【体験ピアノレッスン物語】1.ソナチネを素敵に弾くには?→音の役割を知る
☆毎回、架空の生徒さんに登場して頂き、対話形式で架空の体験レッスン物語を進めて行きたいと思います。実在の生徒さんとは一切関係はありませんのであしからず。
🎹レッスン曲目 ベートーヴェン ソナチネ第5番ト長調 第一楽章
ピンポーン、ピンポーン…
(ワンワンワン🐶)
呼び鈴の音に混じって、リビングから愛犬ゴンちゃんの鳴き声が薄っすら防音室に聴こえて来る。
荒黒「はじめまして、体験レッスンに伺いました荒黒矢太郎(あれぐろやたろう)です。今日はどうぞ宜しくお願いします。」
佐々木「荒黒さん初めまして、講師の佐々木世寿です。こちらこそ宜しくお願いします。
静かな防音室には二台のグランドピアノがあり、茶色いアンティークなピアノの前の椅子へ座るよう促される荒黒。
佐々木「今日は外、暑かったですか?」
荒黒「まだ5月なのにもう夏みたいに凄く暑かったです!」
佐々木「確かに既に暑い日が多いですよね〜、今年の夏はどうなるんでしょうねぇ?…さてさて、今日は楽譜は何をお持ちですか。」
荒黒「子どもの頃習っていた時に最後に弾いたベートーヴェンのソナチネ第5番ト長調第一楽章をとりあえずは持ってきてみました。」
佐々木「ソナチネアルバムに入っているお馴染みの作品ですね。ソナチネを久しぶりに弾いてみてどう感じましたか?」
荒黒「子どもの頃はソナチネアルバムはあまり好きではなかったのですが、その頃と比べると、それほど思っていたほど嫌いではなくて、なんだか意外な感じがしました。」
佐々木「そうですか、やはりそうおっしゃられる方が多いんです。大人になってからソナチネに抵抗が無くなってきた!とかよく教室に通う他の皆さんもおっしゃっています。ソナチネは音楽の形式も学ぶべきところの多いし、なんといっても優雅な曲が多いですし。…では早速弾いてみましょう」
荒黒「緊張して指が動かないかもしれませんが、通して弾いてみます!」
♪ソ〜シラソラシソ…
茶色いピアノは鍵盤が軽く弾きやすかった。今まで聴いたことのない木のような音がした。荒黒は緊張しながらも最後までゆっくり目の速さで何とか辿り着いた。
佐々木「ありがとうございます😊演奏してみて如何でしたか?」
荒黒 「あー何とか最後まで弾けましたが、家とは違う感じで。。」
佐々木「自宅とは環境が違うとピアノの反応が違くて緊張しますよね。でもそんな中最後まできちんと通せたのは良かったですよ。今通して弾いてみて、どの辺りが難しかったですか」
荒黒「なんていうか、ソレシレ…という八分音符の4つずつ連なった形の伴奏がつい大きくなってしまったり、凸凹したり、あとは右手のメロディがあんまり歌う感じで弾けないっていうか。。」
佐々木「八分音符の伴奏は、アルベルティバスという名前のついた分散和音のことですね。まずは各音を楽器に例えて、音の役割を感じていく練習をしましょう。
ソレシレだったら、左手ソと右手レシレに両手に分割してそれぞれを別の楽器をイメージして弾く練習をお勧めします。
また、弦楽四重奏の楽器構成(ヴァイオリン×2、ヴィオラ、チェロ)はシンプルで例えやすいですからこの機会に覚えておきましょう。
例えば、ソレシレのソは少し長めに太めに弾いていただいてチェロの担当にしましょう。レシレはヴィオラの担当です。ヴィオラはヴァイオリンがやや大きくなった感じの楽器ですね。こちらはこんな風に控えめに弾いてみてくださいね。チェロはそれよりもさらに低くて太い音が出ますからこんな感じで差ををつけると…」
講師の操る黒いグランドピアノから聴こえる音はまるで二つの楽器が演奏している様だった。
荒黒「チェロとヴィオラの二重奏の出来上がりですね!うわ、ちゃんとそう聞こえますね。僕も真似てみていいですか?」
佐々木「是非是非!役割を交換してもやってみましょう!」
チェロとヴィオラの他に、右手もバイオリンとしてお互いにパートを交換しながら講師と二台のピアノで一緒に演奏してみた。
講師の演奏に合わせてついていくと、荒黒は時を忘れて、まるで自分がヴァイオリンやヴィオラ、チェロといった楽器を実際にヨーロッパの何処かの王宮で演奏しているような優雅で高貴な気持ちになっていた。
荒黒「(何て品の良い音楽なんだろう…!子どもの頃弾いてた曲だっていうのに!)」
そろそろ体験レッスンの時間が終わりに近づいていた。
佐々木「そろそろお時間が来てしまいました。荒黒さん、音の役割の交換、今日は体験してみて如何でしたか?」
荒黒「音の役割が楽器に例えられてはっきり違う認識があるだけでも、断然音楽が豊かで楽しくなりますね!ソナチネがこんなに楽しくなるなんて目から鱗でした。」
佐々木「これを意識しておいて、全体をまた両手で弾けば自分自身何処が出過ぎていてどれくらいのバランスで弾けば良いか直ぐ気がつくはずです。いわば、音のお手本みたいな感じですね。是非練習の参考になさってみてください。」
荒黒「自宅に帰ってからまた弾いてみようと思います!今日はありがとうございました♪」
体験レッスンを受講した後、荒黒は霧が晴れたような気持ちになれた。自宅でもなんだかもっと練習出来そうな気がしてきた。足取りも軽やかに、教室を後にしたのであった。
(終)