若いうちに難聴になり40代で全聾になってしまったにも関わらず作曲を続けられました。これももしかすると障害がその能力を拡張したのでしょうか?

 話は変わりますが、私が会社勤めしていた頃(ずっと前)、一緒にやっていた人に起きた事です。その人は徐々に音が聞こえ難くなってきていたので、ある時決心して医者に行きました。有給休暇を取ってです。そしたらビックリするような原因が判明しました。なんと・・・

 耳垢が耳の中に大量に溜まっていたのでした。お医者さんはそれを発見し、そして耳垢を柔らかくする薬剤を注入し、ピンセットを使ってやっとの思いでそれを取り出す事に成功しました。その大きさたるや、なんと、なんと、パチンコ玉ほどもあったのです。ワオ!

 音が聞こえない原因が耳垢。それも超大量の。そんな事が現実にあるとは!

 というわけで、話は元に戻ります・・・・(ネタに)


 あるところに、いつも耳から耳垢がポロポロ出る少年がいました。少年は同級生からからかわれていました。少年の両親はその事をたいそう心配してお医者さんに連れて行ってくれましたが、どうにもなりません。なぜなら少年のその体質はお父さんのお父さん、つまりおじいちゃん譲りだったからです。病気であればお医者さんは治すことができますが、体質であれば治せません。

 ある時、少年はある事に気付きます。耳垢が溜まってくるとなぜか音に敏感になるのです。もちろん小さめに聞こえてくる音に集中しなければなりませんが、それでも音の微妙な違いがとても良くわかるのです。ある日、友達の家に行き、その家でどこからか音楽が聞こえてくるのを聞きました。友達にあの音楽は何かと聞きますと、あれはおじいちゃんがロックというのを聞いているのだと答えます。そして友達のおじいちゃんの部屋のドアをノックしますと、入って良いよと招き入れてくれました。流れている曲は初めて聴く曲でした。それをよーく聴いてみますとわからない言葉でこう言っているとわかりました。「ローロバ・ビーゾウヴェン」と何度も繰り返しているように聞こえます。おじいちゃんは言います。これはビートーズというグループの曲だよと。少年はその曲が一変に気に入ってしまいました。

 音楽の授業で先生がこれからある有名な曲をレコードで聴きますと言いました。曲が流れはじめました。そして終わりましたが、少年は何も言ってないなと思いました。歌詞が無かったからです。少年はこの時耳垢を掃除したばかりでしたからよく聞こえましたが、感覚は敏感ではありません。先生はこの曲を作ったのはベートーヴェンという人だと言いました。少年はふーん、と思いました。その後、先生はこれはビートルズの曲ですと言ってレコードをかけました。少年はふーんと思いました。

 そうして少年は耳垢が溜まっている時と溜まっていない時とで一つの物事を二重に認識するようになり、それが二重の人格すら形成するようになっていきました。少年は成長してロック歌手になります。耳垢が溜まっている時の状態では歌手ですが、耳垢が無い時には引きこもりです。

 少年はロック歌手でいたいのでできるだけ耳垢を掃除しないのですが、体質であまり溜めすぎると耳垢は耳から勝手にポロリと落ちてしまいます。ある時、ステージで歌っていて耳垢が落ちてしまう事がありました。落ちた瞬間から音程もリズムもわからなくなり歌はぼろぼろになってその日はステージの途中でコンサートが中止になってしまいました。それでもファンは許しました。時として天才と呼ばれる者は気まぐれです。少年もファンからすればある種の天才であり、気まぐれが許される存在になっていたのです。

 耳垢が溜まっていると少年は、特に作曲の才能を発揮しました。天才作曲家とも呼ばれました。少年は、天才的な感覚を持っていられるのは耳垢が溜まっているからだとは誰にも言いませんでした。そんな事、誰にも言えません。隠し通しました。

 しかし、ある時、その秘密を知る者が現れました。ライバルロック歌手のAです。Aは友人の医者に頼んで耳垢が落ちる薬をもらいました。それを少年を騙して使わせました。「この薬をこうして耳に垂らすとだな、すげーんだぜ。トリップするんだ。作曲もステージもすげー事になっちまう。おまえと俺の仲だからよ、おまえにもコレ、わけてやるよ。誰にも言うんじゃねえぞ」それを信じた少年はその薬をステージ前に耳に差しました。ステージが始まって少し経つと薬は効き始め、少年の耳垢はステージの床に落ちてしまいました。その日のステージはほんの10分で中止となりました。少年は巨額の賠償費用を支払う羽目になりました。

 Aは同情しているふうに見せかけて、また別の薬を少年に贈りました。それは耳垢が影永久に溜まらなくなる薬でした。少年はまた騙されてその薬を耳に差してしまい、人気者には永久に戻る事ができなくなってしまったのです。

 耳垢の溜まらない普通の人になった少年が街をぶらぶら歩いていると、ビートーズのローロバ・ビーゾウベンがどこかから流れてきました。そちらの方は歩いて行くとある喫茶店でした。喫茶店の中にはあの時のおじいちゃんが座っていてようやくここまで来られたなと言います。

 (ここで何かあって、少年の中で二つに別れて存在していたものがやっと一つになる・・・)

 つづ・・・かない

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