お月さまを追いかけて
秋のゆうぐれの空ってなんであんなにきれいなんだろう、といつも思う。
秋のゆうやけはまるで燃えているみたいだ。
濃い群青色の空、蜜柑色のレースで織られたように繊細なゆうやけ雲。
あとお月さまもきれい。昼間の月も、夜の月も好き。
ゆうやけの色に染まる少し前の、まだ透明な水色の空に、ほっそりした三日月が浮かんでいるのも好き。繊細でもろくて、飴細工みたいでもあるし、ブレスレットのチャームみたいでもある。触れたら壊れてしまいそうなのがいい。触れることはできないのだけど。
いくら追いかけても、近づきも遠のきもしないお月さまのことが心底不思議だった幼いころを思い出す。
足でも車でも決して追いつけない場所にお月さまがいること、どんなに手を伸ばしてみても届かないものがあることを、私はそうやって少しずつ知ったのだった。
そういう気持ちを最近よく思い出す。
だからどうってことはないけれど。
実は今日は書きたいことがたくさんある。大学で出会ったひとびとのことばかりになってしまうけど、印象に残ることや事件がいろいろあったからまとめて書いてみる。
長めの記録になると思うので、気にせず、すいすいっとスクロールしてくださいね。
見出し機能を初めて使うぞ~、わくわく!
うっかりやさんの彼女
このまえ、大学のおともだちと学食で夜ごはんを食べた。
彼女は私が1回生のときから仲良くしてくれている女の子で、ここで語るときにはなんという名がふさわしいかなあ、と考えているけど難しい。
すらっと手足の長い彼女、優柔不断な彼女、天然な彼女、おっちょこちょいが愛らしい彼女…?
知り合って長くなればなるほど、あだ名をつけるのは難しくなる。
カッターシャツの彼や眼鏡の彼、マッシュボブの彼みたいなのは、完全に第一印象でニックネームをつけているので、見た目を反映していることがほとんどだ。
でも彼女はもうそういう域を超えてしまっていて、私は彼女の中身を取り上げてしまうから、「やさしい」とか「うっかりやさん」とか、なんだか抽象的なものになってしまう。
(でもうっかりやさんというのはかわいいなあ…これにしよう)
そんなうっかりやさんの彼女とふたり、ごはんを食べ終えて外に出るころには、もうとっぷりと日が暮れていて、夜がたしかにそこに降りて来ていた。
夜空を見上げると、お月さまが白い光を放って輝いていたので、「みて、お月さまきれいだねえ」と声をかけると、「わぁほんとだきれいだねえ~」と彼女が声をあげた。
けど私たちはそのとき眼鏡をかけていなかったから、お月さまはとてもぼんやりしていた。たぶん三日月くらいの月齢だったのに、月はかなり膨らんで見えた。それがやたらとおかしくて、私はこういうようなことを言った。
「ねえ、月はたぶんきれいなんだろうけど、私たち眼鏡かけてないからぼんやりしてるよね、ね、ぼやけて見えるよね?なのにきれいだねえなんて言い合って、私たち変なの」
彼女はそれが可笑しかったらしく、隣でお腹を抱えて苦しそうに笑い出し、私もそれにつられて笑ってしまった。
ちょっと寒かったので肩が当たる程度にくっついて笑いながら、お月さまの下を歩いて帰った。とても心地よい夕闇だったので、今思い出してもなんだかいいな、と思う。
眼鏡の彼
また別の日、私は午後から教員採用試験対策講座に行った。
教員になるかは置いておいて、とりあえず受けておくのは悪くないか、と思ったからだった。
教育学部棟の教室に入ると、私の知っている人物は眼鏡の彼しかいなかった。
でも私と彼とはかなり気ごころが知れていて(ここに書いていないことは山ほどある。書いてないことの方が多いくらいだ)、指定された席も前後だったので並んで講座を受けた。
講義が始まる前に背中をつついてミルク味の飴玉をあげると「ありがとう。今度何らかの形でお返しするわ」と言っていた。律儀な男の子。
彼は小さいころからお父さんがいなくて、小学生のときの作文のお題に「理想の父親像は?」というものがあってとてもいやだったと、その講義のあと、並んで歩いているときに話してくれた。
なんでその話になったんだっけ。
そういうことはいつもあんまり鮮明には覚えてない。
そして今、彼のお母さんには交際しているひとがいて、そのひとの名前には自分の名前に入っている字と同じ字が入っているということも、とても朗らかに教えてくれた。
