No.011 稲盛哲学とは?盛和塾会報誌振り返りvol2

1.はじめに

京セラの創業者の稲盛和夫さんが8月24日に90歳でお亡くなりになりました。日本を代表する名経営者であり、人格も素晴らしい稲盛さんが無くなってしまったのは非常にショックです。
心からご冥福をお祈りいたします。

もちろん私自身直接的に稲盛さんの教えを受けたわけでも関わりがあったわけでもありません。しかしながら、私塾である盛和塾の会報誌を拝読いただける機会があり、文章から読み解ける稲盛さんの経営哲学にはいつも感銘を受けていました。

私自身のインプット、アウトプットのために盛和塾会報誌を振り返りノートに記したいと思います。今回は下記に続く2回目です。
稲盛哲学とは?盛和塾会報誌振り返りvol1|SEIGO|note

会報誌第二号は 1992年7月10日に発行されています。

2.塾長理念

  会報誌の表表紙の裏面には塾長理念が書かれています。

人生・仕事の結果 =考え方 x 熱意 x 能力

この方程式は、平均的な能力しか持たない人間が、偉大な事をなしうる方法はないだろうかという問いに対して、稲盛さんが自身の体験を通じて導き出した結論です。

能力は、頭脳のみならず健康や運動神経を含めて先天的なもので個人差があります。
しかし、熱意は自分自身の意思で決められます。能力と熱意はそれぞれ0点から100点まであり、掛け算で表されます。つまり、どんなに才能があっても(例:能力=100点)、熱意が全くなければ(例:熱意=0点)、能力x熱意の結果は少なくなり(例: 0点)ます。つまり能力によって劣る人でも、熱意によって能力に勝る人よりも素晴らしい結果を残すことが可能です。
そして、これに考え方が加わります。考え方は、人間としての生きる姿勢であり、マイナス100点からプラス100点まであります。例えばマフィアの親分などは、能力x熱意の結果は非常に高いが、考え方がマイナスなので、マイナスの最大値が人生・仕事の結果として表れていると言えるでしょう。
このように素晴らしい考え方、つまり人生哲学を持つか持たないかで、人生の結果は大きく変わってきます。
非常に分かりやすい考え方で、説得力を持った公式と言えるでしょう。能力自身を高めることも重要ですが、熱意考え方をいかに成長させることができるが、それが稲盛哲学の根本となっているのだと思います。

3.リーダーシップと意思決定

 塾長講和というインタビュー記事の中では、リーダーシップをテーマに稲盛さんが述べています。記事の中で稲盛さんは、取引先との関係で良くトラブルを起こす人はだいたいパターンが決まっていて、例えば「この問題については何某に確かめて、間違いないという返事をもらいました」と報告しますねと述べています。確実で責任ある人が言った場合と違い、ちゃらんぽらんな人間が「だいじょうぶ」といった場合には「だいじょうぶ」である。問題は、相手をどう評価するか、判断する人の器量の問題であると述べています。
   稲盛さんは、上述した相手を評価する器量をガキ大将だった子供の時の経験から体得したそうです。小学生のとき集団で戦争ごっこの遊びをしようと思うと、大将と中将では位が違うので上下関係をつくらなければならないが、命令すると「や-めた」と帰る子が出て、戦争ごっこができない。そこで、おやつは自分は食べないで人にやったり、下っ端にはそのプライドを傷つけないように慰めたりして、人間関係を勉強してきたそうです。
 また、「だいじょうぶ」という言葉だけではなく、相手の本質を判断する器量を体得した2つの"事件"も述べています。

"50銭銀貨事件"
  いいところのボンボンが、戦争ごっこに入れてもらうために、「稲盛君、僕は50銭持ってるんだ」と言ってきたそうです。(当時の小遣いの相場は1-2銭だったので)嘘だと思っていたが何度かやり取りしていると本当に持ってきたので、お菓子を皆で買ったら、翌日教員室に呼ばれて教師に殴られた。稲盛さんが指示して持ってこさせたという話になっていたそうです。稲盛さんは、気の弱い人間はそのようになってしまう、相手が悪いのではなく、それを読めなかった自分が悪いと悟ったそうです。

"柿の木事件"
 台湾から来てみんなからバカにされていた子供が、稲盛さんに 自分の家に柿の木があって、おじいちゃんが食べに来ていいと言っていると稲盛さんに伝えたそうです。稲盛さんは本当に大丈夫か10回も確認したのち、ある日みんなで家に行って柿の木を丸裸にして食べてしまったそうです。翌日そのおじいちゃんが「ガキ大将が子分を率いて、枝もすべて折ってしまった」と学校にやってきた。この事件から稲盛さんは、何度も確認をとったというのは何の意味も持たない、人間関係の危うさというのも学んだそうです。

また、稲盛さんは、京セラ設立時の話もしています。お金もなくいい給与も出せない状況の中で気づいた事が、「心をベースにした経営をしたい」ということだそうです。物質的なものが何もないから、それしかない状況でしたが、「なんの保証もないけれどもお前に賭けてみよう」と言わせるために必死に考えた、それがリーダーシップの原点だと語っています。

4.総括

 少年時代での集団での遊びからの学びが、稲盛さんのリーダーシップの糧になっていたのですね。また、何かトラブルがあっても相手のせいにしない、自分が相手を評価する目が無かったと反省する点は、非常に重要かと思います。そして、信頼するに値する人間をどのように「お前に賭けてみよう」と思わせるか、これがリーダーシップの本質ですね。なかなかできる事ではないですが、自分を信じてくれる人間をいかに増やすことができるか、非常に重要なポイントだと思います。



いいなと思ったら応援しよう!