企業研究 (vol.1-1): amazon
世界中の誰もが知る大企業、amazon。
現在の時価総額は4/14/2020現在$1,076,116,837,000で米国内ではマイクロソフト、アップルに次いで第3位。
amazonの創業者は2018年のフォーブスによる世界長者番付で初めて首位にたったジェフ・ベゾス。
オンライン書店としてスタートしたamazonだが現在ではいろいろな事業を拡大しており、「ものすごく規模の大きい何でも屋」みたいになっている。
今回の記事では元マイクロソフト社長の成毛眞さん著の「世界最先端の戦略がわかるーamazon」を参考にこの会社が現在どのような事業を進めているのかを見ていく。
*ここで話す事業は主にアメリカ国内で展開されているものであり、一部まだ日本では開始されていないサービスもあることをご了承願いたい。
1. オンライン通販事業
我々にとって一番身近なamazonのサービスは間違いなくこれだろう。
ネット上の本屋としてビジネスをスタートしたが現在では家電、食品、服などありとあらゆる種類の商品を取り扱っている。
言葉通り、利用者はアマゾンのサイトひとつであらゆるものを買えたり、サービスを受けられる。
とにかく品揃えが大量で、安い。
アメリカのアマゾンの取り扱い商品は1,220万品目以上あると言われている。
このような桁外れな品揃えは別の事業である「マーケットプレイス」というサービスのおかげで実現している。
2. マーケットプレイス事業
マーケットプレイスとは、外部事業者がamazonの通販サイトに出品ができるサービスである。
サイト内で扱われている商品のうち、外部事業者による商品出荷数は2017年に50%を越した。
つまりamazonが直売している商品より、外部事業者の出品している商品の方が多くなったということだ。
ではなぜ多くの外部事業者はマーケットプレイスを利用するのだろうか。
それはamazonがマーケットプレイス出品業者に提供するフルフィルメント・バイ・アマゾン (FBA) が理由だ。
フルフィルメント・バイ・アマゾン(FBA)とは
FBAを利用すると、どの企業も、amazonのインフラを活用できるようになる。
なんと商品の保管から注文処理、出荷、決済、配送、返品対応まで全部amazonが代わりにやってくれるのだ。
店舗も自社サイトもなくても、amazonのインフラを使うことでビジネスができるという訳だ。
FBAの中でも特に驚きなのが「マルチチャネル」と呼ばれるサービス。
なんと業者が別のサイト(楽天など)で商品を売った場合でも、amazonが出荷を代行してくれる。
FBAを使えば業者は商品をamazonの倉庫に送るだけで複数のサイトに出品ができるのだ。
多くの企業(特に中小企業)がFBAの便利すぎるサービスを活用しながらビジネスをしている。
さらにamazonは「Amazon Launchpad」というスタートアップ企業の商品に対して、アドバイスをするサービスまで提供している。
スタートアップ企業側は早い段階からamazonという巨大なネットワークを活用できるマーケティング的利点があり、amazon側もスタートタップ商品が早く売れることによって発生する長期的な機会ロスを防ぐことが可能になる。
他にもamazonによる面白いサービスがある。
その一つがバーチャルダッシュ。
洗剤やトイレットペーパー、お茶などの低関与商品(日常的に購入するが、特に思い入れがあるわけではない。いつも買っている種類がなければ他のものを選ぶような商品)をバーチャル上のボタンをクリックするだけで購入を完了させるというもの。
特にこだわりはない、でも種類が多くて比較するのめんどくさい。
そんな消費者にぴったりなサービスだ。
amazonにとってもこのサービスで広告費を大幅に抑えることができる。
さらには他のメーカーの付け入る隙を無くし、自社の商品を買い続けさせる可能性も高められるのだから、まさに画期的なアイデアだ。
Amazon Dash Replenishment (ADRS) という似たようなサービスもある。
ADRSに対応している商品を購入するとなんと、消耗品が少なくなったタイミングでamazonに自動的に注文してくれる。
AIの技術が進めば、消耗品だけでなくコーヒーメーカーなどの嗜好品などの分野まで扱えるようになるかもしれない。
少し逸れたが、このように様々なサービスを通して、amazonは大量の品揃えを実現させている。
3. クラウドサービス事業
実はアマゾンの儲けのほとんどはよく知られている小売り事業ではなくアマゾンウェブサービス(AWS)と呼ばれるクラウドサービスによって生みだされている。
amazonはクラウドサービス事業ではIT専業のマイクロソフトやネット専業のグーグルを凌ぎ、なんと世界シェアの3割以上を握っている。
AWSとはamazonが自社のサイト運営のために開発したシステムを、他者が利用できるクラウドサービスとして外販しはじめたもの。
これまでデータのシステム不具合などによる信用問題の発生を防ぐため大企業はそれぞれのビジネスを運営するために独自のサーバーを持つのが普通だった。
この自社オリジナルのサーバーを作るのには数年という長い時間と莫大な資金を要するのだが、AWSは巨大なサーバーを用意し、その中のシステムをオンラインであらゆる企業に提供しはじめた。
つまり企業はAWSのクラウドサービスを利用することで、わざわざオリジナルのサーバーを置く必要がなくなり、コストも時間も大幅に削減できるようになったのだ。
このAWSは現在多くの企業に利用されている。
理由は小売り事業と同様、「使えるサービスが豊富に揃っているのに安い」からである。
サーバーを大量に調達し、コストを下げ、新たな顧客を呼ぶというアマゾンの得意な「規模のメリット」がここでも発揮されている。
4. サブスクリプション事業
amazon primeの会員である人は多いだろう。
アメリカでは全世帯の68%が会員であると言われている。
amazonは会費をとって、メンバーのみが得られる特典を提供している。
この特典というのがとにかくすごく、会員はこれでもかというほどのサービスを受けることができる。
prime会員の特典
・当日配送
・お届け日時指定便
・プライムナウ(商品が2時間以内で届く。一部エリアのみ)
・映画、TV、アニメが見放題
・Kindle数百冊無料
・Kindle fireなどタブレット端末の割引
・アマゾンパントリー(食品や日用品の発注・有料)
・アマゾンファミリー(おむつなどの割引)
・プライムフォト(写真を容量無制限で保存)
・先行タイムセール(タイムセール品を一般より30分早く注文可能)
etc.