「そのひと、いいひと?」と尋ねたら「うん、とてもいいひとだよ」と笑っていたから、なんとなく少し安心した。
そのまま3時から4時にかけて、研究室へ行った。
毎年冬に行われる研究室行事の関係で、幹事と副幹事には700枚の封筒に3種類の書類を折って入れて封をするという途方もない作業が課されており、とても3人じゃできないので、3回生がヘルプを頼まれていたのだ。
眼鏡の彼は4時からのバイトまで暇だから、一旦家に帰ろうかなと言うので、「帰らずに一緒に研究室に手伝いに行こうよ!その方がいいでしょ?」と言って引っ張って連れて行った。
私は彼が大学構内でバイトをしていることを知っていたから、一旦家に帰るより、研究室へ行く方があれこれ無駄が少ないと思ったのだ。
「わたし、幹事が〈エレベーター友達の彼〉くんじゃなかったら手伝いに来てないわ」と眼鏡の彼が横を歩きながら言うので(彼の一人称は「わたし」で、私はそれがとても気に入っている)、「でも幹事が私だったら来たでしょう?」と聞くと「そりゃ行きますよもちろん」と答えてくれた。
それがちょびっと嬉しかった。それくらいにはなかよしだと思いあっているんだ、と思えたから。
「おもしろいひとだねえ」と声をかけると、「それあなたにだけは言われたくない」と言われた。彼は私のことをおもしろいと思ってくれているらしく、それは私にとって素直にうれしいことだった。
午後の白い月が、晴れた青空から静かに私たちを見守っていた。
ワニの筆箱の彼
その後、研究室へ行くと何人か知り合いの子たちがいて、その中には私が1回生のころから気になっている男の子もいた。
何が気になるか。そのひとはグリーンのワニのぬいぐるみみたいな筆箱を使っているのだけど、その筆箱がなんとも言えずかわいいのだ。
だから絶対いつか触らせてもらおう、時が来たら絶対話しかけてやる、と数年間虎視眈々とチャンスを狙っていたけど、なんとその日研究室にちょうど彼がいたので「今だ!今しかない!」と思い、作業をしながら話しかけてみた。
彼はうすっぺらいお腹をしていて、身長はそれなりに高いのに少し猫背気味なので、身体が弱そうに見える。
目はいつも眠たそうで、どこか気だるげ。
なのにどうやら性格はおっとり温厚らしく、でも最近ちょっと髪を長めのふわふわにしているのでちゃらそうにも見えて、もうなんというか、ギャップの宝庫みたいなひとなのだ。
(コアなファンがいそう、と思う)
書類を封筒に入れながら、彼に「ワニの筆箱持ってるよね?」と聞くと、無表情を極めていた彼の表情がふっと緩んだので、そこからしばらく話をした。おかげで彼のiPhoneにはホームボタンがあることが分かったし、それを最近高校のときの友達にからかわれたことも知った。
そのあと「筆箱のワニには名前をつけてるんですか?」と尋ねてみると、
「いや、名前はつけてないんですけど、でもつけてもいいかなって思います」と返され、思わず「なんだそれは…」と声が漏れてしまった。
それを聞き、彼のひとえの瞳がそっと笑っていた。
やさしい月のような、きゅっと細い目元だった。
帰り際、彼に私を十分認知させたあとで「じゃあ、これからよろしくね」と言うと、ワニの筆箱の彼は「えっあの名前は…」とおどおどしながら私に質問してきていたよ。
あなたは私の名前を知らずに話していたのね、だとしたら急にがんがん話しかけられてとてもこわかったでしょうね、と思うと可笑しくて、マイペースなひとだなあと思った(名乗ったら私の名を知っていたようで、いくらかほっとしていた)。
そしてその様子の一部始終を目にしており、私のワニの筆箱の彼との距離の詰め方に驚愕した、ニューバランスのスニーカーの彼(研究室副幹事のひとりで、夏ごろ仲良くなった)が、
「やばあ…ああやって仲良くなるんだ…距離の詰め方すご…うわあ…」
と机の向こう側でぼそぼそ言っていて、さらにそのひとの隣に座ってしまったがために「うんうん」「〈青葉〉ちゃん、すごいよね」と、彼に対して定期的に相槌を打たざるを得なくなったジブリ好きの彼女の様子が、その日見た何よりもおもしろかった。
ポーランドから来た彼女
そして、私がチューターをすることになった、ポーランドから来た留学生の女の子は、すごくすごく可愛らしいひとだった!
