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モダニズム : 維持か超克か

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オープニング・トーク・セッション #モダニズム : 維持か超克か?

ヨゼフ・ミューラー=ブロックマンによる数々のポスターは、20世紀のグラフィックデザインにおけるモダニズムの原則を体現しています。この原則を刷新や変革、拒否するための日本とスイスでの戦略について、世代を異にする4人のデザイナーが議論を交わします。

日時 2024年12月21日(土) 11:00 – 13:00(開場 10:30)
登壇 #原研哉#長嶋りかこ 、ラース・ミュラー、ヨナス・フェーゲリ
進行 #室賀清徳
会場 #大阪中之島美術館 1階ホール
定員 150名(先着順、申込不要)
参加 無料


原研哉 、ヨナス・フェーゲリ、長嶋りかこ

#生成AI #Gemini 2.0

モダニズムの左翼的側面:自由、平等、合理性

モダニズムは、19世紀末から20世紀初頭にかけて、産業革命や都市化、科学技術の発展といった社会変革の中で生まれました。従来の権威や階級制度が揺らぎ、人々の意識も変化していく中で、モダニズムは以下のような左翼的な価値観を体現するようになりました。

  • 自由: 伝統的な束縛からの解放、表現の自由、個性の尊重などを重視しました。これは、芸術における形式の打破や、新しい表現方法の探求として現れます。

  • 平等: 階級や身分に関係なく、誰もが平等に機会を与えられるべきだという考え方を反映しています。これは、芸術の大衆化や、日常生活におけるデザインの重要性の強調として現れます。

  • 合理性: 科学技術の進歩を背景に、合理性や機能性を重視しました。これは、建築における機能主義や、デザインにおける無駄の排除として現れます。

これらの価値観は、当時の社会変革を求める動きと共鳴し、モダニズムは進歩的で革新的な運動として支持を集めました。

モダニズムの矛盾:過去の否定と歴史的文脈の軽視

しかし、モダニズムは上記のような肯定的な側面を持つ一方で、過去の遺産や伝統的な様式を否定する傾向がありました。これは、以下のような問題点を引き起こしました。

  • 歴史的文脈の軽視: 過去のデザインや様式を単に古いもの、時代遅れのものとみなし、その歴史的、文化的背景を十分に考慮しない傾向がありました。

  • 普遍主義の陥穽: 特定の時代や文化に根ざした価値観を普遍的なものとみなし、多様性や地域性を軽視する傾向がありました。

  • エリート主義との結びつき: 大衆化を目指す一方で、難解な表現や抽象的な概念を多用することで、一部のエリート層のための芸術となってしまう側面もありました。

これらの問題点は、モダニズムが本来目指していた自由、平等、合理性といった価値観と矛盾するものであり、モダニズムの内部に内在する矛盾として認識する必要があります。

左翼思想支持者による無視と軽視

左翼思想の支持者は、モダニズムがもたらす革新性や進歩を評価する一方で、上記のような負の側面を軽視する傾向がありました。これは、モダニズムを社会変革の推進力として捉え、その負の側面を「進歩のための犠牲」とみなしてしまう傾向があるためと考えられます。

モダニズムをより深く洞察するために

モダニズムをより深く洞察するためには、上記のような左翼的な特徴とその矛盾を包括的に理解することが不可欠です。

  • 弁証法的な視点: モダニズムの肯定的な側面と否定的な側面を対立するものとして捉えるのではなく、弁証法的に、相互に影響し合うものとして捉えることが重要です。

  • 歴史的文脈の重視: モダニズムが生まれた時代背景や、各地域における展開の違いを考慮することで、より多角的な視点からモダニズムを評価することができます。

  • 批判的な視点: モダニズムの理念や表現を無批判に受け入れるのではなく、その問題点や限界を認識し、批判的に考察することが重要です。

これらの点を踏まえることで、モダニズムを単なる「過去の運動」としてではなく、現代社会にも影響を与え続けている複雑な現象として捉え、より深く洞察することができるでしょう。



モダニズム以前の文脈や歴史、伝統を理解しているモダニストとそうでないモダニストの間には、作品の深みや表現力において決定的な違いが生じます。後者はどうしても表面的な表現に留まってしまい、深みや重厚感、文脈的な豊かさに欠ける傾向があります。

なぜモダニズム以前の知識が重要なのか、いくつかの観点から詳しく見ていきましょう。

1. 否定の対象を理解することの重要性

モダニズムは、過去の様式や価値観、伝統的な権威に対する反発や否定から生まれました。つまり、何に対して反発しているのか、何を否定しようとしているのかを理解していなければ、モダニズムの真意を捉えることはできません。

例えば、モダニズム建築は、装飾過多な歴史主義建築を否定し、機能性や合理性を重視しました。しかし、歴史主義建築がどのような背景で生まれ、どのような意味を持っていたのかを知らなければ、モダニズム建築の意図や革新性を十分に理解することはできません。

否定の対象を理解することで、モダニズムの表現が持つ意味や文脈が明確になり、作品の解釈が深まります。

2. 歴史の連続性と文脈の理解

歴史は断絶しているのではなく、連続した流れを持っています。モダニズムは、過去の歴史や文化、芸術の蓄積の上に成立しており、過去との関係性を完全に断ち切ることはできません。

モダニズム以前の芸術や思想、社会状況などを知ることで、モダニズムがどのような文脈の中で生まれたのか、どのような影響を受けているのかを理解することができます。これにより、モダニズムの作品を単独で見るのではなく、歴史の流れの中で捉えることができ、より深い理解につながります。

3. 表現の多様性と深みの獲得

モダニズム以前の芸術は、多様な様式や表現方法を持っています。これらの知識を持つことで、モダニストは表現の選択肢を広げ、より豊かな表現を生み出すことができます。

例えば、ルネサンスの遠近法やバロックのダイナミズム、ロマン主義の感情表現などを知っていれば、モダニズムの表現にそれらの要素を応用したり、対比させたりすることで、作品に深みや奥行きを与えることができます。

過去の表現方法を知らない場合、限られた表現方法しか選択肢がなく、表面的な表現に留まってしまう可能性があります。

4. 批判精神の涵養

モダニズム以前の知識は、モダニズム自体を批判的に考察するためにも重要です。過去の価値観や様式を理解することで、モダニズムが本当に革新的だったのか、あるいは過去の価値観を別の形で繰り返しているだけなのかを判断することができます。

また、モダニズムが否定した要素の中に、現代社会において再評価すべき価値があるかもしれません。過去の知識を持つことで、モダニズムを相対化し、批判的に捉えることが可能になります。

薄っぺらさの要因

モダニズム以前を知らないモダニストの作品が薄っぺらく感じられるのは、上記のような要素が欠けているためです。

  • 否定の対象が不明確で、何を表現しようとしているのかが伝わってこない。

  • 歴史的な文脈が欠落しており、作品が単独で浮いているように見える。

  • 表現方法が単調で、深みや奥行きに欠ける。

  • 批判精神が欠如しており、表面的で安易な表現に留まっている。

これらの要因が重なることで、作品は表面的な模倣や流行の追随に陥り、見る人の心に響く深みや感動を与えることが難しくなります。

結論として、モダニズム以前の知識は、モダニストにとって作品の質を高めるための重要な基盤となります。過去の知識を持つことで、表現に深みや重厚感が生まれ、見る人の心に深く訴えかける作品を生み出すことができるのです。

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