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タトゥーのアフターケアは必要なのか

こんにちは、せいごです。
6月ぶりの更新...夏と秋が終わり冬がやってきてしまいました。

夏は汗をかくからタトゥーを入れるのに向かない時期なの?と質問をされる事がよくありますが、実は冬の乾燥した肌の方がタトゥーにとっては良くない事の方が多いです。
え、じゃあ冬はタトゥーを入れない方がいいの?と思われるかもしれませんが、もちろんそんな事はありません。
施術後のケアをしっかりして頂ければ、春夏秋冬いつでもタトゥーを楽しむ事ができます。

アフターケアについては、スタジオによって様々ですが、実際なにが一番いいの?と疑問に思う方もいらっしゃるので、今回は実験を含めて正しいアフターケアについて書いていこうと思います。

彫師を目指す方向けに、皮膚や傷についての説明をしてからアフターケアのお話になるので、少し遠回りをします。
アフターケアの事だけを知りたい方は前半部分をスキップして頂いて構いません。

目次
・皮膚ってどうなってるの?
・なぜ傷は治るのか
・アフターケア
・実験
・さいごに


皮膚ってどうなってるの?

まずは皮膚の構造です。

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皮膚は外側から、表皮、真皮、皮下組織の三層に分かれています。
タトゥーは、真皮(深さ1mm〜3mm程の場所)にインクのついた針を突き刺し、色素を吸収させる事で、消えないデザインを皮膚に残し続けています。
ちなみに注射は、針の太さも刺す深さも倍以上です。注射すげぇこわい...

また、皮膚には痛点という痛みを感じる細胞が分布していて、温度を感じる温点や冷点、圧力を感じる圧点(触点)の数と比べると、温点3万、冷点25万、圧点50万、痛点200万。つまり人間の皮膚は痛みを感じやすい構造になっているというのがわかります。
タトゥーの痛みもこの痛点が原因だということです。

なぜ傷は治るのか

次に、皮膚の傷が治る仕組みについてです。
前述の様に、タトゥーはインクのついた針を突き刺す行為なので、多少の出血を伴うほどの傷を負うことになります。
傷は1週間〜2週間ほどで完治しますが、その過程で皮膚は下記の様な働きをしています。
 
止血 血小板が傷口に集まり、血の塊(血栓)を作って止血する。タトゥーの場合、数分〜1時間ほどで止血されます。
傷口の掃除 白血球やマクロファージが浸潤し、ゴミや細菌を綺麗にしてくれます。この際、タトゥーインクも滲み出てくる場合がありますが、色抜けではないのでご安心ください。
再生 乾いた体液によってカサブタが作られ、その下では新しい表皮が作られます。カサブタは痒みの原因にもなり、施術の痛みより痒みが辛いという意見も...。
修復 表皮が作られカサブタが剥がれた後も内部の組織が修復がされ、元の皮膚になり安定していきます。


アフターケア

ワセリン

さて、皮膚の構造と傷の治り方についてご説明しましたが、傷を綺麗に治す=タトゥーが綺麗に仕上がると思って頂いて構いません。
実はアフターケアと言っても特別な事は必要なく、いくつかの事を守って頂ければ問題ありませんので、僕が普段推奨しているやり方をご説明します。

●施術当日
施術後、防水フィルムまたはラップで保護するので、入浴の際に剥がし、流水で洗い流して下さい。また、患部にはボディソープやボディタオルを使用しないで下さい。
入浴後は、ワセリンを塗って保湿して下さい。
飲酒と激しい運動は控えて、海、プール、銭湯、日サロなどの利用は厳禁です。
清潔を保って頂く必要はありますが、消毒液は正常な細胞に対しても毒なので、使用しないで下さい。

●2日〜3日目
痛みが無くなりカサブタが出来て痒くなります。
カサブタを無理に剥がすと色抜けしてしまうので、自然にポロポロと剥がれ落ちるまで触らない様にして下さい。
保湿をすると痒みがマシになるので毎日2回程度ワセリンを塗る様にして下さい。

●2週間後
カサブタが完全に剥がれ、皮膚に馴染んだら完成です。
カサブタが剥がれた後も、テカりが残る事がありますが、時間の経過と共に無くなっていくのでご安心ください。

