ジュニア選手のギア比制限について【後編】
昨日書いた、ジュニア選手のギア比制限【前編】の続きを書いていきたいと思います。少し長くなりますが、よろしければお付き合いください。
ギア比制限がされていた理由
なぜこのギア比制限が設定されていたかというと、筋繊維や骨の発達が充分ではないジュニア期に、重いギアを踏むと身体に大きな負荷が掛かってしまうため、その時だけでなく将来にわたって怪我のリスクが大きくなると言われてきました。
ところが、その説が信じるに足りるだけのエビデンス無し!とのことで撤廃されたという状況です。適当なことを言ってた人に振り回されて皆さん大変ですね(笑)
これに関しては正しい正しくない以前に、あまり意味がない理由だなと思っていました。ロードレースは平坦路だけでなく、山岳コースのような登りをこなす訳ですから、そこで規定上限のギアは踏める訳で、そうなると全く想定とは違うバカ程重いギアが踏めてしまいます。
そもそもロードレースで上記の理由でギア比を規制するということがナンセンスだったと考えています。
理由が正しくなければ守らなくて良い?
一方、そのような理由でのギア比制限はナンセンスだと言いましたが、私はこれを守るべきだと思い息子にも守らせてきました。
高校生になって高体連に所属すると、1年生の間はU17の区分にも関わらず、ジュニア選手と同じギアを使うことが許されています。
それでも1年生の間はロードレースに限ってですが、ギア比は最後までU17のものを使いました。理由は、将来の伸び代を残すために必要なことだと考えていたからです。
半強制的に技術を伸ばすため
少し話が飛躍してしまいますが、パラサイクリングの選手を私はとても尊敬しています。選手により様々な障害を負っていらっしゃいますが、健常者の選手も顔負けのスピードで走ります。なぜそんなことができるのか?
人間は、足りない機能があればその他の部分でそれを補おうとする力が備わっているからだと私は考えています。片脚を失っている選手でも、反対側の脚だけで充分にその機能を補うほどに機能が発達しています。健常者がいくら頑張っても、この域に達するのは難しいと思います。
それとこれを比較するのは不適切だと言われるかも知れませんが、重いギアを使わなければ、嫌でも回転の技術でスピードを補う必要が出てきます。
重いギアを踏めないようにすることで、より大きなスキル向上が望めるのでは?と考え、ギア比制限を頑なに守ってきました。
結果的に、現在息子が回転技術の要素が非常に重要になるトラック競技に強みがあるのは、この時の効果もあるのではないかと考えています。
安全性の観点から
それに加えてもう1点、最高速度の制限の意味合いも含めてギア比制限は必要だと思っています。
昨今のディスクブレーキ化、タイヤ幅が広くなってきている流れや、エアロ効果の研究による機材の進化等で、下りの速度が昔と比較して間違いなく速くなっていると思います。
昔のトップ選手は、「いや、そんなことはない!俺達の技術はすごかったし、今の選手の下りより速かった!」と言ったりしていますが、そんなことはないです(笑)
もっと言えば、彼らが当時に同じ機材を使っていれば、きっと今くらいの速度では下っていたと思いますので、その点勘違いしないようにお願い致します。
そんな中、ジュニア選手は怖い者知らずでもありますし、とんでもないスピードで突っ込むような選手も少なくありません。親からすると、これが一番大きな問題かも知れないですね。
カーブへの進入速度はブレーキングのタイミングが一番影響を及ぼしますので、これで全て解消される訳ではないですが、直線の下りでの速度は間違いなく下げることができると思っていますし、安全性を考えることも大事な要素の1つだと考えています。
以上のような点からも、私はジュニア期のギア比制限は、今後もあった方が選手の将来のためには良いのではないかという印象を持っています。
安全面での問題点
ただ、大人の選手と混走で走るような場合は、この規制は逆にリスクが高くなると思っています。
前述の通り、下りの直線での速度はギア比に依存するので、大人が重いギアをドンドン踏めば、子供は同じように走るために必死で軽いギアを鬼のようなスピードで回します。
選手にもよりますが、技術の足りていないジュニア選手が70㎞/h以上の速度で自分の隣で身体をバタつかせながら高速回転させている状況を想像してみてください。超ハイリスクだと思いませんか?
そういった点でも、大人と混走の場合はギア比には拘らない方が両者の安全のためだと思いますが、何よりギア比の違う選手のいるレースにはあまり参加させないことも大事かなと今となっては思います。
機材面での問題点
U15世代であれば、フロントギア46×リアトップ16という設定が多いと思います。復習です(笑)計算式は以下の通りですね。
※46÷16×2105㎜(25cタイヤ周長)=約6052㎜(規定は6100㎜)
はい。こんなトップギアのスプロケットは売ってませんよね(笑)なので、SHIMANO製であればアルテグラのみ販売されているジュニア用スプロケット14-28をセットして、トップ側2枚(14・15)に変速機がいかないように調整をする(トップ2枚を物理的に使えないようにする)ということがされています。
日本でよく使われているSHIMANO製を使ってもこの対応しかできない訳ですから、近くにプロショップがない地方の選手なんかは、どうして良いか分からない人も多かったと思いますし、その方法も説明されていません。
レース前日の監督会議で、「ギア比制限を上記の方法で調整しているのですが、その方法で構いませんか?」という質問に対して、「はい、そのような方法を特別に認めます」というやり取りがよくされますが、特別というよりこれしか無理やん(笑)といつも思っていました。
さらに12速化が進んだ今では、14トップもなくなったので、もはやどうやって対応すんねん(笑)という状況です。フロントギアをインナーのシングルで運用する以外、方法がなくなっているというのも事実ですね。
U15でこんだけ大変なんやから、U13なんてこんなものじゃなく・・・。
将来を見据えて(まとめ)
そんな大変なギア比制限ですが、やるからにはきちんと意味を持って取り組むのが大事だと思います。ギア比制限を無視して走る選手に負けて腹が立つ!悔しい!という気持ちは充分に分かりますし、同じような思いをしたこともあります。
子供よりも親が思っていることの方が多いですね(笑)しかし、大事なのは小学生や中学生で結果を出すことではなく、大学生や社会人になって本当に強くなる選手を育成するんだという強い気持ちがあれば、周りのことなんてどうでも良くなると思います。
また後日書こうとは思っていますが、高校生での成績も実はあまり拘らない方が良いと思っているくらいです。ただ、大学へ競技で進学するためには多少は結果を出さないといけないので、その匙加減は難しいですよね。
いくら高校生で強くても、ツールドフランスやトラック競技でオリンピックに行くことを考えると、まだまだ次元の違うレベルです。
将来に大きな目標を掲げているのであれば、今の結果に拘らないということは、親子でしかできないアプローチだと思っていますし、多くのことをこの考えでやってきたつもりです。
少し長くなってしまいましたが、私がギア比制限に思うことを長々と書いてきましたが、皆さんはどのようにお考えでしょうか?コメントでご意見頂けると嬉しいです。
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