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ひとひら

桜の花のやさしい色合いが、淡い水色の空に似合う美しい季節が来た。

1週間ほど前から、高校生の妹が広島へ行っていたのだけど、昨日ようやく帰ってきて、私たち家族はとても喜んでいる。彼女は春から高校3年生になるのだけど、絵を描くことが好きなので、そちらの方へ進むことを目標にし、デッサンの練習をしに隣の県へ出掛けていたのだ。

私はごく普通に勉強をして大学生になったので、彼女がこれから経験するであろう苦労やよろこびを完全には理解しかねるだろう。けれど味方でいようと思う。私は(自分で言っちゃう)、とても妹たちのことが好きなのだ。

今日の午後、母と3姉妹で出かけてきた。うららかなお天気で桜の花があちこちに咲いているので、春の曲を聴こうと言って大きな音で音楽を流しながら車で出かけた。

桜や春を歌った曲が私のiPod nanoにはたくさん入っていて、車の中で音楽を聴きながら、日本人は本当に桜が好きだなあという話をした。日本の国花も桜だし、名前としてもつけられているくらいだ(私は「カードキャプターさくら」という作品がとても好きだけど、主人公の女の子の名前はさくらだし、私の実際の知り合いにもさくらの名を持つ女の子が何人もいる)。

高校生のとき、古典の授業を通して知った和歌の中にも桜を詠んだものがいくつもあって、今でも好きで覚えているものが3つほどある。その中のひとつは、本居宣長が詠んだこんな和歌だ。

敷島の大和心を人問はば朝日に匂ふ山桜花

私はこの和歌が本当に好きで、春になるといつも思い出してはなんとも言いがたい感じの気持ちになる。桜が咲き始めたころに花を待ちこがれるような、あるいは花が散るときにそれを惜しむような、胸の切ない感じ。そしてそんな気持ちになりながら、日本に生まれたことを心から誇りに思う。私はこんなに繊細な言葉で、儚くも美しい花や心をうたう国に生まれ落ちたのだ、ということを、この和歌からしみじみ感じるのだ。

ほかに好きな和歌があるけれど、それはまた次の機会に書こう。もしかするとまたそのうち新たに好きなものを見つけるかもしれないし。

桜の花に関して、ソメイヨシノはもちろん大好きだけれど、やっぱり私は山桜が好きだ。赤い葉が早くに出てしまうのもお茶目で可愛らしいなと思う。私の家にはふたつ、大きな山桜の木がある。その木が毎年、暴力的なまでの生命力を持ってぶわあっと花を咲かせているのを見て驚き、私もこんなふうに生きたいものだと思う。

そんなこんなで優しく華やかな春がきた。下の妹と舞い降りる花びらを追いかけた、いつかの午後を懐かしく思う。花びらをつかみとるのは案外難しい。ひらひら、ふわふわと風に乗っていくので、触れそうになっても一瞬で手のひらからすり抜けてしまうからだ。でも青空の下で花びらを追うのは意外と夢中になってしまうので、時間と心に余裕があればぜひやってみてほしい。

私もそれくらいの余裕は持っていたいな。

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