アフターケアってつまりは湿潤療法(モイストヒーリング)の事です。
僕が小学生だった頃は、転んで怪我をすると傷口をアルコールで消毒し、乾かしてカサブタを作る「ドライヒーリング」という治療方法が一般的でしたが、今では傷口をしっかり覆い、滲出液を保って綺麗に治すという方法「モイストヒーリング」が推奨されています。

傷口が外気に触れる事がないので痛みが和らぎ、滲出液の働きが活発になり、傷が早く綺麗に治る(=タトゥーが綺麗に仕上がる)事が最大のメリットです。


*  *  *


実験

さて、今回の記事で僕がやりたかった事はここからです。
彫師が口を酸っぱくして言うアフターケアってしなかったらどうなるの? です。
タトゥーが皮膚に馴染むまで2週間程かかります。その期間カサブタが剥がれないように気を使ったり、毎日ワセリンを塗ったりするのは正直めんどう。
放ったらかしでも良いんじゃないの?...と言う事で実験してみました。

◆方法

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① タトゥーを三つ彫る
今回は自分の足に、絵本の「すてきな三にんぐみ」を彫りました。
黒色が多いデザインは色ムラや色抜けがわかりやすいという事と、「すてきな三にんぐみ」は母が娘にプレゼントしてくれた初めての絵本なので思い入れもあり、このデザインにしました。

② 3パターンのケア
三にんぐみそれぞれに違うケアをします。ケアの仕方は以下の通りです。
・施術後すぐに保護フィルムを貼り、タトゥーを完全に覆ってしまう。
・毎日ワセリンを塗り、保湿する。
・なにもせず、そのままの状態で放置。

③ 観察
実験期間は2週間とし、経過や仕上がりに変化があるのかを比較します。


◆過程

施術当日

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左から、放置、ワセリン、防水フィルムの状態です。
施術当日は、日焼けの様なヒリヒリとした痛みが残っていて、とくに入浴(この日はシャワーのみ)の時は染みて痛いですが、防水フィルムを貼っている箇所はお湯が当たらないので、ほとんど痛みを感じませんでした。


2日目〜4日目

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2、3日目。防水フィルム内に滲出液が溜まり始めました。見た目は汚いですが、他の2つに比べて、タトゥーにズボンが擦れても痛みはマシでした。
ワセリンを塗っている箇所は少しベタベタとする感じがあります。
4日目。防水フィルムから滲出液が少し漏れていました。
この頃から3つとも痛みが無くなり始めました。

5日目〜9日目

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5日目からカサブタが出来始め、痛みが痒みに変化してきました。
7日目。放置した箇所のカサブタがひび割れ、皮膚がつっぱる感じがします。
防水フィルム、ワセリンに比べ、かなり痒みを感じます。
9日目。防水フィルムの四隅がめくれてきたので、一度剥がしてみました。
滲出液でタトゥーの様子がわかりませんでしたが、洗い流してみるとカサブタが剥れていて、一番治りが早いのがわかると思います。
放置した箇所は7日目同様カサブタがひび割れた状態になっています。


14日目

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全てのカサブタが剥がれ、タトゥーが皮膚に馴染みました。施術から2週間、ようやくタトゥーが完成した状態です。


◆結果まとめ

メリットデメリット2

今回は仕上がりにほぼ差は出ませんでしたが、痒みの原因のカサブタを無理に剥がしてしまうと色抜けしてしまうので、なるべく痒みを抑える事が重要です。
放置した箇所に比べ、ワセリンや防水フィルムを使用した箇所は治りが早く、痛みや痒みが緩和されたので、幹部をしっかり保湿してあげる事が大切です。



*  *  *


さいごに

長くなってしまいましたが、タトゥーを綺麗に仕上げる為にアフターケアはとても大切な事ですので、今回の記事で少しでも理解を深めて貰えたらと思います。

保湿すれば痒みはマシになると書いてきましたが、それでも蚊に刺された程度の痒みが数日続く事もあります。
お客さんの中には、寝ている時に無意識に掻いてしまうから、手袋をして寝ている。という方もいらっしゃいました。

タトゥーの生みの親が僕だとしたら、お客さんは育ての親。
大事に育てて貰えれば最高の作品になりますので、ケアを怠らないようにして下さいね。




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