バイバイ僕の軽トラ 袖山誠一
もう夜空の上まで来たぞ。ここからはあんなに小さく豆こい家なんだ。オイラの家は、主人Seiichiと二人で暮らしてたのさ。
だってオイラは軽トラなんだ、でもう走れないのさ、廃車になって、そう死んでしまったのだ、だから別れる前にご主人様に挨拶してるんだ、振りかえってバックランプを力一杯踏み赤いランプの点滅を送っているのだ。見えるかい?
「見えるよ、よく見えるさKei!」
僕は君をKeiと名づけ家族のように親しめを込めて呼んでいた。
でもビックリだな、あんなに頑張り屋の君が逝ってしまうとは。事故起こしても仕方がない茨城空港までの全速力で走破し問題なく帰ったじゃないか。それなのに…さ。
事の起こりを話すと、僕の大切な友人Makoから「明日の早朝に神戸に行くのだが、茨城空港まで送って欲しい。そこから神戸空港に飛行機で行くのだが」と頼まれた。もちろん快くOKしKeiにタノムよと言いボデーイを軽く叩く、二人を乗せKeiは全速力。空港には無事到着だ。
「じゃー頑張って」と見送り帰ろうとする。でも同乗者がまだ来ていない、二人で行くそうだが、フライト十五分前なのに。スマホでのやりとりでは難しそう。すると突然「Seiichi君は今日、僕と神戸まで行くことができるかい?」と聞いてきた。勿論即答で「OKだよ」。するとホッとした様子で「ではそうしよう」と早速友人は僕と二人でスカイマークに乗り込む。
僕にとって、神戸は憧れの場所だ。まあ例えは悪いがシネマによく出てくる美しい夢の避暑地だ。だからラッキーってことだ。あっと言う間に神戸空港に着いた。空港上空を旋回してると「淡路島も見えるじゃないか、驚きだ」。とにかく一日、憧れの神戸を十分楽しめ、短い夢のような1日も無事終わった。
だけどKeiは大変だった。相変わらずの乱暴な僕の運転に耐えよく走ってくれ無事到着した。
翌日はオフなので、のんびりと僕とKeiは銀行で昨日の経費を下ろしに行く。すると途中でエンストしてしまった。セルモーターを再度回すが応答なしで寿命が尽きた。
愕然として「ついに、俺はお前を酷使して『ドンキホーテーの愛馬ロシナンテよろしく酷使しすぎて廃車にしてしまった』ということか、深い後悔の思いに推し潰されそうだ。
でもKeiは代わりに可愛い軽の車、女の子Mocoを連れてきてくれた。リボンをつけた髪が風に揺れて「よろしくね」。その声と微笑みに虜になってしまった。
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