【新月の夜によむ】薄暗い天井
【作品形式】朗読・1人読み
【男性:女性:不問】0:0:1
【登場人物】読み手
【文字数】297字
【目安時間】約3分
深夜
ふと目が覚めた
布団の中で
仰向けになっている私は
静寂という音に囲まれていた
暗がりの中
自分が空間にとけていっているのではないか
そんな感覚に陥っていた
しばらくして
呼吸や鼓動の存在を感じ
自分の輪郭がうっすらと浮かび上がる
まだ生きている
ただ
もうすぐ終わる
光(ひかり)
香(かおり)
音(おと)
境(さかい)
想(おもい)
それらが消えて
失われ
世界にとけていく
こわいな
自分が自分でなくなる
いや
いなくなるんだ
生まれてきた時
周りに人がいて
一人ではなかった
家族・友人・パートナー・子ども
多くの交友関係があり
忙殺されていた時もあった
今はどうだろう
もう誰もいない
たった独りだ
ナンデワタシハ
コンナサイゴヲ
ムカエタノカ
薄暗い
天井から
己見て
最期に何を
想いましたか