「新しい自営業」という生き方について。
「人生100年時代」の新しい生き方・働き方をテーマに、「ライフシフト」という言葉をキーワードに書いていこうと思っているわけですが、このテーマを考えるにあたっての基本的なフレームがいくつかあると思います。
そのひとつが「雇われない働き方」。
書籍『ライフシフト』が提示した一番大きなメッセージは、人生が100年という長いタイムスケールになっていくと、これまでの「学習→仕事→引退」という「3ステージ型」の生き方から、多くの人が「マルチステージ型」の生き方に変わっていくのではないか?という問い掛けだったと思います。
この「マルチステージ型ライフデザイン」の定義やバリエーションについては、このnoteでもいろいろな角度から繰り返し考えていきたいと思いますが、まずは、「働き方」や「会社との関係」を決める最も重要なファクターである「雇われる働き方」と「雇われない働き方」について、考えてみたいと思います。
“Life Longer, Work Longer”(長く生き、長く働く)
「人生が長くなることによって、働く期間も長くなる」ということは、比較的多くの方が、望むか望まないかにかかわらず、「まあ、そうなるだろうな〜」と想像することができるのではないかと思います。
それは、まず何といっても経済的な不安から来る予感でしょう。
定年まで勤め上げた後は「悠々自適の年金生活」などという幻想を信じている人は、もはやほとんどいないと思いますが、むしろ、年金制度の破綻による経済的な困窮の不安は、多くの人が抱えていると思います。
2019年に話題になった「老後2,000万円」問題もまだ記憶に新しいところですね。
政府も高齢者にはもっと働いて欲しいということで、あの手この手で高齢者雇用の促進策を提示しています。
今の日本は、構造的・長期的な「人手不足」が叫ばれていて、この観点からも、「高齢者には、もっと働いてもらいたい」というニーズが、様々なセクターから出てきています。
こうしたマクロな社会・経済レイヤーからの要求だけではなく、一人ひとりの個人の生き方という面でも、「働き続ける」ことの効用はたくさん提案されています。
高齢化する社会での健康寿命に関する提言を数多く行っている和田秀樹さんを引き合いに出すまでもなく、働くことを通じて人や社会と関わり続けることが健康寿命を延ばし、ボケ防止につながることもまた、多くの人が漠然とは認識していることではないでしょうか?
そうした様々な要因から、「働く期間が長くなる」ということについては、すでに一定の認識が広がっているように思います。
しかし、ここで確認しておく必要があると思うのは、「働く」ということの選択肢の幅とバリエーションです。
「働く」ということの意味合いを「会社に勤めて(雇われる働き方)、給料をもらう」といった狭い定義で捉えていると、「長く働く」ことは、多くの人にとって「苦役」と感じられるのではないでしょうか?
私が代表を務めるソーシャル・ベンチャー「ライフシフト・ジャパン」が開催しているワークショップ「LIFE SHIFT JOURNEY」に参加されている会社員の皆さんに「何歳くらいまで働きたいとお考えですか?」と聞くと、ほとんどの方が「今の会社で働き続けるということなら、出来るだけ早く、働くことを止めたい」と返答されます。
そこで、聞き方を少し変えて、「今の会社に勤めるのではなく、皆さんが好きなことや得意なことを活かして社会と関わり、誰かの役に立つような働き方ができるとしたら、どうですか?」と聞き直すと、これまた、ほとんどの人が「そういう働き方ができるなら、元気なうちはいつまでも働きたい」と答えられます。
ちょっと質問の仕方を変えるだけで、これほどリアクションが変わるということは、まだまだ「働く」ということの意味合いを多面的に捉えることが出来ている人が少ないという事実を表していると思います。
私たちは、「人生100年時代」を生きていく上で、「働く」ということの意味合いをアップデートして、より幅広い柔軟な働き方を“自分事”として考えることが必要だと思うのです。
日本では2021年にいわゆる「70歳就労法」が施行されています。
現在のところはまだ企業に対する「努力義務」ということで、その対応が本格的に議論されるのは、これからというところですが、この法律には、従来の高齢者雇用促進策とは大きく違う要素が盛り込まれています。
それは、従来の「雇用」だけではなく、「業務委託」や「社会貢献活動」といった、「雇われない働き方」という選択肢が入ってきたということです。
つまり、国(厚生労働省)もこれまでの「企業による雇用の確保一辺倒」のスタンスから、「雇われない働き方」を視野に入れてきたということです。
こうした背景から私は、これからの「人生100年時代」においては、働く人は、最終的には「雇われる働き方」から「雇われない働き方」にシフトしていくのではないかと予想しています。
より端的に言えば、「働く人は、最後には全員が自営業者になる」のではないかという将来イメージを持っているということです。
そして、そうした「雇われない働き方」を選択した人たちを「新しい自営業」という緩やかなグループとしてイメージしています。
「新しい自営業」の中には、フリーランスや個人事業主として働く人、“ひとり起業”して“ひとり社長”として働く人、部分的に企業に勤めながらもパラレルワークを実践する人、さまざまなスモールビジネスや“生業(なりわい)”を組み合わせて活動する人など、多様な「働き方」が出てくると思います。
私は、そうした「新しい自営業」にチャレンジする人が増えていくことで、この日本という国は、少なくても今よりもちょっと元気になるのではないかと思っているのです。
「新しい自営業」については、これからさらに様々な切り口から考えていきます。
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