ざっと並べただけでもこれだけある。
これだけのサービスを受けられるとなるといくら年会費が値上がりしたところで脱会する人は少ないだろう。
それどころか、逆に増える可能性すら感じる。
(事実、アメリカでは値上がりした年も会員数は増え続けた。)
5. その他事業
ここまでに挙げた、オンライン通販事業、マーケットプレイス事業、AWS事業、そしてサブスクリプション事業の4つが現状ではamazonの主要事業と言える。
しかし、amazonは他にもいろいろな事業をしている。
ここでいくつか紹介する。
アパレル事業
これは小売り事業の一部だがamazonのファッション分野はかなりのスピードで成長しており、実はamazonは米国で最も衣料品を売っている企業である。
amazonの取り扱いブランドにはカルバン・クラインやケイトスペードなど有名ブランドがずらりと並んでいる。
また小売りだけではなく、amazon独自のファッションブランドも複数立ち上げている。
金融事業
アマゾンレンディングと呼ばれるサービスでamazonはマーケットプレイスの出品業者に資金の貸付も行なっている。
また「アマゾンマスターカードゴールド」や「アマゾンマスターカードクラシック」などクレジットカードも発行している。
法律の問題などがあるため今すぐとはいかないが将来的には銀行業にも参入するのではと言われている。
実店舗事業
ここ数年でamazonはネットだけでなくテクノロジーを生かしたリアル店舗も展開しはじめている。
サイトで評価が4以上の本のみを扱う「Amazon Books」などがあるが、代表的なのはなんと言っても「Amazon Go」だろう。
これは簡単に言えば、レジのないコンビニである。
店内のセンサーやカメラを駆使して、客が手に取ったり棚に戻したりした商品と数を人工知能が認識し、ネットを経由してアプリと連動。ゲートを出たらamazonのアカウントから利用額だけが自動的に引き落とされる。
客は、店内に入り、欲しいものを手に取り、そのまま退店するだけだ。
ここまでamazonのさまざまな事業を紹介してきたが、amazonを語る上で欠かせないものがもう一つある。
それは「物流」である。
配送力で物流を制す
いろんな事業に手を出していてもはやなんの会社かわからなくなりそうだが創業者のジェフ・ベゾスは、「我々はlogistics企業である」と言っている。
Logisticsとは日本語で兵站を意味する。
兵站とは簡単にいうと、必要な軍需品などを前線に送るためのルートを確保すること、つまり物流網を持つことである。
amazonはこの物流網を充実させるための投資に躊躇しない。
ショッピングセンター内などに宅配ロッカーを作り、そこで注文を受け取れるようにした「アマゾンロッカー」、Uberと似たような配達システムを採用した「アマゾンフレックス」、さらにはドローンを駆使した空から配達する「アマゾンワン」など。
こうした長年の投資によって築かれた物流網がamazonの当日・翌日配達などの他の会社にはない素早いサービスを支えているのだ。
もはや我々はamazonなしでは生きていけないかもしれない。
かなりボリュームのある記事になったが、これらはamazonのたった一部でしかない。
amazonは自社の巨大な物流網とテクノロジーを駆使して次々と新しい事業を展開しており、「帝国」を築きつつある。
筆者の成毛眞さんの「この一社を知ることは、最新のビジネス感覚を身に付けることと同じ」という言葉は全く誇張などではなく真実と言えるだろう。
以降のamazonに関する記事では創業者のジェフ・ベゾスとamazonの物流についてフォーカスして記事を書きたいと思う。