絵に描いたようなヨーロッパのひとで、ふわふわの栗色の長い髪の毛、大きな琥珀色の瞳、真っ白な肌…第一印象からして、本当にうつくしい女性。
でも話してみると外見よりはるかにお茶目でやさしく気さくで、私より年を重ねているがゆえの落ち着きと賢さがあり、内面も素敵なひとなのだということがすぐに分かった。
そんな彼女は、ある夕方に西の空がヴェールのように柔らかな橙色に染まっているのに感動して、「なんてきれいなんでしょう、ちょっと写真を撮ってもいいですか?」と言って、ゆうやけの写真をぱしゃぱしゃ撮っていた。
私はそんな彼女の後ろ姿をカメラにおさめた。それはとてもよい写真になったから、お気に入りにしてある。
彼女は日本の信号にまだ慣れていないらしく、あるとき、一緒に郵便局へ出かけた日には、赤信号なのにもかかわらずおしゃべりしながら軽やかに横断歩道を渡ろうとしていて、あわてて止めたくらいだ。
それ以来、私は彼女が横断歩道を渡るとき、道路に飛び出さず、ちゃんと青信号を待ってから足を踏み出しているか気がかりで仕方がない。
そのまた別の日に彼女と銀行へ出かけたときには、急に雨が降り始めたので屋根の下で雨宿りをしていると、「実は私の髪の毛なんですが、雨が降りそうなとき大体分かります」とにっこりしながら教えてくれた。
あの柔らかな髪も、雨の日には湿気で広がってしまうらしく、だとしても素敵な髪であることに変わりはないと思い、私は彼女に微笑みを返しておいた。
なにもかもが可愛らしい。
うっかりやさんの彼女と姫カットの彼女
さて、先週末、私は他の学生たちとともに大学の先生にひっついて、1泊2日で大阪へ文楽を見に行く予定だったのだけれども、あいにく風邪をひいて喉が変だったし、その後結局発熱してしまい、それが叶わなかった。
当日の朝、先生に旅行辞退の電話をかけるとき、あまりに申し訳なくてなんて言えばいいのか分からなかった。
体調不良になったのは出発当日になってからだったし、その先生はいつも私にとても親切なので、より申し訳なかったのだ。
朝から全ての気力を使い果たして先生に電話した後、一緒に行くことになっていたうっかりやさんの彼女と、姫カットの彼女(華奢でいつも可愛い服を着ている)にその旨を連絡した。
するとふたりは土日の間中、「大丈夫?」「あったかくするんだよ」「大変そうだったら近くの誰かを頼ってね」「お土産買っていくね。あんこ好き?食べられる?」などとLINEをくれて、そのやさしさがうれしくてたまらなかった。
本当にありがとう。
実は彼女たちはふたりとも花の名前をその名に宿していて、それが本当に可憐でいいなあと思う。花の名前を持つ女の子って、なんかちょっと憧れてしまう。自分の名がきらいというのではなく、ただ憧れてしまうのだ。
そして「あんこは大好きだよ」と返信をしながら、ふたりは私にあんこのお菓子を買ってきてくれるのだろうか、と想像したりした。
どちらにせよやさしい友人であることに変わりはない。
マッシュボブの彼
そして日曜日のお昼ごろ、課題のことでちょうどLINEをしていたマッシュボブの彼に、「熱出たから文楽行けなかったわ」という趣旨の返事をした。
そのままお昼寝をしたあと携帯を見ると、「え、大丈夫なん?なんか差し入れしましょうか?」というようなLINEがきていた。
あわわ、これはまずいかもしれない、と思って「いやあ、悪いからいいよ」と1度は断ったのだけど、彼は「ほんとにー?ちょうど今日外出る用あるからいいよー。なんか欲しいもんある?」と聞いてくれた。
ここまで言ってくれて断るのもなあ、と思い、「りんごジュースがのみたい」と答えたら、マッシュボブの彼は日が暮れてから、私のアパートまで自転車に乗って差し入れにきてくれた。
