行動経済学で考える幸福論 人は”2.25倍”不幸になりやすい!?
今日は幸せについて考えていきます。
ちょっとだけ、ワークにお付き合いいただきたいと思います。
ワークといっても3つの質問に頭の中で答えていただくだけです。
Q1.最近嬉しかったことを2つ思い出してください。
Q2.最近悲しかったことを2つ思い出してください。
Q3.今までの人生で「嬉しかったこと」と「悲しかったこと」の数の比は何対何ですか?
答えていただけたら下へ進んでください。
もしまだであれば、次には進まず、いったん中断し、スマホやPCの画面から目を離したり、目を閉じたりして考えて欲しいと思います。
こんな感じではありませんでしたか?
ちょっと意地悪な出題をしてしまいました。
本当は、嬉しかったことと、悲しかったことの思い出しやすさを体感していただきたかったのです。
嬉しかったこと:思い出しにくい
悲しかったこと:思い出しやすい
こんな感じではありませんでしたか?
これは、実は当然の結果なのです。
不幸は強く印象に残る
プロスペクト理論という行動経済学の理論をご存じでしょうか?
簡単に言えば、人は「得」よりも「損」を重視する傾向にあるという理論です。どれくらい重視するかというと、損の方が2.25倍重視されると言われています。
くじA:100%の確率で4,000円をもらえる
くじB:80%の確率で5,000円をもらえるが、20%の確率でハズレ(0円)
くじC:100%の確率で4,000円の罰金を支払う
くじD:80%の確率で5,000円の罰金を支払うが、20%の確率で罰金なし
ABから一つ選ぶときに、人はAを選びやすいです。それは、確実にもらいたいからです。
CDから一つ選ぶときに、人はDを選びやすいです。それは、罰金なしになる可能性にかけたいからです。
なぜ、もらえるときは確実なAを選び、払うときはギャンブル的なDを選ぶのでしょうか?
罰金4000-5000円は損失ですから、プロスペクト理論に従えば、額面通りに考えることができません。2.25倍払うかのような金額の多さとして感じます。
そうすると、罰金が1万円強に感じてしまいます。そんな大金を確実に払いたいとは思えません。少しだけ金額が上がってもいいから、罰金なしになる可能性もある選択肢を選ぶのです。これを損失回避といいます。
ということで、当然、人生において、得したと思う局面と損したと思う局面では重み付けが異なってきます。
損したと思う局面、恨み、怒り、悲しみというのは、得したと思う局面、嬉しかった局面よりも記憶に残りやすいのです。
「幸」:「不幸」 = 1:2.25 ≒ 3:7
Q3.今までの人生で「嬉しかったこと」と「悲しかったこと」の比は何対何ですか?の解答はどうだったでしょうか?
さて、これはプロスペクト理論をやや曲解して従えば、
「幸」:「不幸」 = 1:2.25 ≒ 3:7
となります。
つまり、3:7で不幸の方が記憶に残りやすいのです。
皆さんの答えと比較していかがでしたでしょうか?
この3:7という数字はあくまで、学者が統計をとった平均です。人によってこのバランスが異なります。
ここで注目しておきたいのは、人間はデフォルトで3:7で不幸の方が記憶に残りやすいということです。ですから、さらに不幸になりやすい考え方をしてしまうのはやめた方がいいと言えます。
つまり、幸せの閾値が低い人(ハードルが低い人)は幸せになりやすくて、幸せの閾値が高い人(ハードルが高い人)は不幸になりやすいと思うのです。
例えば年収1000万円は欲しくて、高級住宅街に住み、高級車に乗りたいなど、人生に対する要求が高い人は不幸になりやすいことを意味します。
このような優越性の追求は、成功への原動力である反面、不幸になりやすい(幸せを感じにくい)という負の側面も併せ持っているということを肝に銘じておかねばなりません。
どうしたらいいのか
人間は後悔しやすい生き物であるし、悲しみのほうがダメージが大きい生き物です。なんとも生きにくい性質です。
このプログラムされた性質も、もともとは何かの役に立っていたのだと思います。
狩猟をしているときに獲物を逃した辛さを忘れなかった人は工夫を凝らして生き延びたのかもしれませんし、耕作をしていて作物をダメにしてしまった辛さを忘れなかった人は、(工夫をするから)結果的に収穫量が多かったのかもしれません。
そう考えると、不幸や損を重視してしまうというのも悪い性質ではありません。後悔してふさぎ込んでしまうのは良くありませんが、内省し、教訓化し、次に向けていくことはいいことだと思います。
先ほど紹介したのは「不幸と向き合え」というアドバイスであり、強者の理論です。不幸を抱かないで済む方法、うまくあしらう方法はないのでしょうか?
「不幸は印象に残りやすい」という人間の性質を知っているだけで救われることがあるかもしれません。実は、後悔しているときに「そうか。これはプロスペクト理論だな。」と思うだけで少し楽になれます。
これは、名詞化(名詞を用いることで、現実から逃避したり、問題に直面するのを避けることができる)に近い発想です。悪いのはプロスペクト理論のせいだと押し付けてしまえば心が楽になることができるのです。
他には、優越性の追求は、成功への原動力である反面、不幸になりやすいということを理解しておくことが重要です。あれもしたい、これもしたいという欲求は捨てた方が幸せになれます。
欲しいものではなくて持っているものに目を向けるとか、できないことではなくてできることに目を向けるとか、そういった優越性を追求しすぎない姿勢が幸福度を上げるために重要なのかもしれません。
まとめ
プロスペクト理論:人は「得」よりも「損」を2.25倍重視する傾向にある
だから、不幸は印象に残りやすい
不幸に目を向けて、内省し、教訓化し、次に向けていくことが大切
後悔しているとき、「これはプロスペクト理論だな」と思うだけで少し楽になれる
優越性を追求しすぎない姿勢が幸福度を上げる
このnoteを通して、誰かが少しでも生きやすくなれば嬉しいです。