私がアパートの外に出ていくと、りんごジュース(でっかい紙パックのひとつ、ちっちゃいのふたつ、計3つ!)だけではなく、プリンやポカリなんてのがどっさり入ったコンビニの袋を手渡してくれた。
想像以上に重たい袋を持たされて驚愕していると、「これ、寒いからあったかいの持っとき?」と言いながら、買いたてほやほやのあったかい飲みもののペットボトルまで私の手に持たせてくれて、おお、こんな素敵な気遣いのできるひとなんだ…なかなかやる男だわねえ…と思い、「えっ、ありがと…」と鼻水をすすりながらくすっと笑ってしまった。
プリン買ったけど、スプーン入れるの忘れたからごめん、手で食べて?とふざけていたけど、スプーンのことにまで気を遣ってくれたことに感動して「全然いいよ。手で食べる」と約束した(もちろんスプーンで食べた)。
私はお財布を持って部屋から降りてきていたので「お金は?」と訊くと、「いやいらんから、やめて?差し入れって言うてんのにお金もらわんやろ?普通」と笑いながら、彼は左手を左右に軽く振る。
たぶんそう言うだろうなと思っていたので、その代わり、文楽旅行に持っていこうとしていたキットカットを袋ごとあげておいた。
「このアパートめっちゃ知ってたわ、元カノの住んでるとこ」
と彼が不意ににやっとするので、「あらそうだったの…なんかごめん」と言うと「知ってるとこやったからすいすい来れたわ。やけに早かったやろ?」と自慢げに言っていた。
たしかに来るのがとても早かった。私がしんどくてうとうとしている間に彼は来てしまったのだから。
今、別れてしまったという元カノのことを思い出しているのかもしれないと思ったけど、それは黙っておいた。別に言わなくていいと思ったから。
そのまま少しだけ立ち話をした。
「あんまり近くで話してたら風邪うつるかもしれん」と言うと、「えー、うつしてくれたら明日授業出んでよくなるやん」と中高生みたいに笑っていたのがまぶしく、安心してついため息が出てしまった。
「私明日の授業たぶん休むわ」と言うと、「それがいいわ。あったかくして寝ときい」とのんびり、やさしく言ってくれた。
満月に近づいた月が空できらきらしていた。
夜の闇というのは物や人との距離感がつかみづらくて苦手だけど、かえってそれがいいのかもしれないと、熱のある頭で思った。
それから「ありがとう」とたくさん言ってばいばいした。
彼は私がアパートの中にちゃんと入るまでその場にとどまって私を見ていて、私はそんなことをされたのは生まれて初めてだったから、なんと紳士なお友だちを持ったものだろう、と感じながら手を振った。
「差し入れしようか?」の流れくらいから、「うわあ、これってどうなんだろう」と漠然と思っていたけど、彼は私に何も見返りを求めなかった。
私はそのことに、自分が思っていた以上にほっとした。
ちゃんと友だちだと思って助けてくれてるんだな、と感じたから。
きっと彼にはおともだちがいっぱいいて、こうやってみんなに親切にしているんだろうけど、でも今ここにいるこのひとは私のためにわざわざ動いて、笑ってくれているんだなあと思える、そんな不思議な男の子だと思った。
後輩の彼女、そして恋人
りんごジュースを飲んで眠り、熱は一晩で魔法のように下がった。
ただ、私は日曜日の夜の恋人との電話のとき、マッシュボブの彼が差し入れにきてくれたことを恋人に言わなかった。言えなかったのかもしれない。
日曜の夜は「お互い下心がないし、まあ大丈夫かな」と思ったけど、朝になって「やっぱりああいうのはあんまりよくなかったんじゃないか」という気持ちが生まれて、どんどん不安になってしまった。
マッシュボブの彼のおかげですごく助かったのは事実だけど、でも恋人がいるのにこれはどうなんだろう、やっぱりまずいんじゃないか?
遠距離恋愛でこんなことをしていたら関係が破綻するんじゃないか?と心の中で悶々としてしまったからだと思う。
だからまずは後輩の彼女にその話をしてみた。
彼女は私のおおざっぱな話を相槌を打ちながら聞き、「それはうちは問題ないと思う。でもまずいと思ってるのは、あなたの中でのダメなラインを踏んじゃってるからだと思うのね」と真剣に言葉を選んでくれて、「だから、そこはごめんなさいって謝ろ?」と言ってくれた。
それを受けて、私は恋人に「あなたに話して謝らなくてはならないことがあるの。昨日は言えなかったから今日の夜に話すね、もしかしたら嫌われちゃうかもしれないけど、ちゃんと話す」とLINEを送った。
すると、夕方、実習終わりでくたびれているはずの恋人が私に3件も不在着信を残していた。
そのことに気付いて電話をかけ、べそをかきそうになりながら事情を説明して謝ると、彼は「なんだ、そんなことか」と言い、電話の向こうで笑い始めた。
彼は私が気に病んでいたのは一体なんだったのか、と言うほどに声を立てて笑った。そして、そのあとでこう言った。
「大丈夫だよ、そういうのは俺は全然気にしない。その男の子はとてもやさしくていいひとだね。俺はあなたが熱を出してても、そういうことをしてあげられないからなあ」
私はびっくりした。
「怒られると思った」とつぶやくと、「あのね、その男の子が厚意であれこれしてくれてるのに、それをわざわざ『恋人がいるから』って断る方が俺は人としてちょっといやだと思うけどねえ」と話していた。
なんと海のようにおおらかな恋人をもったことだろう。
もしかすると距離を置かれるかもしれない、とさえ思っていたのに。
私が気にしすぎなのだろうか?
その夜、おやすみの電話でもう1度その話をすると、彼は「俺がしてあげられないことをその子がしているから、だから本当はちょっと悔しかった」と言っていた。私はごめんね、と何度も言ったけど、でも彼には私を咎める気は全くないらしかった。なんてやさしい恋人だろう。
彼のスタンスとしては、やはり私が浮気をしなければ大抵のことは気にしないらしい。ともかく今回のことは怒るに値しないよ、と言ってくれた。
こんなふうに、彼は私が他の男の子との話をしても決してやきもちをやかないし、腹を立てたこともない。私を信じてくれているから、と言えばそうなのだろうけど、あまりに怒ったり嘆いたりしないので逆に心配になってしまう。私はそこまで安心して放っておける彼女なのだろうか。
そして一体どこを越えたら私の恋人は怒るのだろう。
もはやその線がどこなのか、ということが無性に気になってしまう。
(かといって試したりはしない、絶対に)
「考え方や感じ方が全然違うのに今までうまくいっていてとても不思議だけど、私はこれからもあなたといたいよ」と言うと、
「俺も不思議です。そんで、俺もあなたとずっと一緒にいたいな」
とあたたかなことばを返してくれた。
不思議なことは不思議なままでもなんとかなるんだろうと思える。
胸をはって隣に立っていられる、自信を持ってこのひとが好きと言える、そういう相手に巡り会えたことがうれしい。
彼が世界から私を見つけ出してくれたこと、本当に感謝している。
そしてこの数日お月さまのことで文章を綴ってきていたら、なんと今夜は皆既月食らしい。今日投稿するにふさわしい、月の日記(?)になった。
今夜もしきれいに月が見えたら、恋人にお月さまの話をしようと思う。どこかの文豪のことばを借りて、「月がきれいね」とでも言ってみよう。
たとえ欠けていたとしても、月はまた満ちていく。